スティーヴ・コールマンやグレッグ・オズビーらが提唱したM-BASE理論は、変拍子の複雑なリズムを取り入れ、バップやモードというジャズの伝統的な語法を使用しないで演奏形式の革新を目指したものだった。そのM-BASE派のゲイリー・トーマスを最初に聴いたのは、ジャック・ディジョネットのスペシャル・エディションで、M-BASEの理論はともかくとしてそのテナーの音とメカニカルなフレーズはかなり強烈で、ジャズの革命児を思わせるほど斬新に聴こえる。
そのトーマスがスタンダードを吹くとどうなるのだろう。スター・アイズやザ・ソング・イズ・ユーを取り上げた90年の「While The Gate Is Open」も過激で驚いたのだが、92年の「Till We Have Faces」にいたっては表現のしようがない。書かなければ先に進まないので続けるが、スタンダードという概念で聴くと耐えられないということだ。旧態依然としたジャズの耳だと笑われそうだが、幾多の音源を長く聴き続けたうえでの感想である。エルヴィンを思わせるポリリズムのテリ・リン・キャリトンのドラムに、これまた拍の一致しないリズムで追い討ちをかけるトーマスとの激しい掛け合いのイントロが続く。フランク・ロウやサニー・マレイのESP盤ならこのまま果てしなく闘いが続のだが・・・
やおら聴き慣れたメロディが出てくる。よりによってマット・デニスが作曲したブルー・バラードの傑作、エンジェル・アイズだ。スタンダードをどのように演奏するかは奏者の勝手であり自由で、それが奏者としての個性であり、解釈を束縛しないジャズの魅力なのだろうが、基本的に美しいものは美しく表現してこそ真価が発揮されるというものだ。トーマスの作曲家としての才能やラップに挑戦する意欲、オルガンをフィーチャーしてオルガン・ジャズの新境地を開いたことは認めても譲れないものもある。スタンダードを「演奏してみようか」ではなく、「表現してみたい」という姿勢こそ作者への敬意であり、そこから名演が生まれる。
M-BASEの理論は新伝承派以降のジャズ発展に指針を示したものであり、無機的なフレーズの連続であってもタイム感もあることから70年代のフリージャズとは音楽性が異なるが、やはり主流には至らなかった。破壊しては再構築するという一連の流れはジャズ革新に欠かせないものであるし、それがジャズの発展につながるのは承知しているが、いかなる理論を持ち出そうとそこにスウィングが欠けているならそれはジャズとは呼ばない。
そのトーマスがスタンダードを吹くとどうなるのだろう。スター・アイズやザ・ソング・イズ・ユーを取り上げた90年の「While The Gate Is Open」も過激で驚いたのだが、92年の「Till We Have Faces」にいたっては表現のしようがない。書かなければ先に進まないので続けるが、スタンダードという概念で聴くと耐えられないということだ。旧態依然としたジャズの耳だと笑われそうだが、幾多の音源を長く聴き続けたうえでの感想である。エルヴィンを思わせるポリリズムのテリ・リン・キャリトンのドラムに、これまた拍の一致しないリズムで追い討ちをかけるトーマスとの激しい掛け合いのイントロが続く。フランク・ロウやサニー・マレイのESP盤ならこのまま果てしなく闘いが続のだが・・・
やおら聴き慣れたメロディが出てくる。よりによってマット・デニスが作曲したブルー・バラードの傑作、エンジェル・アイズだ。スタンダードをどのように演奏するかは奏者の勝手であり自由で、それが奏者としての個性であり、解釈を束縛しないジャズの魅力なのだろうが、基本的に美しいものは美しく表現してこそ真価が発揮されるというものだ。トーマスの作曲家としての才能やラップに挑戦する意欲、オルガンをフィーチャーしてオルガン・ジャズの新境地を開いたことは認めても譲れないものもある。スタンダードを「演奏してみようか」ではなく、「表現してみたい」という姿勢こそ作者への敬意であり、そこから名演が生まれる。
M-BASEの理論は新伝承派以降のジャズ発展に指針を示したものであり、無機的なフレーズの連続であってもタイム感もあることから70年代のフリージャズとは音楽性が異なるが、やはり主流には至らなかった。破壊しては再構築するという一連の流れはジャズ革新に欠かせないものであるし、それがジャズの発展につながるのは承知しているが、いかなる理論を持ち出そうとそこにスウィングが欠けているならそれはジャズとは呼ばない。
マット・デニスの名作「エンジェル・アイズ」は、数あるスタンダードでも飛び切りの美しいメロディを持っております。美しく表現してこそエンジェル・アイズというタイトルが光るものと思います。
今週はインストでお好みをお寄せください。
管理人 Angel Eyes Best 3
Ray Bryant Trio (Prestige)
MJQ / Fontessa (Atlantic)
Paul Desmond / Glad To Be Unhappy (RCA)
管楽器のベストをと思ったのですが、決定的名唱はあっても決定的名演はないと言われる曲ですのでインスト全般に拡大しました。
他にもデューク・ピアソンのソロやビル・パーキンス、トロンボーンではスティーブ・デイヴィス等々、多くの名演がありますので何が挙がるのか楽しみです。
今週は炎上覚悟(笑)の辛口記事ですが、ゲイリー・トーマスやM-BASE派への異論反論正論も遠慮なくお寄せください。
今週も皆様のコメントをお待ちしております。
M-BASEという一派~ほとんど聴いてないのですが、angel eyesのテーマの使い方についてのdukeさんの的確な描写を読むと、およそのサウンドの様相が浮かんできます。
たぶん、現代において、スタンダード曲をそのまま取り上げる~なんてことは面白くない!という意識もあるのでしょうが、うんと素朴に言えば、M-BASEもスタンダード曲というものに対する本当の(音楽的、心情的もろもろ)愛情がないのだろうな、という気がします。
70年頃のアーチー・シェップも似たようなことをやっていたように思います。フリーっぽいサウンドの合間に「いそしぎ」のテーマを吹いたり、「イパネマの娘」をちょいとアヴァンギャルド風にやったり・・・。シェップは単に「面白いだろう」という気持ちでやったのかなと思うわけです、あれは・・・たぶん美術の世界でいう<デペイズマン>という手法と同質のものだったと、僕は思います。そして、それは・・・やはりあまりにも「手法的」であるがゆえに、そこで「いそしぎ」の優雅でキレイなメロディを吹く意味(というか音楽的な流れ)が感じられない・・・あまり面白くないものでした(少なくとも僕には)
dukeさんは《スタンダードという概念で聴くと耐えられないということだ。旧態依然としたジャズの耳だと笑われそうだが~》と書かれていますが、僕はもちろん、笑いませんよ(笑)
そんなわけで、真に優れたスタンダード曲を、デペイズマン的手法としてしか扱わない一派の音楽にあまり魅力は感じられないです。
angel eyesの好きなテイク~また聴いてコメントします。
ゲイリー・トーマスはオリジナル曲では際立った個性と迫力のある演奏でなかなかに興味深いのですが、スタンダードの解釈という点では従来の方式とは大きくかけ離れております。おっしゃるようにスタンダード曲をそのまま取り上げるのは面白くない、という考えから、曲が持つ「歌」は無視して「旋律」だけを発展させる方式なのでしょう。
シェップが「いそしぎ」を吹いたり、FMP(Free Music Production)の集団即興演奏で「モリタート」を挿入したのは、アヴァンギャルドに於ける「面白さ」を狙ったものであり、それはそれで閑話休題的な面白さがありますが、初めからそのメロディを崩したのでは面白さがありませんね。
やはりメロディありきです。
皆さん、bassclef さんの「夢見るレコード」で、UAのサックスマン・ラベルに深溝ありの深い話題が展開しております。レコード・マニア必見です。
古いパソコンから書き写してやっと読めました。
今週は、炎上、乱闘が期待出来ますね。過激路線へ転じられたのでしょうか・・・。(笑)
Angel Eyesは、好きな曲です。
お気に入りは、
Ray Bryant Trioと Fontessa は、昔から好きなアルバムなので、dukeさんに賛成です。
3枚目は、Live In Japan 1977 Vol.2/Zoot Sims
メイジャー・ホリーが、最高にご機嫌なパフォーマンスを展開するアルバムだ!
さて、特等席で炎上、乱闘を見るとするか。(笑)
アクセス数が少なかった理由がわかりました。(笑)
過激路線に転じたわけではありませんが、今年は異論反論も話題にしようと思っております。
礼を尽くすブライアントに赤いドレスのエンジェル・アイズ、さりげない美しさがあります。
シムズとメイジャー・ホリーのライブはお店でかけていただいたアルバムですね。あれから買いましたが、ミディアムテンポで乗りまくるシムズに唸ります。
ゲイリー・トーマスやM-BASE派のファンも多いと思われますので、炎上の際は消火器で援護してください。KAMI さんが脇に差している木刀では燃えるおそれがあります。(笑)
Angel Eyes はシナトラのイメージが強いですね。
1.Brubeck/ Angel Eyes(Columbia)
シナトライメージそのままって感じでしょうか。 ピアノの出だしも良いですがデスモンドがやっぱりいいですね。
2.Jamal/ All Of You(Argo)
これはかなり斬新なアプローチだと思いますが、ジャマル的といえばそうなんでしょう。
3.Ray Bryant Trio (Prestige)
一番馴染みのあるのがこれかもしれません。
フォンテッサは録音がどうしても気に入りませんので・・