『激突!』 スティーヴン・スピルバーグ監督 ☆☆☆☆
DVDで再見。スピルバーグ監督のデビュー作である。これ以前の作品としては、確か刑事コロンボ『構想の死角』ぐらいしかなかったはずだ。
もともとテレビ用に作られただけあって映画としては安っぽく、B級感溢れる画面だが、ストーリーのインパクトは絶大である。とりあえずこういう映画を観たということだけは忘れられなくなる。ポイントはとにかくシンプルきわまりない設定。『ターミネーター』と一緒で、娯楽映画はとにかく設定がシンプルであればあるほどインパクトが強くなる。この映画では、ハイウェイで馬鹿でかいタンクローリーにひたすら追いかけられる、それだけだ。筒井康隆の『走る取的』パターンである。
そしてシンプルな設定の中に盛り込まれたあの手この手が魅せる。監督の腕が問われるのはこの部分だが、スピルバーグがスリルとサスペンスを操る手さばきは的確で信頼できる。わざとノロノロ走って追い越しをさせないという嫌がらせから始まり、道を譲るふりをして対向車にぶつけようとする、後ろから追い立てて追突する、とだんだんエスカレートしていき、しまいには狂気の域に達する。
スピルバーグは本作を作るにあたって様々な制約を設けたように見受けられるが、中でも効果的なのは「タンクローリーのドライバーの姿を絶対に見せない」というルールだ。足や手は見えても、絶対に顔が見えない。これが本作のなんともいえない不気味さを支えている。
それから『構想の死角』でも特徴的だったアップの多用はここでも顕著で、誇張された構図は観客の不安を煽る効果が満点だし、観客をすばやく映画の核心へと案内する冒頭のシークエンスも秀逸だ。ラジオの声をバックに、車を運転する主人公の視界だけをただ淡々と見せていく。都会から郊外へ、そして広大な自然の中のハイウェイへ。何の状況説明もない、会話もない。スタイリッシュだ。こういう場面が映画を忘れがたいものにする。最後の、スローモーションでタンクローリーが落下していく映像もいい。スピルバーグはやはりセンスがいい映像作家だ。
こんな風にスリラーとして非常に傑出した作品だが、あえて言えば主人公の行動に納得できないところがある。ほとんど第三者がいない隔絶した場所で狂的なドライバーと対峙しなければならない、という状況が絶望感を醸し出すのだが、後半、第三者を目撃者として巻き込めるチャンスがいくつか出てくる。にもかかわらず、主人公は第三者を介入させる努力はあまりせず、一対一で対決を続けようとする。このあたりはちょっと違和感を感じた。
とはいってもそれは些細な不満で、巨匠のデビュー作として納得の作品だ。面白さは後の巨額予算映画と比べてもまったく遜色ないどころか、上回っているとさえ思う。とことんわかりやすい面白さ、というスピルバーグの戦略の見事な結晶だ。
DVDで再見。スピルバーグ監督のデビュー作である。これ以前の作品としては、確か刑事コロンボ『構想の死角』ぐらいしかなかったはずだ。
もともとテレビ用に作られただけあって映画としては安っぽく、B級感溢れる画面だが、ストーリーのインパクトは絶大である。とりあえずこういう映画を観たということだけは忘れられなくなる。ポイントはとにかくシンプルきわまりない設定。『ターミネーター』と一緒で、娯楽映画はとにかく設定がシンプルであればあるほどインパクトが強くなる。この映画では、ハイウェイで馬鹿でかいタンクローリーにひたすら追いかけられる、それだけだ。筒井康隆の『走る取的』パターンである。
そしてシンプルな設定の中に盛り込まれたあの手この手が魅せる。監督の腕が問われるのはこの部分だが、スピルバーグがスリルとサスペンスを操る手さばきは的確で信頼できる。わざとノロノロ走って追い越しをさせないという嫌がらせから始まり、道を譲るふりをして対向車にぶつけようとする、後ろから追い立てて追突する、とだんだんエスカレートしていき、しまいには狂気の域に達する。
スピルバーグは本作を作るにあたって様々な制約を設けたように見受けられるが、中でも効果的なのは「タンクローリーのドライバーの姿を絶対に見せない」というルールだ。足や手は見えても、絶対に顔が見えない。これが本作のなんともいえない不気味さを支えている。
それから『構想の死角』でも特徴的だったアップの多用はここでも顕著で、誇張された構図は観客の不安を煽る効果が満点だし、観客をすばやく映画の核心へと案内する冒頭のシークエンスも秀逸だ。ラジオの声をバックに、車を運転する主人公の視界だけをただ淡々と見せていく。都会から郊外へ、そして広大な自然の中のハイウェイへ。何の状況説明もない、会話もない。スタイリッシュだ。こういう場面が映画を忘れがたいものにする。最後の、スローモーションでタンクローリーが落下していく映像もいい。スピルバーグはやはりセンスがいい映像作家だ。
こんな風にスリラーとして非常に傑出した作品だが、あえて言えば主人公の行動に納得できないところがある。ほとんど第三者がいない隔絶した場所で狂的なドライバーと対峙しなければならない、という状況が絶望感を醸し出すのだが、後半、第三者を目撃者として巻き込めるチャンスがいくつか出てくる。にもかかわらず、主人公は第三者を介入させる努力はあまりせず、一対一で対決を続けようとする。このあたりはちょっと違和感を感じた。
とはいってもそれは些細な不満で、巨匠のデビュー作として納得の作品だ。面白さは後の巨額予算映画と比べてもまったく遜色ないどころか、上回っているとさえ思う。とことんわかりやすい面白さ、というスピルバーグの戦略の見事な結晶だ。
六十五歳、衰えない好奇心 創造と才能の秘密
ハリウッドからで女性インタビュ-アはあの敏腕国谷氏でした。
--監督二十一歳の時の作品"激突"その手腕に世界が注目したと--
わたくしもその一人テレビで偶然見てくぎ付け状態に。
スキー場に向かう途中の中央高速でトラックに挟まれてドライバーは冷汗なんて遭遇したことありますがどっちかっていうとちまちましてます。
昨秋のアメリカ旅行、あの行けども行けどもの大西部を車で移動 後ろに車、見え隠れしてないよね!!
この映画を思い出しさかのぼってコメントさせていただきました。
アメリカの大西部のハイウェイを一人で走っていると孤独感で不安になり、何だかこういうことが本当にありそうな気がしてきます。みんなそう思うんでしょうね。だからこの映画を観ると気持ちが入ってしまう、と。
21歳でこれを撮ったスピルバーグはやはりすごいです。
ボーイスカウトで八ミリカメラで映画を作って賞を取ったのが、12歳でした。21歳はお取り消し願います。
この時、監督は映画のもつ力に気づいたのです。
激突、見かけはとても地味な映画なんですけど、観てるうちだんだんと引き込まれ、あの怖さに想像力はフル回転するし、テレビ画面と完全に一体化している自分に気がつく、こんな映画はあまりないですね。
何かこういやな気分というか、魔物に追いかけられている。アリゾナあたりそんなこと感じさせるゾーンありますね。これが一人で走っていたらどんなに怖いことでしょうね。
それと比べ、ジェラシックパークは、恐竜が出没、ガーカーと追いかけてきますが、この映画は、あまり記憶に残っていません。
お手間取らせて、申し訳ございません。
「ジュラシック・パーク」も娯楽作品としてはよく出来てると思いますが、この映画にある荒涼とした、息づまるような空気感の方が記憶に残りますね。