プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

イスラエルはシオニズム運動の「当初のスローガン」を思い出せ

2006-07-18 14:58:28 | 政治経済
イスラエル軍がレバノンへの攻撃を拡大しています。アメリカが相変わらずイスラエルの「自衛権」を擁護する一方、欧州諸国やロシアは、イスラエルの反撃を「過剰」だと批判しています。アラブ・イスラエルの対立がいつまで経っても解決しないのは、大国の干渉が問題をこじれに拗らせてしまったからです。米英仏ロなどの大国は、過去の行きがかりや自国の思惑を捨て、当事者が納得して共存できる枠組みを作る一点で団結して側面援助することです。それが過去の干渉への唯一の罪滅ぼしです。

オーストリア生まれのユダヤ人ジャーナリスト・ヘルツルがシオニズム運動を起こしたとき(1897年第一回シオニスト会議)、シオンの丘(およそ3000年前、ユダヤ人が構築したイスラエル王国の土地)に植民する方針が出されましたが、スローガンはあくまで「土地なき民に、民なき土地を」でした。当時この地には50万人のパレスチナ人(ユダヤ人は2万人)が住んでおり、決して「民なき土地」ではありませんでした。

1917年、イギリスのバルフォア外相はロンドンの金融王ウォルター・ロスチャイルドに書簡を送り、パレスチナをユダヤ人の「民族郷土」として認めることを伝えました。オスマン帝国との戦争でユダヤ人を味方につけ、戦後の中東支配の足場として友好国をつくっておくことを考えたのです。ユダヤ人差別を有色人種のアラブ人差別に利用したのです。
この時、イギリスはオスマン帝国からの独立を求めて戦っていたアラブ民族に対しては、イギリスの敵国オスマン帝国と戦えば、パレスチナの地をアラブ国家として独立させる約束(フサイン・マクマホン協定)をするのです。2枚舌外交の詐欺的行為です。

その後のアラブ・イスラエルの仲介調停も大国の思惑でこじれに拗らせるばかりです。当事者の殺し合い・武力の応酬を結局、誰も止めることができません。そもそも2000年以上前の神話と史実がないまぜの話を根拠に、ユダヤ人のパレスチナ居住権を何百年にわたってすでに居住しているアラブ人を追放してまで保証することに無理があります。バルフォア宣言は完全な誤りであり、今日の事態に至るボタンの掛け違いです

イスラエルは当初のスローガン「民なき土地を」の謙虚さを取り戻すべきです。大国の力を利用して横暴を繰り返すのを自制し、誠実にアラブ人との共存を話し合うべきです。自らのディアスポラ(離散)の悲劇をアラブ人に押し付けて平気かどうか胸に手を当てて考えるべきです。


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