アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

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レインメーカー

2006-09-04 13:16:59 | 映画
『レインメーカー』 フランシス・フォード・コッポラ監督   ☆☆☆★

 名匠コッポラの法廷もの。原作は法廷ものばかり書いているらしいジョン・グリシャム。読んだことはない。

 法廷ものは面白い。他の人はどうか知らないが、私は法廷ものを観て全然面白くなかったということがない。私にとっては最低限の面白さが保証されているジャンルだ。『検察側の証人』『十二人の怒れる男』『十二人の優しい日本人』『白い巨搭』『推定無罪』『アラバマ物語』などなど、どれも法廷シーンになると画面に釘づけになってしまう(『十二人の怒れる男』と『十二人の優しい日本人』は陪審員室の中だけだが)。あの法廷シーンが醸し出す独特の興奮というのは何なのだろうか。

 この『レインメーカー』はコッポラの作品だと思ってみると、割と地味な、こじんまりした作品だった。弁護士ルーディ役のマット・デイモンはいかにもまじめな好青年で、ハッタリには欠ける。でも誠実な感じで私は好きだった。困ったことがあって弁護士に相談に行った時、こういう人が出てきてくれたらほっとすると思う。物語の中心は保険金支払い拒否をした大手保険会社を相手取った訴訟だが、その他にも夫に暴力をふるわれるケリー、彼女とルーディの恋愛、FBIに追われて逃げ出す悪徳弁護士、家族ではなくTVのパーソナリティに遺産を残そうとする老婦人、などのエピソードがあって、社会悪告発型映画というよりルーディの成長譚、青春ドラマという方が正しい。彼が法曹界に飛び込み、様々な弁護士達を見、現実を見、苦しむ人々と接し、そして弁護士を辞めることを決意するまでの話である。

 それにしてもジョン・ヴォイド演じる保険会社の大物弁護士は憎たらしい。そして保険会社の幹部達がまた憎たらしい。唖然とする文面の支払い拒否レターに始まって、社内の関係者をクビにしてルーディに会わせないよう工作したり、観ているこっちもだんだん腹が立ってくる。このあたりうまい。そしてすべての申請をまず拒絶し、意図的にあちこちたらい回しにして申請者に諦めさせるというとんでもない会社の方針が暴露されるに至り、怒りで血管がブチキレそうになる。日本ではどうか知らないが、こういうのはアメリカではよくある話なのだ。医療保険や車の保険で、必要になった時に支払い拒否された経験はほとんどの人があると思う。私の友人で、交通事故の時さんざん待たされたあげく、担当者が休暇だと言って引き伸ばしをされた人もいる。まったくひどい話だ。

 ルーディをアシストする役のダニー・デヴィートもいい味を出している。あの手この手で証拠や証人をかき集めてくる。非常に頼もしい。しかし何と言っても、個人的に最高のヒットだったのは悪徳弁護士ブルーザー役のミッキー・ロークである。ぱりっとしたスーツを着て怪しげな髭を生やし、FBIに追われて突然行方をくらましたと思ったら、ちゃっかり南の島で優雅にバカンスを楽しんでいる。このシーンでは爆笑した。そして悪徳弁護士ながら、ダニー・デヴィートに裁判の帰趨を決する重要なアドバイスをする。おいしい役どころである。

 一応ハッピー・エンドで、すっきりして終わる。しかしルーディが最後に弁護士を辞めるのはちょっと悲しい。現実にも、こういう誠実でナイーブな人は幻滅して辞め、金もうけ主義の連中ばかりが弁護士として残っていくのかな、と思わされてしまう。アメリカに住んでいるとそれが実感できる。

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