ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

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『ボビー』

2007-01-06 11:29:33 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がいいかも。
ボビー・チョコ
(原題:Bobby)

「う~ん。う~ん」
----ど、どうしたのニャ?
「いやあ、この映画、あまりにも特殊すぎてね。
ご紹介が実に難しいんだ」

----ちょっと待って。
これって確か、ビッグスターがたくさん出ている映画だよね。
ロバート・F・ケネディ=ボビーが暗殺された1968年6月5日、
アンバサダーホテルに居合わせた人々に
何が起こったのかを描いているのでは?
「そうなんだ。
ストーリーからこの映画を語り始めると、
もうそれだけで話は終わってしまう。
主として登場するのは22人。
さまざまな人種、年齢、階層、境遇の彼らが、
『グランドホテル』形式で描かれるんだけど、
それ自体は正直言って刺身のつまみたいなもの。
これまでに観てきた映画から、
大きく一歩を踏み出すことはない。
まあ、当時の空気感だけは出ているかな」

----空気感?
「たとえばその頃、
このアンバサダーホテルで
ある映画が撮影されたんだけど、
それが何かフォーンは知っているかな?」

----う~ん。ニャんだろう?
「正解は1967年の映画『卒業』。
ミセス・ロビンソンとベンの情事が行なわれるのが
このアンバサダーホテルなんだ。
ホテルの従業員たちもその映画の会話をしていて、
それによるとアン・バンクロフトが胸を見せると言うのは
当時の感覚では、まずありえないことだったらしい。
彼らはそのシーンについて
ボディダブル(吹き替え)ではないかと
語り合っている」

----ちょ、ちょっと話が横道にそれすぎていない?(笑)
「いや、これもまた伏線なんだけどね。
まあいいや。
他にも大統領選のボランティアが
ヒッピーからもらったドラッグに溺れたりなんていう
エピソードもある」

----でも、それだったら
当時の世相を描いただけの映画になってしまうよね。
完成披露試写会では
映画が終わった後、拍手が起きたと言うじゃニャい。
「そうなんだ。周囲ではすすり泣きも起こった。
それはこの映画が、
ある時点でドラマとは別のもの-----
高い理想を掲げた一人の政治家の
崇高な魂の<記録>と<記憶>に
すり替わってしまうからなんだ」

----えっ。その言い方って大胆すぎない?
※ネタバレ注!!!
22人それぞれの中で進行していたドラマは
ある瞬間でピタリと止まる。
民主党カリフォルニア選挙で圧勝し、
勝利演説を行なうためにホテルに戻ってきたボビー。
彼らの目は一様に、このカリスマ的政治家に注がれるんだ。
ところが映画は
そこでボビーの演説を聞かせようとはしない。
変わりに流れるのは
※再びネタバレ注!!!
『卒業』のテーマにもなった、
サイモンとガーファンクルの『サウンド・オブ・サイレンス』。
もう、これにはやられたね。
あの時代を象徴するにはこれしかないというベスト・チョイス」

----でもボビーの演説をまったく聞かせないってのも…。
「うん。その気持ちも分かる。
ところがボビーのスピーチが終わって
彼が凶弾に倒れる厨房のシーンになると、
急に別の日の彼の<言葉>が流れ出す。
それは2ヶ月前のキング牧師暗殺に対するボビーの追悼演説。
ここでもうぼくの涙は止まらなかった。
これほどまでに分かりやすくピュアな演説をする政治家が
果たして今の時代にいるだろうかとね。
ボビーが語りかけていることは実にシンプル。
『だれもが自分と同じように、
よりよい明日にしようと夢見て生きている』。
つまり世界中の誰もが同胞。
だから戦いをやめようと言うことなんだ。
憎しみは憎しみを、
そして復讐は復讐を生む。
まるで今の時代を予見しているかのようだ。
この映画は、彼のこの演説を聴かせるためにあると言っても過言ではない。
もちろん、
それまで自分のドラマを生きていた人たちの時間を止め、
彼らの顔をボビーと言う希望の光で照らし出すと言う
演出の妙があったことを考えると、
やはりこれは一つの映画的話法なのかもしれないけど…」

----ふうん。監督は誰ニャの?
「俳優でもあるエミリオ・エステベス。
彼はロバート・F・ケネディが亡くなった夜、
それをニュースで知って父親のマーティン・シーンを起こしたのだとか。
長い間、ケネディ家の支援者だった父は、
アンバサダーホテルに息子を連れて行ったんだって」

----ニャるほどね。
だからこの映画にはマーティン・シーンも出ているわけだ。
その日のこと、えいも覚えている?
「もちろん。
ぼくにとってはJFK暗殺よりショッキングだったね。
ボビーはすぐに死んだわけではなかった。
あの日、ぼくは彼が死なないように必死に祈り続けた。
おそらく自分の人生の中で、
一人の人が死なないように心底願った最初の人、
それがボビーだった気がする」



     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンもボビーの演説聴きたいニャ」悲しい

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※画像はアメリカのポスター。下は完成披露試写で配られたチョコです。

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日本インターネット映画大賞募集中 (日本インターネット映画大賞スタッフ)
2007-01-07 01:22:20
突然で申しわけありません。現在2006年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票に御参加いただくようよろしくお願いいたします。なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.mirai.ne.jp/~abc/movieawards/kontents/index.htmlです。
Unknown (mig)
2007-01-12 15:17:16
えいさん、こんにちは。

この作品、去年トロント映画祭で観てきたんですが、
すごく興味深く好きなジャンルでした。
キャストも豪華で。。。

ローレンスフィッシュバーンの厨房での会話など、細かなやりとり、セリフで笑ってる人も多かったんですがそこが英語のために理解出来ずに悔しかったです。
春に公開したらまた観るつもりです☆
■migさん (えい)
2007-01-14 00:00:03
こんばんは。

トロントでご覧になったんですか?
うらやましいです。
と言っても、ぼくも語学はダメで
おそらく半分以上、分からなかったと思います。

監督のエミリオ・エステベスと
デミ・ムーアが共演している……。
それだけで感慨深かったです。
Unknown (april_foop)
2007-02-10 11:47:24
以前にえいさんが、『ボビー』は別物的なことをおっしゃってた意味がわかりました。

ボクは恥ずかしながらロバート・ケネディについて知らなかったので、彼の言葉に心の底から感動しました。
この作品、『ボビー』という映画なのか『ボビー』という伝記なのかわからないですけれど、自分の中で一生響き続ける作品(人物)になったことは確かです。
■april_foopさん (えい)
2007-02-10 14:03:01
こんにちは。

april_foopさんに気にいってもらえて、
同志が一人増えたような
そんな嬉しい喜びをかみしめています。

この映画が
国境や世代を超えて多くの人の胸に届くことを
願ってやみません。
こんにちは。 (きらら)
2007-02-18 10:57:15
「卒業」との関連はそういうことだったのですか。。。
演説のときに流れていた音楽、何だったかなーってすごく考えていたのです。
歴史的な背景どころか、本人のこともわかっていないで鑑賞してしまったのですが、えいさんの記事読んだらもう一度きちんと鑑賞してみたくなりました。
http://blog.goo.ne.jp/some-like-it-hot/ (mig)
2007-02-18 11:57:08
えいさん。
また観てきました
今度はきちんと字幕で理解できてよかったです
■きららさん (えい)
2007-02-18 13:53:58
こんにちは。

ぼくにとってはボビーも
『卒業』も特別な存在だったので
この映画もまた特別なものとなりました。

でも先日も後輩と話したのですが、
この映画は当時を知っているかいないかで
大きく変わるかも知れませんね。
■migさん (えい)
2007-02-18 13:56:02
こんにちは。

あららタイトルのところにURL。
と、それはさておき、
この映画は言葉が重要なファクター。
改めてご覧になれたとのこと、
ボビーの言葉は強烈ですよね。
胸に響きました (やまたく)
2007-02-18 22:01:42
こんばんは。
40年近く前の政治家の言葉が、
まるで今生きている世代に
投げ掛けられているようにも思えました。
ともすれば歴史に葬り去られてしまう
イニシエのメッセージを拾い上げた
監督に感謝です!

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