季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

数値化されたもの

2019年08月05日 | その他
前の記事で神奈川県立音楽堂の音響設計者が素晴らしい音響は半ば偶然の産物だと発言していたことを紹介した。

科学的に計測されたものが全てではないという思考に今日では殆どの人が賛同するだろう。我々の時代は人間的という言葉に飢えているのだ。

しかしこれは、数値化したもので全てを律することができるという観念と真反対の観念的な理解でしかない。具体的な事象においては僕らは驚くほど数値化されたものに屈服している。

僕の家のことを書こうと思う。

バブル期真っ只中、有名工務店に注文して建てた。その際もっとも気を遣ったのはいうまでもなく近隣への音漏れであった。

担当者は自信満々、お任せ下さい、当社は音楽家の家も数多く請け負っていますと胸を張り、僕は安心していた。

引渡しも終わりピアノの搬入も済んでいざ弾いてみて愕然とした。数軒先の家までハッキリと聞こえるではないか。これでは夜弾くのはほぼ不可能に近い。

早速工務店に来てもらいこれでは困る旨を伝えた。

支店長と設計担当者もやって来たが、バブル期とはこんなものだったのであろうか、設計者は何と立地の条件を見ずに図面を引き、我家に来たのはその時が始めてなのだった。

周囲を見回すと、あぁこの条件では音は聞こえますねとことも無げに言った。

僕は非常に強く抗議して音楽室の遮音はやり直させることにした。費用は工務店と折半ということになった。

数日後詳しい工事内容と見積もりが来て又々たまげた。

使用する材料個別に何デシベル遮音効果があると書かれ、夜まで音出し出来るには天井、壁、床全てをあと数十センチ厚くする必要があり、費用は八百数十万円かかるとあるのだ。全ての面が数十センチせり出してくる!まるで潜水艇ではないか。

ふざけるな、僕の経験からすると音は主に窓から漏れる。窓枠に問題があるのだ、ここだけでほぼ問題ない筈だ。僕はそう主張して押し通した。普通の窓枠ではない、遮音効果が高いものがあることを僕は知っていた。それを使うように具体的に指示したわけである。

結果は数値化されたもの、つまり僕の指示では到底音漏れを防ぐ事は出来ないという工務店の意見とは相違して、真夜中にピアノを弾いても殆ど外には聞こえないようになった。

その後遮音工事を施す生徒たちは僕のレッスン室に倣っているようだ。効果も同じくほぼ完璧だという。

設計アドバイス料を頂くことにしよう。



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