緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

ウイルス感染の収束とは、罹患しないことではなく、一人一人の体内に抗体ができること

2020年02月24日 | 医療
新型コロナウイルス
正式なウイルス名は、SARS-CoV-2といいます。

現在、問題となっている感染症を
COVID-19といいます。

<過去のコロナの流行について>
2002年11月~2003年7月まで観察された
SARS(重症急性呼吸器症候群)は
型違いのSARS-CoVによるもので、
これも中国(広東省ではありますが)から発生したものでした。


この時の感染は32の地域で8000人の患者数、
翌年の7月の患者を最後として収束しました。


<感染症の収束とは>
●一人一人の体内に、
ウイルスに対する抗体が産生され、
特異的な免疫が獲得され、
ウイルスが体内に入っても
発症しなくなることによります。

一人の患者が罹患しても
回りの人々がその抗体を持っていれば、
回りの人は発症しません。
そのうち、その一人の患者も抗体を持つことになり、
患者は0になっていき、収束するわけです。
この免疫のバリアーが出来上がり、
感染症は収まっていきます。

収束するのにSARSで8か月かかったということです。

一般的には、半年程度で収束方向に向かうと
考えられることが多いようですが、
もし、ウイルスの遺伝子変異が簡単に生じているなら、
この期間はもっと長くなることになります。



余談ですが、
中国で、一度治癒し退院した人が
再度ウイルス陽性になったというニュースがありました。
ウイルスが陰性にならず退院し、保菌していたのか、
抗体が中々できない状況だったのか、
ニュース自体が誤りだったのか、
この件は、抗体バリヤーによる収束に関与してくるため、
今後同じようなニュースが出てこないか
気になっています。






<これからの目標>
これから様々な国で
感染は広がっていくでしょう。

(現在の広がりです)
https://www.asahi.com/articles/DA3S14372869.html

●次の目標は、かからないことではなく、
「国内の爆発的な患者増加を
できるだけ緩やかにすること」です。

医療崩壊を防ぎ、
必要な医療がきちんと受けられるように整えます。


そして、
一人一人の体内に抗体ができることを待つのです。


ですから、
罹患しないこと・・
ではなく、
かかって軽症で回復し、抗体を作らせるのです。



<私たちが取り組めること>
そのためには、
重症化させないこと
つまり、体の忍容性を高めることです。

疾病を持っている人は、
そのコントロールをしっかりと行うこと。
糖尿病、高血圧などもです。

ステロイド投与中の方、
がんなどの免疫力に関与する疾患を持っている方。
手洗いや人ごみを避けることなど
日常的に今言われていることに
取り組んでいきましょう。



後、軽症の場合、感染症指定病院には行かないことです。


まずは、4日間は風邪を引いたときと同じ対処をします。
重症度と医療機関の機能がマッチすることが大切です。

病院は基本的に汚いところです。
様々なウイルスや細菌がいます。
中国でも日本でも、罹患した医療者の推移が
報道されています。

今、病院では発熱がある患者は、
一般診療とは異なるラインで受診する手順が
作成されています。
私が所属する病院もしかりです。

つまり、発熱という主訴で病院受診したら、
その発熱患者の集団には
COVID-19の患者さんが混ざっている可能性もないとはいえません。
コロナではないかと疑い、焦って受診したことで、
そこで待機している患者からうつり、
真の感染になる可能性もあるということになります。




といって、街のクリニックに受診すれば、
結局、相談センターに連絡をし指示を仰ぐわけで、
発熱後4日に達していない場合は、
コロナPCRの検査対象にならないと言われ対症療法で終了するか、
発熱後4日以上に達していれば、
指定された病院に行くよう指示され結局二度手間になります。



私たちの協力できることとして、
重症の患者さんに適切な医療が受けられるよう、
行くべき医療機関を相談したうえで受診協力しましょう。


<疑問に思っていること>
当初、重症になる人は高齢者など合併症がある人と言われていました。
しかしながら、20代30代でも重症になり
体外式膜型人工肺(いわゆるrespiratory ECMO) が
必要となっている方もいます。

閾値のことをスレッショルド(threshold) と言いますが、
その閾値の限界点を突破して急な悪化を認める状態は、
物質の臨界点のような印象を受けます。
感冒様症状から急速に重症肺炎に悪化するトリガーは何なのか、
それが免疫応答に何か影響を及ぼしているのか、
それとも、ウイルス増殖過程に何か起こっているのか、
私の今の最大の疑問です。

元々、私は免疫の勉強をしていました。
移植や腫瘍免疫でしたので、
専門違いではありますが、
とても、興味を持っているところです。

<最後に>
今回のCOVID-19では
人口の1/2~2/3の人が
感染する可能性があると
言っている医療者がいます。
それを聞いてもあまり驚きません。
まんざらありえないことでは
ないだろうと思います。

すでに、SARSとは患者数の増え方から違ってきていますから、
宿主の免疫応答が同じように得られるのか、
まだまだ様子は見ていかなければいけないでしょう。

でも、私たちが取り組む方向は違ってはいないと思っています。




ところで・・・別件ですが・・

<最近の出来事から緩和ケアで重要なチーム医療について考えたこと>
岩田健太郎先生と高山義治先生のやり取り・・
多くの方がご覧になったことと思います。

私が一連のことから改めて感じたことは、
チーム体制のダイナミズムの中での
介入の難しさでした。

今回のダイヤモンド・プリンセス号のことは、
緊急介入でしたので、
より専門的正しさにフォーカスされる
傾向にあります。

つまり、
正論振りかざしても
現場の信頼が得られなければ
受け入れられないという考え方の一方で、

正しいことは、国の危機なのだから
しっかり介入してもらうべきだという意見があり、

緊急時には、後者を優先すべきとする意見も
少なからずあったように感じます。




一方で、私達、緩和ケアのような待機的介入では、
前者が重要だと言われます。
ゆっくりと見定めながらバランスを読み取る力がなければ
受け入れてもらえません。

さらにわかりやすく言えば、
緩和ケアが大切だからといって、
正しことを言うだけでは
がん治療医などに受け入れてもらえないということです。

推奨や勧奨を現場に採択してもらうためには、
コミュニケーションなどのヒューマンスキル、
物事を大きくとらえる概念する力などの
コンセプチャルスキルは
知識などのテクニカルスキルと同じくらい
重要な位置づけにあります。


今回の出来事から、
急な介入がチーム体制に及ぼす影響について
振り返る機会をもらったと感じています。


*念のため
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 や 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。

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