江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

一石橋

2012-04-14 | まち歩き

一石橋(いっこくばし)は日本橋の一つ上流に在る橋です。


一石橋を北に渡ると日本の金庫番とも言える日本銀行の重厚な建物が見えて来ます。江戸時代、この場所には、金座と呼ばれる勘定奉行配下の貨幣の管理と製造を行う御金改役役所が在りました。徳川家康より御金改役に任ぜられたのは後藤庄三郎光次という人で、後藤家が代々世襲でこの役を引き継ぎました。


一方、一石橋を南に渡ると、江戸幕府御用達の呉服商、後藤縫殿助の家が在りました。


橋の名前「一石」は、尺貫法における体積の単位で、一石は十斗(と)に相当します。金座の後藤(五斗)と呉服商の後藤(五斗)を合わせると一石になることから、一石橋と名付けられたと言われています。ちなみに一斗は十升(しょう)に相当するので、一石は一升瓶だと百本分(約180リットル)ということになります。


一石橋周辺は現在では商業施設やオフィスビルが多いところですが、江戸時代は一石橋の西側はいわゆる江戸城の内側で、大名が住む地域でした。市井の人が住む地域では無いせいか、時代小説の中での一石橋の登場回数はそれ程多くはないによう感じます。藤沢周平著「天保悪党伝(三千歳たそがれ)」(新潮社)は一石橋が登場する数少ない作品の一つで、罪を犯して捕まった金子市之丞が、奉行所での吟味を終えて、“もっこ”に揺られて小伝馬町の牢に引き返す場面で一石橋が登場しています。


一石橋の南詰には江戸時代に迷子探しのために使われた迷子しらせ石標(東京都指定有形文化財)が在ります。北詰には日本銀行に付帯する貨幣博物館が在り、無料で日本や世界各国の様々な貨幣を見学することが出来ます。どちらも一見の価値が有りますから、一石橋を訪ねる際には是非立ち寄ってみて下さい。


一石橋北詰 東京都中央区日本橋本石町1-2-1

東京メトロ半蔵門線 三越前駅からすぐ 徒歩1分


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一石橋迷子しらせ石標。「満よい子の志るべ」と彫られています。