衆議院議員江田けんじ -今週の直言アーカイブス-

毎週月曜日更新の「今週の直言」。公式サイトでも公開中です。http://www.eda-k.net/

民主党政権に望む④ 天下り禁止の本気度を問う・・・公務員労組のしがらみ

2009年10月05日 | 江田憲司 今週の直言
 鳩山政権は、先週の閣議(9/29)で、国家公務員の天下りのあっせんを全面的に禁止するとともに、その天下りを前提とした「早期勧奨退職慣行」(いわゆる「肩たたき」)をやめ、定年まで公務員が勤務できる環境整備を進める方針を表明した。

 この限りでは大歓迎である。まさに、政権交代により実現すべき一番の課題、国民が渇望していた税金の無駄遣いの元凶、すなわち「官僚の天下り」の禁止に踏み込むものだからだ。

 しかし、仔細に検討すると、今の時点で手放しでは喜べない課題が山積しているように思える。それは、天下り禁止で定年まで公務員を抱え込んでいくと、総人件費が格段に増えてしまうからだ。したがって、それを避けるために、公務員制度改革を早急に進めなければならない。

 この点に関連して、私は、9月6日のNHK討論番組で、民主党の岡田幹事長(当時)にこう言った。「天下りの禁止は是非やってほしい。しかし、条件が二つある。それは給与法と国家公務員法の抜本改正だ」と。

 給与法の抜本改正とは、今の「年功序列の公務員の給与体系」、すなわち、出来が良かろうが悪かろうが、右肩上がりで年をとればとるほど給料が上がっていくシステムから、「出来の良い人は若くても抜擢して大幅昇給も可とするが、出来の悪い人の給料は下げる」という当たり前の「能力実績主義の給与体系」に変えることだ。

 公務員法の抜本改正とは、一般職(警察や消防等の特殊な公務員を除く。)には早期に労働基本権を与え、公務員の身分保障を取り外すことだ。これにより、民間並みのリストラを可能とする。

 こうした給与、人事双方を含めた「国家経営の大リストラ」を、制度的、法的に可能としない限り、天下りの禁止は逆に税金の無駄遣いにもなりかねない。これが民主党政権でできるかどうかが問われているのだ。

 いや、是非やってもらわなければならない。が、最大のネックは民主党の支持母体、官公労や自治労(公務員の労働組合)の存在だ。民主党の「本気度を問う」とは、この、選挙の時に御世話になった人たちの首を切ったり、給料の減額ができるか、ということに尽きる。民主党にとっては、御世話になった人に冷たい仕打ちをする、いわば「人の道」に反することを断行しない限り、本当の天下りの禁止や行革などできやしないのだ。

 ただ、この点について言えば、早速、懸念すべき状況が生まれている。産経新聞によると、今回の鳩山政権の方針について、「民主党最大の支持団体であり、連合傘下の公務員労組は実はおおむね歓迎している」という。その理由は「天下り斡旋の恩恵を受けていたのがキャリア官僚で、組合出身者で対象になるケースが極端に少なかったことに加えキャリア官僚に準じる形で組合員が不本意に従ってきた早期退職勧奨に応じる必要がなくなり、職員の権利向上につながるとの思い」からだという。

 鳩山首相が「天下りをしなくても定年まで勤務できるよう、公務員制度改革を速やかに実施すると話していることも、官公労の思いと一致する」らしい。 そして「公務員制度改革を担当する仙谷行政刷新相は、地方公務員や社会保険庁労組で構成する自治労の協力国会議員。野党時代の今年4月には、社保庁時代に懲戒処分を受け、後継組織の日本年金機構で分限免職となる職員の免職回避を、舛添要一厚労相(当時)に要請した経歴も。公務員にむちゃなことはやらないだろう(官公労関係者)という安心感もあるようだ。」と結んでいる。

 人数的にも給与額的にいっても、キャリア官僚よりノンキャリア官僚の方が格段に多い。仮に、民主党が後者に配慮して、前者だけの改革だけに止めるならば、それはむしろ「改悪」になる。この点、今水面下で進んでいる検討案でも、定年を65歳まで延長した上で、給与の引き下げは、役職定年60歳(局長等幹部ポストの定年)を過ぎた後からとなっている。すなわち、60歳までは何ら処遇は変わらないわけだ。(来週に続く)