帰るに帰れなかった震災当日。
電車３本乗り継ぎ、バスを利用しての通勤が２時間かかる我が家は、到底歩ける距離
ではない。
諦めるしかなかった。
隣の部の女性が、会社から徒歩圏に住んでいるということで、部内の女の子２名と
一緒に、私もお世話になることになった。
エレベーターが止まっているオフィスビル。
２３階から非常階段を降りていると、他社の食べ物買出し班とみられるおじさん達が
ふ～ふ～言いながら階段を上ってきた。
「こんにちは～。何階ですかぁ？」一緒にいたウチの女の子が声をかけた。
「２７階です。」 「じゃあ、まだまだですね。 頑張ってくださ～い。」 「ありがとう。」
まるで山登りで出会った人との挨拶のようで、私はひとり吹き出した。
会社近くの都会に住む隣の部の女性は、フランス・パリ駐在から帰国したバリバリ・
ウーマン。
テレビのトレンディドラマで見るような、天井の高いロフトのマンションに住んでいる。
「うわぁ～広い～！ うわぁ～素敵～！」
柔らか色のスリッパや、グリーンの配置、暖かな気配り－－。
デキル女は、仕事を離れてもデキルのだとわかった。
切羽詰って避難させてもらっているのに、パスタやお菓子を食べながら女４人ワイワイ
と賑やかだ。
内、一人は家から迎えの車が来て家に帰って行った。
私は、翌朝始発の電車に乗って家に向かった。
始発なのに、駅も電車の中も、まるで通勤ラッシュのようで、みんなが足止めを食って
いたのがわかる。
電車は動き始めたが、減速と間引き運転のため、３時間かかって我が家に到着。
「ジャスミ～ン！！」
玄関を開けると同時に叫んでいた。
そして、玄関を開けて…………想像していた通りだった。
押し入れや、物入れ庫の扉がどこも全開し、中のものが落ちて散乱している。
柵をよじ登る子猫（置物）がぁ！ 
「ジャスミン！」
呼び続けても、ジャスミンが姿を現さない。
押入れの中に入り込んでいるのだろうか？
見ると、停電が終わった後のエサが出ている。
！
エサを食べずにいる！？
突然不安になった。
いつもの食欲でいくと、食べずにいるというのは有り得ない。
どこかに閉じ込められている！ 直感した。
大声で呼び続ける。
「ジャッスミ～ン！」 「ジャッスミ～ン！！ ごは～ん！！！！」
いた！
ベッド頭部の床にうずくまっていた。
「おいで。」 とびきり優しく声をかける。
よく見ると、いつもの隙間どころか、ベッドが動いてジャスミンは挟まっていて身動きが
とれないでいたのだ。
やっと片手を押し込んで、ムンズとジャスミンを鷲づかみ、救い出す。
ジャスミンは噛み付くこともなく、おとなしくつまみ出された。
「怖かったね！ もう大丈夫ッ！」
ジャスミンをぎゅっと抱きしめると、ジャスミンはブルル・・ブルル・・ブルル・・・と震えて
いる。
私は、震えの止まらない猫を抱きしめながら、ぼろぼろ涙をこぼした。
ママ・・・
どんなに怖かったことだろう。
友達に言うと、「きっと夜になって、ベッドの部屋にいけばオカァサンに会えると思って
ベッドの所に行ったんだよね。」
それを聞いてまた泣いた。
落ち着いてから部屋を見回した。
玄関では、ドン・キホーテのおじさんが椅子からずり落ち、
あへっ・・・
掃除機が棚から落下し、粉々に。
紙パック式の掃除機、最後の１枚の紙パック、これがなくなったら掃除機を買い替え
ようかなぁ、もったいないかなぁ、と悩んでいたシロモノだ。
これできっぱりあきらめがついた。
心配していた食器棚は、「ふんばり君」が踏ん張ったお蔭で、中の食器がいくつも
転がってはいたものの、扉が開いていなかったので助かった。
ジャスミンちゃんが押さえてたの。
被害はわずか。
翼が折れた天使 取っ手が取れたエスプレッソカップ ↑↑
水晶とヒスイの原石で出来たオウム
↑↑↑
会社の女の子のデスクで見つけ、ステキ！と言ったらくれた。宝もの
ジャスミンにご飯をあげようとしたのだが、よほど怖かったのだろう、身を引きながら
一口食べた後、食べようとしない。
それじゃあ・・・、「ジャスミ～ン、生クリームだよん。」 ご機嫌をとる。
えへ
おいしい
もっと
ジャスミンに、やっといつもの笑顔が戻った。
皆さん、ご心配頂いて、本当に有難うございました！！
ありがと
今日もまだ余震が頻発。不気味です・・・・。
被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
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