社長の独り言

資産運用コンサルタントの社長日記です

野人の愛

2007-10-04 08:51:26 | 日常
宋 文洲さんのコラムをご紹介します。


仕事の話ばかり扱ってきたこのメルマガ。
今回は四川省奥地に幸せに暮らしている「野人」の実話をお伝えしたい。
仕事を離れて仕事の目的を見る・・・。

60年前の四川省奥地の村。6歳の少年が村に嫁入りに来る
お嫁さんの前に立って口を開けた。数日前に彼は遊んでいて転び、
前歯を無くした。この地方の人々には、新婚のお嫁さんが
抜けた歯の歯茎を触れば歯が再生すると信じられていた。

お嫁さんは指を差し出し、少年はこれを噛んだ。その瞬間、
少年はお嫁さんの顔を見上げた。息を呑むような美しさだった。
あれ以来、少年はよくお嫁さんのことを覗き見るようになった。

幸せそうに旦那さんと歩いている風景、お嫁さんの煙突から上がる炊煙、
窓から漏れる笑い声。可愛い子供が生まれて一人、一人、また一人。
少年は邪念ではなく、ただ「お嫁さんは尊い存在」だと思った。

10年後、お嫁さんの旦那さんは病死した。未亡人になったお嫁さんは
悲しみに明け暮れ、4人の小さな子供たちと困窮の底に落ちた。
食べ物がないため彼女は山から山菜をとってきて子供たちに食べさせたが、
調味の塩が買えなかった。

そしてある日、一番下の子供を抱えて水汲みに行ったお嫁さんは河に溺れた。

近くに居た少年は飛び込み、彼女親子を救い上げた。
この時、少年は初めて正面からまともにお嫁さんの顔をみるができた。

それ以来、少年はよくお嫁さんの家に行って農作業や家事を手伝うようになった。
言葉に出したことこそないが、お互いの心は通じていた。
しかし、2年も続くと噂が村中にまわって村人たちの非難の的になった。

会い難くなったお嫁さんはある日、少年に言った。
「あなたも相手を探す年齢になったし、もうこれからはうちに
来ないでください。」このことを言われた夜、少年はお嫁さんの家に行った。
涙を流しながら懇願した。「僕のお嫁さんになってください」と。

翌日、少年とお嫁さんが突然に村から蒸発した。
彼女の4人の子供たちも一緒に居なくなった。その年、少年は19歳、
お嫁さんは29歳だった。

二人が4人の子供を連れて人煙断絶の樹海に逃げ込んだ後、
野人の生活を続けた。少年は魚を獲ったり蜂を飼ったりして生活を盛り立て、
お嫁さんはさらに3人の子供を生んだ。暴風雨が草の屋根を吹き飛ばした時、
お嫁さんは「もう一度瓦の家に住みたい」と言った。

これを聞いた少年は翌朝から子供たちを連れて粘土を運び、窯を掘り、
瓦作りを始めた。2年かかったが、瓦屋根の家を完成した。

歳月が経ち、子供たちは皆巣立って普通の村に降りていった。
山頂には少年とお嫁さんだけが残った。この50年間、
少年は一度もお嫁さんに一人の夜を過ごさせたことはなかった。
少年は数回近くの市場にいったが、お嫁さんは一度も山を降りたことがなかった。

少年は69歳、お嫁さんは79歳になっていた。
しかし、彼は今も彼女を「お嫁さん」と呼び、彼女は今も彼を「少年」と呼ぶ。

二人は約束した。先に逝った人を、残った人が山に埋葬して
息子達のところに降りる。死んだら必ず山に運んでもらい、
一緒に山頂にある墓に入る。

(この話は『中国婦女』に掲載された実話です。山頂にいる二人の老人は探検隊によって偶然に発見され、今もお元気です