江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

日比谷稲荷

2013-08-17 | まち歩き

日比谷稲荷(現日比谷神社)は東新橋に在る神社です。新橋に在るのに、“日比谷”とは、これいかに?と思う人もいるかもしれませんが、理由は単純で、元々は日比谷(現在の日比谷公園の中)にお社が在ったためです。その頃は、日比谷稲荷明神旅泊(さば)稲荷明神と称されており、神社の社号“日比谷”が変わること無く、今に至りました。


日比谷稲荷は、慶長十一年(1606年)に、江戸城日比谷御門の造営に伴い、現在の新橋地区に移動してきます。古地図[1]と現在の地図を対比すると、現在のJR新橋駅東口の辺りであったと思われます。古地図には、日比谷稲荷の前の通りに「日カゲ丁通リ」の文字が見えますが、江戸名所図会によれば、これは、町幅が至って狭かったために、土地の人が本来の町名とは別に、「日蔭町」と呼んだからだそうです。


時が移り、昭和三年(1928年)には、関東大震災の影響で都市計画区割整理の対象となり、現JR新橋駅烏森口から徒歩数分の場所に移動となります。そして、つい最近の平成二十一年(2009年)には、新たな道路(環状二号線)の建設に伴い、再び引っ越すこととなり、国道15号線脇の東新橋の現在地に新たなお社を構えることになりました。


日比谷稲荷は、池波正太郎著「暗剣白梅香」(鬼平犯科帳(一)に収録、文藝春秋)の中で、名前は出ていないものの、「日蔭町通りの稲荷社」として登場しています。また、中島要著「刀圭」(光文社)の中では、主人公・井坂坂圭吾と同じ長屋に住み、圭吾を支えるタキが芝に向かう途中で、薬種問屋千歳屋の若旦那・生三郎に呼び止められ、日比谷稲荷前の茶店に入るという場面が登場しています。


[1]芝口南西久保愛宕下之図 蔓延二年(1861)


日比谷稲荷 東京都港区東新橋2-1-1

JR新橋駅・都営地下鉄浅草線新橋駅から約350m 徒歩約5分


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