OT園通園日記

車椅子生活の母を老人ホームへ訪ねる日々。でもそればかりではいられない!日常のあれこれを書いています。

ニューイヤー ディナーコンサート

2008年01月25日 | 趣味(読書・洋裁・音楽・映画)
未亡人を楽しく過ごすためには、3つのことが必要だという文章を読んだことがある。
何故未亡人かというと、平均寿命の男女差からいっても、女性が夫に先立たれる確率の方が高いからというもの。
その3つの事というのが、
1、一人で映画や観劇に行ける。
2、一人でフルコースのディナーがいただける。
3、一人でツアー旅行に行ける。
つまり、見たいものを見、食べたいものを食べ、行きたいところに行ける、「一人で生活を楽しめるようにしなさい」ということだろうか。
そして、まだ夫のいるうちに、少しずつ心がけて、これらの3つのことをできるようにしておくと、不測の事態があっても、残りの人生を楽しめるというのだ。(備えあれば憂い無し?)

私は、1だけはパーフェクトで、見たいもの、聞きたいものがあれば、一人でどこへでも出かけていく。(誉めてもらうほどのことでもないが)
でも、今まで、2と3については未経験で、試してみたこともなかった。
そして、今日、とうとう2番の「一人ディナー」を経験!

出かけたのは、サン・ミケーレというイタリアンレストラン。
ここで、バリトン歌手中西勝之さんが出演なさるニューイヤーコンサートがあるというので、「エイ!」と参加を決めた。
(一週間程前、夫が「25日は飲み会で遅いよ」と言い、行ってみたいけどどうしようと迷っていた私は、「これは天の声か!」と即コンサートのチケットを申し込んだという次第)
今回のコンサート、演奏の前にお食事が付いている。
初めての「一人ディナー」だ~!

決められたテーブルに着き、すでに着席しておられる4人の方にご挨拶。
二人連れが二組というテーブルでは、私一人が異分子で会話に入り込めそうもない。
でもいい、目の前のお料理に集中しよう。
出てきたのは、ウェルカムドリンク、ブリのカルパッチョ、フォカッチャ2切れ、サワラのソテーきのこソース(牡蠣添え)、シーフードスパゲッティ(エビ・タコ・菜の花入り)、ローストビーフとクルミ入りのキッシュ、フルーツとアイスクリームの盛り合わせ、コーヒー。
なかなかボリュームのある夕食、残念ながら、私はまだ「スウィニー・トッド後遺症」のため、いわゆるバラ色に焼き上がったローストビーフだけは(口には入れてみたけれど)食べられなかった。
それでも十分にお腹いっぱい、初めにメニューが紹介してあればいいのだけれど、次々に出されるものを消化していく方式なので、同席の方も「まあずいぶん出てくるのねぇ」と、まごついていらした。
ちょっと工夫が必要かもね。
食事の終わる頃には、同席の方々と二言三言のおしゃべりはできるようになって、初めての「一人ディナー」合格かなぁ。

コーヒーが配られる頃になると、ピアノの音が鳴り、いよいよコンサートの始まり。
「男ばかりの艶っぽい夕べ」と副題が付いたこのコンサート、進行の小林晴美さん(ソプラノ)をのぞいては、全て男性。
テノールが2名(老と若)、バリトンが2名(老と若)、そしてピアニストもなかなかスマートな(素敵な音を出す)男性だった。
プログラムは、前半に一人ずつ数曲、得意の歌を披露、次にオペレッタのナンバーをそれぞれが一曲ずつ、そして「男性四重奏」と題して四人でのアンサンブルが5曲、最後にまたお得意の曲を一曲ずつという構成。
休みなしで入れ替わり、1時間半歌い放し。
充実・至福の時間。
「きてよかった~!」と、しみじみ幸せを感じながら、全ての歌を楽しんだ。

それほど大きくはないレストランのホールで聞くと、それぞれの歌い方や声の違いがよく分かる。
いちいち名前を挙げるのが面倒なので、「老」(私と同年代というところだろう) と書いたが、年配のお二人の歌はとても巧みで、長年培ってきた技巧が見える。(それが好きかどうかは、それぞれ意見のわかれるところだろうけれど)
そして、若い二人は、そのフレッシュさと、堅さがとても良い。
もちろん、私は中西さん(バリトン・若)の応援団(勝手に!)なので、彼の歌うときは瞬きするのも惜しいと言うくらいの熱心さで見つめ、集中して耳を澄ませていた。

「昔、男声合唱が流行ったの知ってますか~?」という質問。
ダークダックス・ボニージャックス・デュークエイセス(この3グループは、全て生で聞いた覚えがある、母が連れて行ってくれたのだ)という往時の代表的コーラスグループは、小さい頃の我が家で絶大な人気だった。
父や母とレコードを聴いたり、家族四人で声を合わせて歌ったり、小学生~高校生くらいまで、家族みんなで親しんだ曲が目の前で歌われたので、とても感激。
雪山賛歌・一週間・ともしび・筑波山麓男声合唱団・フェニックスハネムーン、どれもみ~んなソラで歌える。(ここ十年以上、耳にしたことはなかったかもしれないが)
「もう二度とやらない、今日聞いたお客さんは幸せでしたね」と、主宰のテノール(老)。
たしかにあの時間、私はとても幸せ、良い音楽を耳にしたというだけではなく、小さい頃の甘やかな思い出にも身をゆだねていたのだから。
四人の歌い手の声に重なって、父のの歌う声が重なって聞こえてきたような。(家でくつろぐ父はウールの着物に三尺帯を締めていた。休みの日には、床の間に置いたステレオに合わせて、大きな声でよくいろんな歌を歌っていたものだ)

にぎやかで楽しい雰囲気を、がらりと変えたのは、中西さんの歌う「彼を家に」(Bring Him Home,レ・ミゼラブルより)。
老いたジャン・バル・ジャンが、革命時の戦いで負傷した娘の恋人マリウスを心配して歌う、哀切なメロディー。
中西さんの歌唱で聞くのは二度目だが、初めて聞いたときよりも数段深化していて、ほんとに美しく、胸に沁みた。
歌い終わっても、会場中がシ~ンとなって聞き惚れている感じ。(あの拍手を忘れた数秒の静寂、なんて良い時間!)
やっぱり、中西さんの歌、素敵です!

これで、今日は十分満足と思ったが(まだ3人の歌が残っているにもかかわらず)、まだもう一曲素敵な歌と出会った。
「熱き心に」(阿久悠作詞・大瀧詠一作曲)、これってたしか小林旭の歌だよねぇと期待もしていなかったのだが、クラシック歌手が歌うように編曲されたものの素晴らしかったこと。
テノール(若)の声質ともよくマッチしている。
そして伴奏のピアノは、曲の合間合間に、クラシックの名曲のハイライトを挟み込む。
何曲出てきたのだろうか、最後はアイーダの「勝ちて帰れ」のメロディーで締めくくられた。
楽し~、また聞きた~い!

初の「一人ディナー」を含むニューイヤーコンサート、ちょっとドキドキしたけれど、十二分に楽しんだ。(未亡人への備えには、まだまだ修行が足りないが)
一昨年から、中西さんを追いかけて、あちこちのコンサートに顔を出し、いろいろな曲や舞台と出会っている。
これこそご縁というものだろうか。
人生にちょっぴり付け加えられた、おまけのような幸せな音楽の時間、本当に感謝してます。

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