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株価指数と社会的責任

2004-09-24 | ◆ビジネス
最近、企業の社会的責任(CSR - Corporate Social Responsibility)が注目を集めている。9月23日(木)の日経にも『「CSR報告書」発行相次ぐ』との記事があり、リコー、NECなどの大手企業の取組みが紹介されている。その背景には、企業が社会的責任を果たすことが企業価値の向上に繋がるという考えがある。つまり、環境問題、雇用、法令遵守などにしっかり取り組んでいることは、中長期での企業の成長に繋がるということだ。逆にCSRに積極的に取り組んでいない企業は、常に不祥事を起こすリスクを抱えていると看做される。

CSRへの取組みが企業価値と密接に関わることから、企業の市場統治が進んでいる欧米では、早くからCSRが株価指数に活用されてきた。つまり、CSRへの取組みについての評価基準を設け、その基準を満たす企業のみを集めた株価指数を作るのである。代表的なものとして以下のものがある。

アメリカ:Dow Jones Sustainability Indexes (DJSI)
イギリス:FTSE4Good

JDSIは1999年に設定されたインデックスで、採用されるための基準としてEconomic、Environment、Socialという3つのカテゴリーがあり、それが更に細分化されている。特徴としては、単に社会的責任のみならず、企業が中長期に渡って価値を向上させていく能力(Sustainability)を持っているかどうかに評価基準をおいていることであろう。従って、行動規範や環境に関するもののみならず、ナレッジ・マネージメントや有能な人材の確保といったことまで評価基準となっている。

FTSE4Goodは2001年に開発されたインデックスである。こちらは評価基準の大項目として、Environmental、Social & Stakeholder、Human Rightsを掲げている。特にHuman Rightsに関しては、Global Sourcing Sectorとしてオイル、ガス、マイニングに特別な基準を設けている他、人権保護が十分でないと考えられる国家におけるオペレーションにも注意を向けている。

では日本はどうかというと、2003年になってモーニングスターが日本株を対象として社会的責任投資株価指数(MS-SRI)を設けている。また先に紹介したFTSEがつい先日(2004年9月21日)にFTSE4Good Japanをスタートさせている。

FTSE4Goodのデータを見ると、FTSE4Goodインデックスはおおむね全企業を含めたインデックスを上回っているようである。つまり、CSRが企業価値の向上に役立っているということである。しかし、CSRの取組みを積極化させる上での課題は大きく2つある。第一に、CSRへの取組みを形式ではなく、実態のあるものとすること。第二に、CSRの徹底に掛かるコストを経営者が必要なものと認めることである。行動規範が設けられたが誰もそれを遵守していないというのは良くある話であるし、経営が傾けばCSR専門部署は真っ先に廃止に追い込まれる。

CSRとは短期的にはコスト増である一方、中長期では企業のリスク要因を排除して成長を促すものである。そういった特性への考慮が経営者側にも、投資家側にも求められるのである。

 

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