ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『よりよき人生』

2012-12-19 19:27:27 | 新作映画
※映画のラストカットに触れています。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



(原題:50/50)

---- この映画の監督のセドリック・カーンって
フランスの人だよね。
本来、苦手としているんじゃなかった?
「うん。
近頃のフランス映画って、
ドラマトゥルギーで押していくよりも
観る方の感性を問うかのような受身の作品が多い感じで、
ちょっと苦手。
でも、この映画は、分かりやすかったなあ」

----どういうお話ニャの。
「主人公は、
学生食堂の調理人として働く35歳のヤン(ギョーム・カネ)。
シェフとして身を立てようと就職活動中に、
面接先のレストランでウエイトレスの
ナディア(レイラ・べクティ)と出会い、
その日のうちに結ばれる。
最初、この映画がこんなにも苦い物語になるとは思わず、
このナンパの仕方はスゴイな…なんて
感心しながら観ていたんだけど、
実はここから急展開。
彼女はシングルマザーでひとり息子のスリマンがいる。
ある日、3人で出かけた湖畔で、ヤンは廃墟を見つけ、
そこを自分たちの人生のために買い取り、
レストランとして開業しようとする。
ところが先立つものがなく、
ヤンは頭金を捻出するために
数社の消費者金融に手を出し、
瞬く間に多重債務者となってしまう。
しかも営業に必要な安全面の設備を怠ったために、
当局から許可が下りない。
しかし、開業の夢を捨てきれないヤンは、
借金地獄に陥らないため店を手放せというカウンセラーの言葉にも耳を貸さない。
そんな中、より高い賃金を求め、
ナディアはカナダへ。
残されたヤンとスリマンは…というお話」

----これは暗いニャあ。
「うん。
これ、いまの日本の風潮である自己責任、
あるいは新自由主義の立場から見れば、
もう完全に自分たちが悪い、
見通しが甘いということになってしまう。
もし、映画を、ストーリーやキャラ設定で観るんだったら、
それだけで、この映画はアウト、受け入れられない…
こういう人も多いと思う。
だけど、別の角度から観ると、
これが映画として、なかなかオモシロいんだ」

----どういうところが?
「ひとつは
ヤンとスリマンの疑似的父子関係。
それまで一人暮らしだったヤンは、
残されたスリマンの面倒をも見なくてはならなくなる。
彼は実の父親ではないわけだけど、
息子を施設に入れることだけはしようとしない。
救貧の中、スリマンは万引きに手を染める。
それを叱るヤン。
だが、とうとうふたりは
食べ物を盗んで売るようなことにまで手を染めてしまう。
そんな中、融資返済が立ち行かなくなった彼が取った手段とは…」

----えっ、どうするんだろう?
「ここがまた、モラル的には受け入れられない人もいるかも。
ただ、もしこれが普通のクライムサスペンスだったら、
当然ありというか、胸がすく解決かも。
その部分については、さすがに喋るわけにはいかないけどね。
さてこの作品、
興味深いことに、
主人公がだれかに会おうとすると、
絶対と言ってもいいほど一度では会えない。
そして、映画はそれを丁寧に何度も写すことで、
彼の人生が巧くいっていないことを告げ、
しかも、同時に
あるリズムをもたらしているんだ。
それとと触れておきたいのがラスト。
この物語、ラストカットはどうなるんだろうと、
あれこれ想像したんだけど、
すべて見事に裏切られた。
それは真っ白な雪の平原。
そしてそこに溶け込んでいくようなヤンとスリマン。
詩的で美しい、ほんとうに忘れられないエンディングだったね」





                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「もう、国外脱出しかないのニャ」悲しい


※ビターだけど引き付けられる映画だ度
コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。