緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

サバイバーの方が多い緩和ケアの外来:症状緩和・がん患者支援外来

2022年10月02日 | 医療
私が所属している緩和ケア内科の外来は、
「症状緩和・がん患者支援外来」という長い名前の外来です。

8割はリンパ浮腫の患者さんで、その7割位はがんが治癒した後のがんサバイバーさんです。

緩和ケアの外来というと、痛みの外来と思われるかもしれません。
当院ではがんの主治医の多くががん疼痛緩和に対応できています。
難渋した時は、相談は来ますが、多くはありません。
まず、ファーストコンタクトする主治医が患者さんの苦痛を把握し、すぐに処方ができることが重要だと思っているからです。

一方で、リンパ浮腫の診療は広く行われていないこともあり、患者さん達のニーズにこたえている内に、サバイバーの患者さんは長期フォローになるため、いつの間にか、がん根治後のリンパ浮腫の患者さんが多くなってしまったという状況です。

時々、緩和ケア外来の現状調査アンケート調査が来ます。
緩和ケア外来のアンケートで、今までサバイバーの方を想定した質問票は来たことがありません。
緩和ケアの外来というと、治癒困難な方の外来だと思いこまれてしまっているように思います。


リンパ浮腫の外来とはいえ、自由診療ではないので、直接マッサージなどは行いません。
保険を適応できる弾性ストッキングやスリーブは一定の条件を満たさなければいけないのですが、このことを知っている医療者があまり多くなく、その指示書を半年ごとに発行していくこと、患者さんが日常生活の中で気を付けることやケアとしてできることを一緒に考えていくような複合的ケアを行うことが目的の外来です。



両下肢、特に膝から下がとても浮腫んでいる患者さんでした。
何度か診察しても、兎に角、悪化の一途でした。
何故なのか・・・

一日の過ごし方の詳細を聞きました。
ある調理場に勤務されていて、包丁などが落ちてくる可能性があるため、としてもしっかりとした長靴を共用で使用していることがわかりました。
靴の中には、調理の水が入ってくることもあるようでした。
足は蒸れ、足白癬の可能性もありました。
そこから感染し、蜂窩織炎を繰り返すこともあったようです。

なるほど。。
対策を考えました。

使用する長靴は浮腫の足にあったサイズのものを個人用に固定することができないか上司と相談すること、上から水が入らないよう、靴の外にズボンのすそを出すような履き方ができないか工夫すること、休憩時間には長靴から足を出し5分でもよいので少し高い位置に上げ、休めること・・

こんな作戦を立てて、その次の外来では、軽快まではいきませんでしたが、少なくとも増悪は止まりました。


一人一人の生活の違いを聞き、対策を立てること・・

なんだか謎解きのような外来です・・

Stefan SchranzによるPixabayからの画像

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大したことじゃないんですけ... | トップ | 設計図を完成させなかった患... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療」カテゴリの最新記事