橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

「デザーテックを知ってるかい?」~COP15開幕に思う

2009-12-08 03:44:45 | Weblog
注目のCOP15=国連気候変動枠組条約締約国会議が始まりました。
今回は法的拘束力のある議定書などは取りまとめられないらしく、
最終的に「政治宣言」が出されるのではないかということです。
それでも、アメリカと中国が参加するだけでも、
アメリカが京都議定書を批准しなかった頃に比べればマシになっているでしょう。
今回、アメリカや中国、インドなどの今後大量の温暖化ガス排出が見込まれる国の
目標値をどれだけちゃんと出させるか、そしてより高い目標値を設定させるかが
焦点となります。目標値が出れば、「議定書」にならずとも、
「政治宣言」だけでもまあ良しとしましょうかという雰囲気のようです。

日本は90年比25%の目標を掲げ、
国内、特に財界からは、そんな高い目標掲げて大丈夫か?!と
暗に批判を浴びています。
EUも20~30%の削減を掲げていますが、
EUはもともと排出量の少ない旧東欧諸国を含むことや、
日本はオイルショック後かなり省エネが進んだため
今更省エネを進める幅が小さく、他国より不利だという理由での批判のようです。

なんて、ここまで普通のニュースみたいなことを言ってみましたが、
ホントに言いたいのはそんなことじゃないんですよ!

確かに、上で述べたことは事実かもしれないんですが、
日本はもはやそんなこと言ってる場合ではないと思うんです。

日本が目標の数値にばかりこだわって、経済成長を妨げるだの
家計への負担はいくらだの言っているうちに、
他の国は着々と代替えエネルギー対策を進めていると思われます。
特にEUの最近の動きは目を見張ります。
このままだと、90年比25%を掲げた日本が目標達成できず、
30%と言ってるEUは50%達成とかってことになるかも。

そう思った理由が、タイトルにも掲げた「デザーテック」です。
「デザーテック」とは、現在ドイツの会社12社が中心となって
北アフリカのサハラ砂漠で行っている太陽熱発電プラントの計画のことです。

「デザーテック構想」のサイト(英語 ドイツ語)


このまえの土曜日、朝日ニュースターの「ニュースにだまされるな」という番組で
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也さんがこのデザーテック構想を紹介していました。

この「デザーテック(DESERTEC)」とは、字の通りDesert(砂漠)とTechnology(技術)を
組み合わせたもので、サハラ砂漠で、太陽熱で発電した電力を、
欧州・地中海高圧電力送電網という高圧直流送電網を使って送電するシステムのこと。
2050年までに欧州の電力需要の15%をまかなうんだとか。

以下は、デザーテックプロジェクトに参加しているドイツ12社の一つ、
「ミュンヘン再保険」のサイトにあったプロジェクトの概要を紹介したファイルです。

「DESERTEC(デザーテック)」プロジェクト概要(日本語)

こちらの記事も参照ください

ドイツの経済ビジネス情報 NNA.EU(日本語)


なんと、事業規模は総額4000億ユーロ(53兆円)の大プロジェクトですが、
上のNNAの記事によれば、資金調達はドイツ銀行、ミュンヘン再保険、
HSHノルトバンクの3社が中心となって行うそうで、
すでに結構な自信を見せているようです。

将来性のある業界に投資するためのお金を集める。
サブプライムローンなど「証券化」というインチキで儲けていた銀行が、
やっと、正しい投資に戻って来たと、なんか胸を撫で下ろす事例であります。

それに、これは53兆円分の仕事を生むということでもありますから、
雇用の確保という意味でも有意義。
この金融危機後の景気後退に喘ぐ世界にとって、
これほど一石二鳥な投資物件はないと思われるのですが...。
なぜに、日本は手をこまねいているのでしょうか。

代替えエネルギーへの転換はもはや避けることはできないのだから、
やるなら早くやったほうが勝ちなんですよね。
お金かけて開発してるうちに技術だってさらに進んでいくわけだし。
IT産業でアメリカが先行し、マイクロソフトやグーグルが世界を牛耳ってしまったように、
次世代エネルギーの世界で、誰がマイクロソフトやグーグルになるかということです。
このままだと、それはヨーロッパのどっかになっちゃいそうな勢い。
資源の無い日本こそ、この次世代エネルギーの分野に先行投資
しなければならないのに、なんちゅうこっちゃ。
それで、CO2を排出しない原子力をエコエネルギーとして世界に売り込むとか
意気込んでるってどういうことですか?

ちなみに「デザーテック」は太陽光発電ではなく、太陽「熱」発電で、
昼間に熱を蓄えることで、夜間の発電も可能となります。
ただ、太陽光より、広い受光面積必要なので、
土地が狭い日本ではあまり注目されてきませんでした。
しかし、現在のグローバルな世界を考えれば、
ヨーロッパがサハラ砂漠でプラントを作り、現地の国と電力を分け合うように、
日本もアジアの近隣諸国と協力しても良いのではないでしょうか。
今は集光型太陽熱発電というのにシフトしてるらしいし。

そういえば、アメリカについてのこんな記事もありました。

「最大の原発より大規模:巨大な太陽熱発電所を建設へ」(WIRED VISION 日本語)

日本も原子力なんかに頼っていると、後で困るんじゃないですか?と思わせる記事ですね。

日本国内では、特にテレビではこういうことが報じられなくて
25%達成しようとしたらそのために景気後退するとかなんとか言ってますが、
世界の状況を見ていると、そんなのは超短期的なことではないかと思えます。
25%が目標なのではなくて、次世代エネルギー産業に投資していたら、結果
温暖化ガスが削減されてしまいました、
ということにならねばならないんだと思います。


日本には、代替えエネルギー普及について、
いろんな誤解がまかり通っているようです。
先日も、例の事業仕分けで「住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金」が
仕分けられてしまったことをもって、
これでは25%達成できないのではないかとの一部批判があったようですが、
これを仕分けるべきとした飯田哲也さんが、なぜ仕分けたのか、
その理由を環境エネルギー研究所のサイトにアップしています。

それによれば、仕分けの理由は、
初期の設置補助金を出すよりも、電力の固定価格買い取り制度を進めた方が
代替えエネルギー発電の普及には効果的だと判断したためだそうです。
前政権時代の末期にやや不完全な形で、この制度は導入されていますが、
それを完全な形で実行することで、より普及が見込まれるとし、
設置のための補助金は2重の補助になるため廃止すべしとしています。
ヨーロッパ、特にスペインでは、この固定価格買い取り制度を導入したことで、
飛躍的に太陽光発電が普及しました。

日本は昨今、十八番のはずだった太陽光発電の市場規模の世界ランキングも後退しています。
COP15開幕にあたって、経団連会長は
「国際的な公平性や実行可能性と主要排出国の責任ある参加を前提に交渉してほしい」とか言ってるし、
COPの交渉担当者も、中国の目標値は意欲的とは言えないとか批判してるらしいけど、
人のこと批判するくらいだったら、早く自分が一歩前に出て、
次世代エネルギー産業を立ち上げれば良いのにと思うCOP15初日なのでした。

政府も25%とか目標ぶち上げてるんだったら、
早く次世代エネルギー産業推進計画でもぶち上げて下さい。
それがないから財界も既得権だけ守ろうとするんじゃないでしょうか。






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