日本の「食」の在り方

益々、グローバル化する日本の食卓を通じ、未来の日本の食の在り方を模索していきたいと思います。

ニュー・ジパング~山形県・肉類編~

2010-12-16 11:03:38 | ご当地の銘柄肉

*ニュー・ジパングは、日本の食について、その温故知新を深め、地方独自の食文化に
フォーカスすることで、日本の食の在り方について模索することを趣旨に書いています。


さて、山形県ですが、県産銘柄牛を見てみますと、
まず、「庄内古代牛」という銘柄牛が目に入りました。


庄内古代牛は、日本の在来種で天然記念物である見島牛(山口県萩市の沖に浮かぶ見島に
保存されている)を父にホルスタインを母にもつ山形県の銘柄牛です。


見島牛は皮膚が薄く、体格は小さいが骨の締まりが良いなど、古代和牛の長所を持ち、
サシ(脂肪交雑)の遺伝能力に優れるという特徴を持っています。


そして、庄内古代牛は肉色は若干濃いものの、ごく和牛に近い脂肪の融点を持ち、
体格も雄が700kg以上と見島牛とホルスタインのいいとこどりのため、食べて
美味しいというのが最大の特徴です。


おいしい山形のHPによると、
平成8年にブランド化されている庄内古代牛は、平成17年の段階では生産されて
いないとのことです。「幻」の存在なのでしょうか。
見島牛の種の保存という意味でも、可能な限り生産を続けて欲しいと思います。


山形県の銘柄和牛で、はずしてならないのは、「米沢牛」でしょう。


米沢牛のような全国区の人気ブランド和牛が生産できる背景として、
寒暖の差が激しい盆地性の気候や肥沃な土壌、豊かな水資源といった自然環境が
あります。


米沢牛の特長は融点すなわち脂の溶ける温度が低いことにあり、まろやかにとろけ、
なおかつ口の中に脂が残らないのため、とろける柔らかさ、肉本来の風味、甘さが
他の銘柄和牛と比べ際立っているということです。


この米沢牛が名声を得たきっかけは、明治4年、旧上杉藩校興譲館の英語教師として
招かれた英国人のチャールズ・ヘンリー・ダラス氏が、滞在中、横浜から連れてきた
コックの万吉に牛肉料理を作らせ、そのおいしさにいたく感激し、万吉に米沢で
最初の牛肉店を開業させました。


任期を終えて横浜に帰る際に、チャールズはお土産として牛一頭を持ち帰ったという
エピソードがあり、これを食べた外国人居留地の仲間もあまりのおいしさに驚嘆して、
評判となり、これが米沢牛の名を世に知らしめるきっかけとなったのだそうです。


この米沢牛のブランドを守り続けるために、トレーサビリティシステムを
全国に先駆けて試験的に導入し、顔のみえる生産体制づくりに力を入れています。


米沢牛の中でも最高級とされているのは、黄木牛です。
肥育日数1,000日以上を越える長期肥育が特徴です。
黄木牛の中でも、トップブランドは悠修牛で年に10数頭のみしかその基準を
クリアできません。脂肪の融点は米沢牛の平均よりも更に低く、
格付けも5、BMS(脂肪交雑)と呼ばれる霜降り度もNo.10~12です。(12が最高ランク)


県産銘柄牛としては、山形県は「山形牛」(県内において最も育成・肥育された黒毛和種で、
(社)日本食肉格付協会で定める肉質が4等級以上の枝肉か、3等級についても
準ずるもの)のPRに力を入れており、山形牛を使用したレトルトカレー「総称 山形牛カレー
をお土産用に販売しています。(山形新聞のニュースより)


山形県新幹線開業と一緒に販売された、米沢名物 牛丼風弁当「牛肉どまん中」は
今や日本全国の駅弁でも人気が高く、テレビでもよく紹介される「肉の小林」の
山形県産牛肉のさくらんぼ漬」は山形県の特産物を使ったならではの商品です。
総称 山形牛カレー」がこれらのヒット商品に続くといいですね~


県産の銘柄牛に比べ県産の銘柄豚は、県産のブランド牛の影に隠れてあまり目立たない
印象ですが、なかなか独自性の高い県産ブランドを確立しています。


その中でもユニークなのは、「平牧金華豚」です。
もともと金華豚は中国浙江省金華地区原産で中華高級食材の金華ハムの原料豚として有名です。
頭とお尻の部分が黒い純粋種は、両頭烏とも呼ばれます。
日本では純粋金華豚は酒田市の平田牧場ともう1箇所の2箇所でしか、
生産されていないという貴重なブランド豚です。


平牧金華豚は純粋金華豚の優れた肉質や芳醇な味わいを保ちながら、
生産効率を高めた交配種です。
というのは、純粋金華豚は通常の豚よりも成熟日数が多くかかるわりに体格が小さく、
通常の豚の二まわりも小さいサイズの豚だからです。


そして、平牧金華豚は飼料に、庄内平野でつくられる飼料米を15%配合した
ものを使用している、「こめ育ち」豚です。


牛肉でいえば、松阪牛クラスの高級ブランド豚か・・・と思うと、
一度、口にしてみたいと思うのが人情です。
この貴重な平牧金華豚肉は、こちらで購入することができます。


米澤豚一番育ち」という県産ブランド豚もどんな豚なのかみてみましょう。
(これもユニークなブランド名ですね。)


米澤豚一番育ちの里は吾妻、飯豊、朝日、蔵王の4つの連峰に囲まれた
澄んだ空気ときれいな水の豊かな大自然に恵まれた置賜地方です。


この米澤豚一番育ちの美味しさの秘訣は、
まず、その品種にあり、ランドレース種(L)と大ヨークシャー種(W)を交配させた豚(LW)のSPF豚に、
霜降りが特徴のデュロック種(D)を交配させた三元交配豚(LWD)であることです。


次に、大麦主体の配合の独自の飼料にあります。その配合飼料は肉の甘みを引き出すトウモロコシ、
真っ白な脂と旨味を引き出す麦類、ビタミンをたくさん含んだ海藻、特にビタミンEを多く含んだ
こだわりの独自配合飼料「一番育ち」専用飼料で米澤豚一番育ちは育てられています。


第3番目にはきめ細やかな管理体制にあります。きれい好きな動物の豚には女性スタッフによる
心配りのゆき届いた世話が行われ、彼女達が清潔、消毒などに厳しい目を配って健康な豚に
育てています。


また、女性特有の感性と優しい愛情で、ストレスを与えず穏和に豚を育てることが、
良質で美味しい肉作りにはかかせないということがこだわりのポイントです。


米澤豚肉一番育ちは、ビタミンEの含有量が通常の豚肉の2倍~2.5倍と多く、
鮮度が落ちにくいヘルシーポークとして、食卓に届けることをモットーとしています。


大切に愛情をかけて育てられた銘柄豚肉だと思うと、食べる前に手を合わせてしまいそうです。
最近、ご飯を食べる前にこのような感謝の気持ちを忘れている自分に反省しました。


山形県にはもともと地鶏となる在来の鶏がなかなか見つからず、
山形県独自の味の良い地鶏の開発が命題でした。
そこで、見つかったのが、「赤笹シャモ」です。

平成12年にその赤笹シャモとの交配による山形県産の地鶏の開発に着手し、
試行錯誤の上、平成15年に「やまがた地鶏」が誕生しました。


やまがた地鶏は、父鶏には赤笹シャモの雄と名古屋種雌の交雑鶏を使い、
母鶏には横斑プリマスロック種という三元交配を行った結果生まれた県産の銘柄鶏で、
うま味に優れコクがあり、適度な歯ごたえを持ちます。


やまがた地鶏はもも肉が赤みを帯びており、見た目にも美しく、何より鶏臭さのない上品な味わい。
約百四十日間じっくりと育てて熟成させた肉であり、成分的にも、うま味に関係するアミノ酸の比率が
ブロイラーより約10%多いという結果が出ています。


やまがた地鶏はどこで食べることができるのだろうと思い、ネットサーフィンしたところ、
やまがた地鶏料理に力を入れている旬菜料理「あっさり」のブログを見つけました。
旅行者にとって、地元の食材を使った料理はうれしいですね♪


山形県はまた、ダチョウの飼育に力を入れており、(観光目的も兼ねているようですが、)
西村山郡朝日町は食用のダチョウの産地として、全国的にも知名度が高い町です。
繁殖能力が高く、ヘルシーで低脂肪のくせのない味わい、滋養も高いということで
21世紀の食材として注目を集めているダチョウですが、まだまだ浸透はしていないようです。


そんな朝日町特産のダチョウ料理を食べることができる店が、
野獣料理の店 レストラン 牡丹
このお店にいった人たちのブログによると、「ダチョウのステーキ」(写真参照)
(店のHPメニューでは確認できなかったのですが・・・)が美味しいとの話。
朝日町はりんごの産地でもあるので、飼料にりんごを使用しているとの記述もちらほら。
ダチョウのにぎり」や「ダチョウの砂肝の刺身」など、ブログの写真を見る限り、
ヘルシーで美味しそうです。


余談ですが、山形県のB級グルメとして注目されているのが、
河北町谷地(やち)発祥の「冷たい肉そば」です。
使用されている肉はもともと馬肉だったようですが、現在は鶏肉を使用しています。
シンプルでリーズナブルかつ親しみやすいメニューなので、
冷やしラーメン同様、そのうち、日本全国のそば屋の夏の定番メニューに
なるかもしれないですね。


ニュー・ジパング~秋田県・肉類編~

2010-12-01 17:55:46 | ご当地の銘柄肉

*ニュー・ジパングは、日本の食について、その温故知新を深め、
地方独自の食文化にフォーカスすることで、日本の食の在り方について
模索することを趣旨に書いています。


秋田県PR大使「あきた美の国大使」に人気美人タレントの加藤 夏季さんと
佐々木 希さんが選ばれたのは記憶に新しいところです。


秋田県のご当地の肉といえば、きりたんぽ鍋に使用される「比内地鶏」の
イメージが強く、牛肉に至っては想像もつかないのですが、
羽後牛、三梨牛、秋田由利牛という秋田県産の霜降り和牛の銘柄が
目につきますので、見ていくことにしました。


まず、羽後牛ですが、夏期と冬期、年2回開催される【秋田牛枝肉共励会】の
平成22年の夏期には、JAうごの羽後黒毛和牛がチャンピオンとなり、
全6賞のうち、3賞はこの羽後牛が占めたという、今、注目の秋田県の
ブランド牛です。(この共励会は、株式会社秋田県食肉流通公社と
秋田県肉牛生産振興協議会が主催。)


ところで、”羽後”といわれても地理的にどこにあるのかすら、知らない私。
ウィキペディアで調べたところ、羽後町(うごまち)は秋田県南部に位置し、
キャッチフレーズは「緑と踊りと雪の町」。湯沢市が近いですね~。
茅葺き屋根の民家が目立つ町で、民俗芸能やイベントが多く、
重要無形民俗文化財に指定されている民俗芸能もあります。


特に、西馬音内の盆踊(にしもないのぼんおどり)は、
阿波踊りと群上踊りと合わせて「日本三大盆踊り」と称されているほど、
有名な盆踊りなのです。。。。知らなかった。。。。(ちょっと、ショック)
「なまはげ」や「竿燈」のイメージが強いのですが。。。


また、毎年開催されているうご牛(べご)まつりも、
今年は9月に開催されました。野外焼肉で羽後牛を食べることができます。

(参照) 第26回うご牛まつり

羽後牛は、霜降りが素晴らしい年間7割がA4以上の最高黒毛和牛です。
JAうごは、肉牛をはじめとする家畜のふんを堆肥にして、
完全有機肥料として使用し、野菜屑や穀物を家畜の飼料にするという
「循環型農業」を実践しているとのこと。羽後町はすいかの産地でもあります。


なぜか、美少女イラストパッケージの「羽後牛カレー」(写真参照)が
販売されており、「羽後牛カレー」は秋田県の「ご当地レトルトカレー」としても
地位をしっかり築いているようです。


湯沢市にも「幻の和牛」といわれるブランド牛「三梨牛」があります。
秋田県湯沢市稲川のわずか14軒の三梨牛の飼育農家が生産している
黒毛和牛で年間約250頭しか生産されておりません。
その肉質の柔らかさとサシの入り方は松阪牛をもしのぐといわれていますが、
なんせ、生産量が少なく、県外市場ではほとんど流通していないとの話。
このショップで購入可。お値段もいいです。)
お歳暮、年末・お正月用に喜ばれそうですね。


 
さて、秋田由利牛というのは、どういうものなのか?

秋田由利牛をまるごと味わいつくす会」のHPによると、その定義は、
1)JA秋田しんせい秋田由利牛肥育部会員の飼育による黒毛和種
2)広域由利家畜市場に上場された子牛を素牛とすることを基本とし、
その他地域から素牛を導入した場合は、飼育期間を20ヶ月以上とする
3)枝肉格付等級が5等級及び4等級のものとし、3等級の中でも
生後月齢30ヶ月以上のものとする
ということです。

秋田県の由利地域は県の南西に位置し、鳥海山を中心とした麓に
広がる地域で、由利牛は鳥海山や子吉川水系、寒暖差の激しい気候等の
鳥海山の大自然の産物といえるでしょう。


その他、黒毛和種の秋田錦牛(伊藤ハムの契約農家が飼育)や
短角種のかづの牛やホルスタイン種の大潟牛等が秋田県産銘柄牛として
認知されています。


秋田県産の銘柄豚肉といえば、
なんてたって、いなげや(スーパー)のブランド豚肉の「美味豚」。
近くにいなげやがある環境に住んでいるので、美味豚にはなじみがあります。


1988年から、秋田県十文字町で30軒の若い生産者たちが
「十文字銘柄豚振興協議会」を結成。多くの人に喜んでもらえることが
したいという熱い想いから養豚に取り組み、「栗駒山山麓美味豚」と命名して、
取り扱いを始めました。
「餌・豚・環境が揃って、やっとおいしい美味豚になる。」と言い続けています。


美味豚はランドレース種×大ヨークシャー種×デュロック種の
かけあわせで、豚にストレスを与えず、薬に頼らない方法で飼育され、
オレイン酸等の旨味の多い肉に仕上げるために出荷前約2ヶ月間は、
抗菌性飼料添加物を添加していない美味豚専用飼料を与えられています。


厳しい品質チェック、平成19年から取り入れている「全農安心システム」の
おかげで、トレーサビリティも万全で、美味豚はいなげやの看板商品として、
今日も店頭に並んでいます。


その他、SPF豚のブランドもあるのですが、「八幡平ポーク」が
気になりました。八幡平ポークの特徴として、まず、品種が
「ハイポー豚」といわれる養豚先進国であるオランダで計画的に
交配されたいいとこどりの「四元雑種」です。
品質にバラツキもなく、保湿性が高く、柔らかで、きめ細やかな
日本人の食味にあった肉質が特徴の「美味しい」豚肉です。


十和田八幡平国立公園の大自然とともに育まれる八幡平ポークは、
飼料も体重30kgの仔豚段階から112kgの出荷段階までの
4ヶ月間の飼料はエキスパンダー加工された餌を使用。


エキスパンダー加工とは配合した餌を高圧縮し、そのとき発生する
熱(約130℃)を利用し加熱殺菌処理する技術で、そのため非常に
クリーンで高効率な餌が出来上がります。


飼料の安全性はもちろん、行き届いた生産・流通システムのおかげで、
元気で健康な八幡平ポークを食卓で頂くことができます。


秋田県の「比内地鶏」といえば、日本を代表する地鶏といっても
過言でないほど。肉味に優れ、脂肪が少なく淡白で美味な比内鶏が
天然記念物に指定されてからは、その比内鶏の雄とロード種の雌を
かけあわせた「比内地鶏」が食肉用に生産されています。


比内地鶏はそのブランド力からきりたんぽ鍋、カレー(レトルト)、
親子丼(レトルト)、ラーメンと、お取り寄せメニューも充実していますが、
雌の比内地鶏を使った「究極のやきとり」というのは贅沢ですね。
参照:今井屋本店


ならではというところで、秋田比内地鶏を使った駅弁の
秋田比内地鶏の鶏めし」(関根屋 税込1,100円) をチェック。
人気のある駅弁ですが、数量限定販売というところがいいです。


ブログを書き進めるうちに、レアで未知の秋田県の肉文化について、
もっと、知りたくなってしまい、止まらなくなってきそうなので、
今日はこの辺で。