アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

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幽霊と未亡人

2011-02-20 22:31:51 | 映画
『幽霊と未亡人』 ジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督   ☆☆☆

 日本版DVDを入手して鑑賞。モノクロのアメリカ映画、舞台はイギリスである。内容的にはロマンティック・ファンタジーということになるのだろう。タイトルの通り、幽霊が出てくる。

 未亡人のルーシーは幼い娘と家政婦だけを連れて海辺の一軒家に越してくる。不動産屋が見せるのを渋ったこのカモメ荘、実は自殺した船長の幽霊が出るといういわくつきの家だった。さっそく初日からルーシーの前に幽霊が現れる。ルーシーがなぜ自殺したのかと聞くと、自殺じゃなくて居眠りしているうちにガスが漏れた、そしたら自殺にされてしまったと怒る船長の幽霊。ルーシーはとりあえず船長と取り決めを結び、出現するのは自分の寝室だけということにしてもらう(娘に見せたくないから)。そういうわけで幽霊との共同生活が始まるが、やがて金がなくなり家賃を払えなくなる。困ったルーシーに船長は自分の伝記を書いて出版すれば金が入ると持ちかけ、二人で小説を書き始める。そうこうするうちに、だんだん二人は惹かれあうようになる…。

 短いスパンの話かと思ったらそうではなく、ルーシーが年老いて死ぬまで物語は続く。わりと壮大な話である。コメディ的なところもあるが、全体としては意外と苦い、哀感溢れる物語になっている。最後の感じはちょっと『ある日どこかで』と似ている。歳月を越えて生き延びる純愛、みたいな感じ。と同時に人生の短さと失意も描かれている。

 なかなか感動的ではある。映像的には海辺のカモメ荘が美しい。特に部屋の中から、海の上に舞うたくさんのカモメが見える場面はとってもいい。雰囲気はあるし、ファンタジーのアイデアは悪くない。が、脚本が弱いと思う。もうちょっとで佳作になりそこねた水準作という感じだ。たとえば船長の幽霊とルーシーが惹かれる場面は妙に唐突で説明的だし、ルーシーがプレイボーイの作家に惹かれてしまうのもかなり強引だ。あれじゃ馬鹿としか思えず、男なら誰でもいいのかと言いたくなる。ちなみにこのプレイボーイ作家を演じているのは『レベッカ』で恐喝者ファベルを演じた男優さんで、あれも実にいやな男の役だったが、この映画でもまったく同じキャラだ。仮にもヒロインが惹かれてしまう男なのだから、もうちょっと何とかならなかったのだろうか。

 船長は一旦ルーシーのもとを去り、あとでまた出てくるが、あの意味もよく分からない。あそこで出てくるんだったらもっと早く出てきてもいいんじゃないだろうか。要するに、お互いにあそこまで待たなければならない必然性がない。結末ありきで物語が構成されている。まあそんなこんなで、予定調和が多い。雰囲気はいいんだがなあ。

 あともう一つ。船長役のレックス・ハリスンという俳優さんはなかなか貫禄があるが、だみ声の喋りが堂々とし過ぎていてロマンチズムに欠けるんじゃなかろうか。パッケージを見た時はもうちょっと渋い、クリント・イーストウッドみたいな人を想像してしまった。

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