橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

橋本治「負けない力」必読です!

2015-09-12 22:20:15 | Weblog

7月に出ていた橋本治の「負けない力」。
知性とは何かと問われた時の橋本治の答えが「負けない力」だというところから生まれた1冊まるごと知性について考える本だ。今、世の中で起こっている個別の事象はとり上げず、延々、人間とは、日本人の知性のあり方とはどういうものかを書き綴るが、その文章から、今の日本の様々な問題を想定していることは明らかだ。

安保法制、脱原発、地方再生、雇用問題、嫌韓・嫌中などなど、今、立ち向かうべき個別の問題はいろいろあって、その根本に「反知性主義」が横たわるとはよく言われる。しかし、「反知性」への批判が行われる時の「知性」の定義は曖昧だ。実はそのへんの定義の曖昧さが、知性と反知性への対立や議論の混乱を生む元凶にもなっているのではないか…。

私もSNSなどで知性については何度か言及しているが、どうもコメントして下さる方との間で話が微妙にかみ合ってないなと思うことがあった。それも知性とは何かということが曖昧だったからかもしれない。

さすが橋本治はもう一歩踏み込んで、明治以来の「日本の教養主義」の問題点を挙げ、人間の謙虚さについて言及し、からんだ糸をほぐすように知性とは何かを説いている。「負けない力」とはある意味、社会を円満に運営する力でもあるようだ。

ここで橋本治が書いていることこそ、今の日本人全員が読むべき文章だと思う。「火花」読んでるんだったら、これを読め!といいたい。

今考えるべきはやはり人間のあり方だとあらためて思う。どんな問題にぶちあたっても是々非々に考えられる人間が増えていかないことには、世の中は変わらない。マニュアルを憶えても、流行の処世術を学んでも危機には対処できない。

安保法案も脱原発もシリア難民問題も格差社会も世の中を悩ませる何もかも、すべてどうにかしないとダメだと思うけれど、どうも今の私は、熱くそれらを語る人々を引いたところから静かに見ていることが多い。けれど、私も何かしないと…と焦っているわけでもない。

「人間とはどういうものか」を考えることも、状況にコミットすることではないかと、この「負けない力」を読んであらためて思った。多分、今の私は世の中に対し、そういうコミットの仕方をしたいのだ。もちろん、デモに行くことも、署名を集めることも有りだと思います!

あと、ちょっと思ったが、橋本治と村上春樹、結構同じようなことを考えてたのかも・・・なんてことも読みながら思った。そいえば、明日、村上春樹の「職業としての小説家」発売日だ。

「負けない力」必読です!!