アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

ノー・ピア・プレッシャー

2015-08-17 22:02:35 | 音楽
『ノー・ピア・プレッシャー』 ブライアン・ウィルソン   ☆☆☆☆☆

 元ビーチボーイズのブライアン・ウィルソン最新アルバム。

 ブライアン・ウィルソンといえば60年代頃ビーチボーイズの中心人物で、かの名盤『ペット・サウンズ』のクリエイターとして天才の名を欲しいままにした人物だが、その後薬物依存と過食により心を病んで20年以上音楽業界から遠ざかり、その後またカムバックという紆余曲折に富む人生で有名である。才能があるというのもなかなか大変なことらしい。特にビーチボーイズなんて白い歯見せて笑いながらサーフィンしているイメージしかなかった(←いくらなんでも失礼)ので、そんな壮絶な人生を歩んでいる人と知って驚いたものだ。人生って分からない。

 そんなブライアン・ウィルソンに、私は一時期単なるアーティストという以上の関心を抱いていたものだが、カムバックして作った『スマイル』も悪くはないもののそれほど感銘を受けることもなく、やはり『ペット・サウンズ』が別格だったんだな、と思っていつしか関心も薄れてしまっていた。が、ふと気が向いて聴いてみたこの『ノー・ピア・プレッシャー』はいい。驚くほどいい。万華鏡の如き鮮やかなポップ・サウンドが、大輪の花を咲かせている。

 当然ながらビーチボーイズ風のコーラスがフィーチャーされていて、一曲目から得意のアカペラ炸裂だが、ホーンやストリングスも入った贅沢なサウンドと、それを使いこなすセンスがポイントだ。ある時は優雅に、ある時はけだるく、ある時は華やかに、ある時ははじけるように明るく、とその変幻自在っぷりは実に見事。そしてこの洒落っ気と、余裕。円熟とはこういうものかと目が覚める思いだ。その一方で、ただ引き出しの多さを見せびらかしているだけではなく、ちゃんと自分のスタイルが一貫している。さすが年季が入ったベテランだけのことはある。

 またゲスト・ヴォーカリストを多数起用していて、それがそれぞれの曲の雰囲気を際立たせ、うまく変化をつけていく結果になっている。もちろん、曲もいい。グッドメロディのてんこ盛りだ。コーラスやヴォーカル、メロディの雰囲気から、個人的にはジェリーフィッシュのアルバムを連想した。特にビーチボーイズのアル・ジャーディンが歌う「The Right Time」や「Tell Me Why」は声がジェリーフィッシュのロジャーそっくりで、この人こんな声だっけと今更ながら驚いた。もういい歳たというのにとても若々しい声だ。曲調もよく似ている。

 甘酸っぱいメロディとコーラスに弱い人は必聴。10ccやジェリーフィッシュのファンも必聴。



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