2012年8月27日(月)08:05
(産経新聞)
■「海外で感動され 誇らしい」
【アルジェ=亀岡典子】人形浄瑠璃文楽の初のアフリカ公演が25日夜(日本時間26日未明)、アルジェリアの首都アルジェのイブン・ゼイドゥーン劇場で行われ、超満員の観客は、世界でも類を見ない三業(太夫、三味線、人形遣い)が一体となった人形劇・文楽に魅了された。終演後にはカーテンコールも起こり、人形遣いの桐竹勘十郎さん(59)ら出演者は笑顔で手を振って観客の盛大な拍手に応えた。
公演は、アルジェリアと日本の国交樹立50周年を記念して開催。現地の新聞各紙が今回の公演を大きく伝え、約550席の客席は立ち見も出る超満員に。
公演では、団長の勘十郎さんがフランス語で「両国の友好50周年をお祝いでき喜んでいます」とあいさつ。続いて勘十郎さんが戦国時代のヒロイン、八重垣(やえがき)姫を遣う文楽の人気作「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)・奥庭狐火(おくにわきつねび)の段」を上演。恋のため父を裏切り、白狐の霊力に守られ、敵方の恋人を助ける八重垣姫の幻想的な姿にアルジェリアの人々は魅入られたように舞台を見つめていた。
アルジェ在住の女子学生、ベライド・リアムさん(15)は「日本の漫画やドラマが大好きで、文楽を絶対見たいと思っていた。プリンセスの赤い衣装が美しく、音楽はリズムがあって最高におもしろかった。いつか日本に行きたい」。映画プロデューサーのアミーヌ・クイーデルさん(25)は「黒澤明や小津安二郎の日本映画は知っていたが、文楽は初めて見ました。ストーリーがファンタスティック」と話した。
公演後、現地メディアの取材陣に囲まれた勘十郎さん。「大勢の人が見に来てくれたことが何よりうれしい。文楽をわかっていただけた実感があった」と喜びながらも、「こちらに来てから文楽協会への大阪市の補助金が打ち切りになるという話を聞いた。そんな中で、これほど大阪が生んだ文楽が海外の人々に感動してもらえたということが誇らしい」と語った。
文楽一行は27日の公演のあとに帰国する。