橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

雑誌「ku:nel」が50代女性向けにリニューアルしたというので買ってみた

2016-01-22 04:12:03 | メディア批評

マガジンハウスの雑誌「ku:nel(クウネル)」のリニューアルがスゴいことになっております。Amazonのレビューはほとんどが★1つ。全く違う雑誌になってしまったと既存のファンが嘆きまくり、酷評が続いています。わざわざ、こんなこと書かなくてもいいのですが、私も買って損した〜と思っちゃったので、思わず投稿してしまっております。

でも、この反応は編集部も織り込み済みなのかもしれません。リニューアル担当者は、もともとの「ku:nel」なんて「しゃらくせえ」くらいに思ってたんだろうなあ…というのが、ページの隙間に垣間見えるような誌面でした。

もとの「ku:nel」のコンセプトは「ストーリーのあるモノと暮らし」でしたが、リニューアル後は「自由に生きる大人の女性へ」にチェンジ。「モノの物語」がどうこうよりも、それを使う「私の物語」のほうこそが大切なようです。特集は「フランス女性の生活の知恵」。パリ在住の熟年女性数人の暮らしが特集されています。

ところで、ここ10年ほどは、旧ku:nelをはじめとして、モノにストーリーを見いだす、「大事に暮らす系」の雑誌が全盛でした。しかしここへきて、それもちょっと翳りを見せ始めています。そもそもは、大量消費に辟易した人たちが、ひとつひとつのモノの背景を大切にしたいと思った結果、”ストーリー語り”に行きついたわけですが、いつのころからか、売れるためにはストーリーがないとね、なんて言われるようになり、気がつけば、もうお腹いっぱい。家中、ストーリーだらけで重いっすって感じになってきておりました。私もモノの背景には興味があるものの、「しゃらくせえ」と言いたくなる気持ちも分かります(誰も言ってないって)。

そして、2016年大寒。
そんなしゃらくささを払拭し、大人の女が「これがカッコいい生き方なのよ!」とズバンと言ってくれるならと、どうリニューアルされるか楽しみにしておりました。現代の「自由に生きる大人の女性」をどう表現してくれるのかも見てみたかったですし。

しかし、そこにあったのは、結局「自由な大人の女性の物語」ではなく、モノのオンパレード。フランス女性の暮らし紹介においても、彼女たちが何食ってるだの、何使ってるだの、モノの固有名詞が並びます。結局「私の物語」は「モノ」という登場人物によって語られる…。そして、そのモノたちには、もはやストーリーもありません。結局、バブルの味をしめた世代は「モノの記号」の組み合わせでしか、物語を語れないのか…そんな落胆を感じました。

文中には「こだわり」という言葉や、「祖母の仕事を見ていたので…」とか「日々の小さなことに幸せをみつける」みたいな言葉が散りばめられ、かろうじて「ku:nel」っぽさを醸そうとしています。しかし多分、旧ku:nelファンからは「そういうことじゃない!」と言われてしまうのでしょう。あまりにもありがちな表現すぎて、そういう常套句から、自立したフランス女性の生き方は伝わってこないのでした。全体的に、取材者が自分なりの視点を持って取材していると思えないところが、一番痛いところかもしれません。

今や日本人女性の多くにとって、フランス人女性の素敵な生き方ってどうなの…という疑念もわきます。フランス女性をお手本にするのって、私などにとってはちょっと小っ恥ずかしいのでありますが、多くのアラフィフ女性はどうなんでしょうか。それに、フランスもテロが起こったりして、なかなか大変そう。そういうことすっ飛ばして、素敵…と言ってるのも、なにかしっくりきません。

とかなんとか、いろいろ文句を言ってしまいましたが、結局一番不満なのは誌面にパンチがないこと。せっかく、「自由に生きる大人の女性」に向けて発信することにしたのですから、もっと自由な誌面にしてほしかった。自由を象徴する「冒険」とか「知的好奇心」みたいなものがまるで感じられないのです。結局、50過ぎたら魯山人かい…。また肩を落とします。

オザケンやオーケンが常連だった「オリーブ」読んで大人になった今のアラフィフは、バブルというモノのシャワーに、知的好奇心も冒険心もアナーキーさも流されちまったんでしょうかねえ。
オザケンもオーケンも紆余曲折を経て、また昔とは違ういい味出してるっていうのに…。

50女に自由を!

そういえば、私物の骨董の器を紹介するコーナーがあって、5人の女性が採り上げられていましたが、5人とも肩書きがあるだけで、プロフィール紹介も顔写真も載っていない。で、その5人の最初を飾るのが、「主婦の秋元麻巳子さん」。主婦…。結局、この顔写真もプロフィールも明かさない人選が今号でもっともインパクトがあったかもしれません。まみこもう50なのか…。

ながくてすいません。
780円もしたんで、つい愚痴が多くなりましたw

私だったら「オザケンの反グローバルライフ in NY」とか
「オーケンのオカルト社会学」とか、「戦うファッションの系譜by川久保玲」とか連載してもらいたいです!スポンサーつかないと思うけどww