橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

NYモスク建設問題 日本ではあまり報じられない「ティーパーティ」

2010-09-13 15:41:54 | 国際情勢
昨日はアフガニスタンの事を書いたが、
現在、NYで巻き起こっているモスク建設反対騒動については、さらっと触れただけに終わってしまった。
最近日本のニュース番組をあんまりちゃんと見てないので、なんかやってるなあとは思っていたが、こんなに大騒ぎになるとは。
CNNをBGMのように流していると、ラリーキングライブ(このときは女性のキャスターが代打?で司会)にイスラム宗教指導者を呼んで1時間近く話を聞いたり、ブレーキングニュースで、かのコーラン燃やします宣言の牧師の動向が伝えられたり、モスク建設問題でアメリカは回ってるとさえ思える状況。日本で言えば小沢一郎みたいなもんか。みんなが怖がって追い落とそうとする。

まあ、小沢一郎は置いとくとして、
日本とアメリカの報道を見ていて気付いたことがある。

日本の報道を見ていると、かなりな割合でアフガニスタンでの反米デモの映像が使われている。
今さっきも、「反米デモはさらに過激化し、死者まで出た」とNHKのニュースは伝えていた。
「コーランを燃やす」なんて言われちゃあ、そりゃ黙っちゃいないでしょうよ。
反米感情は燃え上がり、米軍のアフガン作戦に影響する事は必至だ。

しかし、CNNを見ていると、アフガニスタンでのデモの映像はあまり放送されていないように思う。つうか、私が見ている範囲では一度も見なかった。目にするのはNYのデモ、例の牧師が報道陣に取り囲まれて歩いてるとこばかり。
アフガニスタンでの戦闘が泥沼化することを示唆するような映像は流しづらいのか、それとも私の単なる見落としか・・。

そして、アメリカでアフガニスタンのデモがあまり報道されない一方で、
日本のメディアがあまり報道しないのが「ティーパーティ」に代表される保守主義の草の根ネットワークの動きだ。

共和党の元副大統領候補だったサラ・ペイリンがこの「ティーパーティ」のマドンナとして最近元気がいいのだが、
モスクの問題でオバマ大統領が窮地に追い込まれている事を考えると、このへんのことも一連の動きには関わっていそうだ。

ところで、この「ティーパーティ(Tea Party)」って何?ということだが、
世界史を履修してた方なら「ボストン茶会事件(Boston Tea Party)」というのを思い出されるだろう。
アメリカの独立宣言前夜、イギリス本国が植民地に要求した「茶への課税」に反対した人々が、ボストンに寄港していたイギリス船から東インド会社の紅茶の箱を海にぶちまけたという事件だ。そして、それが76年の独立宣言に繋がる。

現代のティーパーティ運動は、オバマ政権の「課税政策」「大きな政府」路線に抗議する保守の政治運動だ。
ティーパーティは「税金払いたくなーい」の代名詞とみたいなもんになっている。

もともとは、オバマ政権がウォール街救済のために巨額の追加予算を可決した事に反発した人々が、インターネット上で、「議会にティーバッグを送ろう」と呼びかけたことから、このティーパーティ運動は始まったらしい。本当に草の根的な運動で、リーダー的な人物はいなかったようだ。

しかし、運動が拡大するに従って、サラ・ペイリンなどの政治家や保守派の有名人なども関わりはじめ、11月の中間選挙を前に、反オバマ運動として大きな存在感を見せている。

キリスト教保守派の支持を受けるサラ・ペイリンは、このティーパーティのマドンナという存在を利用して、宗教的保守主義をも声高に叫んでいる。実際、このティーパーティ運動は、大きな政府に抗議するだけでなく、宗教的保守主義などを訴える場にもなっているようだ。

先月28日、黒人公民権運動の父キング牧師の演説記念日、ワシントンのリンカーン記念講堂では、ティーパーティの「アメリカの名誉回復」と題された数万人の集会が開催された。
ゲストはサラ・ペイリンや右翼の論客でテレビ司会者のグレン・ベックなど。グレン・ベックは「オバマ大統領は人種差別主義者だ」と言って批判を浴びたこともある人物だ。
報道によれば、集会では、政治的なものではないことが強調される一方で、ゲストのスピーチでは「神への回帰」「信仰に立ち返れ」などということが繰り返されたようだ。

また、宗教的発言とともに気になったのは、この集会の参加者がほぼすべてが白人の保守派であるらしいということだ。
グレン・ベックが「オバマは人種差別主義者」と言っているのは、黒人は福祉で優遇されているとの批判だろう。つまり、放っとかれたままの白人貧困層は差別を受けているという意味だと思うが、リーマンショック以後の未曾有の経済危機の中で、経済的苦境から、こうした考えに陥る人が増えているだろうことも想像に難くない。

今のアメリカでは、そうした経済的苦境からくる歪んだ差別意識や、原理主義的宗教観があいまって、反オバマの動きを拡大していると思われる。そんな状況にあって、今回の9・11を前にしたモスクの建設問題は、反オバマ勢力にとっては渡りに船のような出来事だったのだ。

過激な武装原理主義者がテロを起こしたのであって、イスラム教を信仰する事と、テロを起こす事の間に関係はない。

にも関わらず、ペイリンなどは、自らのツイッターで、モスクが建設される事は敵に勝利を許すものだというようなことをつぶやいている。言語道断だ。
こうした空気のひろがりに、ニューヨークでは、イスラム教徒のタクシー運転手が、イスラム教徒だというだけでナイフで切りつけられたりしている。
それに、このところ、オバマはイスラム教徒だという話が再び広まってきているらしい。
実際オバマはキリスト教徒だと言っているし、イスラム教徒だとしても別にそれで何も問題があるわけではない。しかし、そうした話が、反オバマ勢力を利する事にもなっている。

NYでは、ブルームバーグ市長はそもそも建設に許可を出しているし、冷静な立場を取っている。世論調査でも建設賛成派が過半数を占めている。
また、ペイリンについても、共和党の中には彼女のスタンドプレイにため息をつく人も多く、大統領候補の器ではないとされてはいる。しかし、アメリカはジョージ・ブッシュを大統領にした国でもあることも事実だ。
ニューヨークはむしろアメリカでは例外。保守的な人は全国にわんさといる。
さらに、人は貧すれば鈍することだってあるし、常に論理的に考えられるわけでもない。

さらに、メディアに連日流されるデモの様子や、コーランを燃やすという牧師の登場などが、平静さを失わせ、メディアを見ている多くの人々に様々な予断を与えてしまう。アメリカ国内では、外国人排斥、イスラム教恐怖、人種差別など間違った考えがむくむくと膨らみ、アフガニスタンなどイスラム諸国では、反米意識が膨らむのだ。社会不安が膨らみこそすれ、そんな風潮は世の中にとって何も良いことはない。

そしてそんな大騒ぎの中で、結局笑うのは、そうした「時の空気」を上手く利用したものなのである。
中間選挙を前に、モスク建設騒動の裏で笑っている反オバマ派の政治家や財界人たちの顔が見える。
そして常に一番貧乏くじを引かされるのは、社会不安が膨らんで不安を覚える普通の庶民たちなのだ。

こういうでたらめな風潮を作る事に大貢献されているペイリン女史には、なぜ、モスクができると、テロリストに勝利を許すことになるのか、論理的に説明願いたい。

そしてもう一つ、日本のメディアにも言いたい。
このモスク問題で、宗教的偏見の存在を憂うだけでなく、そうした人々の意識が選挙を前にして政治利用されていると言う事も伝えて欲しいと思う。

それは日本でいう「政治とカネ」に対する人々の意識についても同じ事だと思うのだ。
明日、民主党代表選。















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