ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

2014-01-25 14:56:24 | 新作映画
(原題: THE WOLF OF WALL STREET)


----おっ、観てきたばかりの映画。
最近にしては珍しいニャあ。
アカデミー賞がらみだと、
『アメリカン・ハッスル』『ネブラスカ/ふたつの心をつなぐ旅』もまだなのに…。
「そうなんだよ。
このままだと、
ついつい喋るのを逸してしまいそうで。
この映画くらいは、興奮が持続しているうちにと思って…」

----そんなに興奮するような映画だったの?
「うん。興奮なんてもんじゃない。
マーティン・スコセッシ監督とレオネルド・ディカプリオが組む作品にはハズレがない
なかには『ディパーテッド』『シャッターアイランド』について、
あまりよくないようなことを言う人もいるけど、
それでも水準をはるかに上回っているのは間違いない」

----スコセッシ映画の中でディカプリオがやる役って、
あまり褒められたような人間じゃない気がするけど…。
どういうところがいいの?
「スコセッシがディカプリオという才能を得て描くのは、
いつも、ある種のモンスター
同じ人間なのに、どうしてこんな人が生まれたの?
って言いたくなるほど、
通常の人間の生き方とは違う。
とことん欲と野望にまみれ、
そしてその野望を、さして努力もせずに実現させちゃう。
いわば天賦の才を持った人ばかり。
そう、スコセッシは努力によって成功した偉人なんか興味がない。
普通とは違う才能を持ちながら、
世のため人のためではなく
自分のために使う…そういう人を描いちゃうんだ

ある意味のピカレスクロマン
そのヤバさが<闇の芸術>=映画にはピッタリ」

----ということは、今回の
『ウルフ・オブ・ストリート』もだニャ。
「そういうこと。
この映画の主人公、
株式ブローカーのジョーダン・ベルフォードはその典型例。
なにせ、貯金ゼロから年収49億円まで上り詰めちゃうんだから。
それも、他人の人生を踏みにじってね」

----へぇ~っ。
それで良心の呵責とかはないの?
「微塵もね。
そんなのを持っていたら、
彼のような豪快な人生は歩めないし、
映画としても中途半端でオモシロくなくなっちゃう。
このジョーダンという男、
成功の階段を歩むにつれ、
その散財ぶりも常軌を逸したものとなる。
会社の中に下着姿の楽隊やストリッパーを呼び込むし、
その毒気にあてられたように社員同士はオフィスのあちこちで
セックスにいそしむ。
彼自身の生活ももちろんド派手。
プール付きの豪邸などは当たり前、
女、ドラッグ、ヘリにクルーザーと、
その日々は放蕩三昧。
誰かがプレスに書いていたけど、
まさに“現代のカリギュラ”」

----でも、
そういう人を
スコセッシ自身は、
どう思っているんだろう?
「ぼくにとっては、
映画として面白ければいいワケだから、
それは二の次になるんだけど…。、
スコセッシは手放しでほめているようには見えないね。
ジョーダンは、
社員を集めての演説で
『君たちは大金持ちになる自由もあるし、
貧乏になる自由もある』
と言い放つ。
それを聞いて、熱狂する社員。
その状況は、いまの日本の格差社会の中で、
さらなる自由競争を推し進めようとしている人たちの空気とも酷似している。
確か、新自由主義の旗を振った竹中平蔵氏
これと同じセリフをどこかで言っていたような…。
これに対してスコセッシが同意しているとは思えない。
だからこそ、彼が描く“栄光”の人には、
必ずと言っていいほどその後の“没落”がある

ただ、繰り返し言うけど、
映画というのは“モンスター”を描くからこそオモシロい。
そのモンスターを演じるディカプリオの演技も彼の総決算と断言して間違いない。
自分のお尻にロウソク付きたてて女王様にかしずいたり、
娼婦のお尻からドラッグを吸ったりと、
もう、あきれかえるほどの壊れぶり。
中でも、究極のドラッグを試した後に起こる彼の<異常>は見モノ。
言葉はまともに喋れず、
手足も動かない中、
這いずり、階段を転げ下りながら自分の車へ。
ようやく帰宅した後のジョナ・ヒル演じるドニとの格闘は抱腹絶倒、空前絶後のオモシロさ。
とにかく3時間があっという間に過ぎてしまうよ」




フォーンの一言「これはフォーンも観たいのニャ」身を乗り出す

※「お腹いっぱい」はこういうときに使う言葉だ度

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4 コメント

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最高でした! (のりのり)
2014-02-04 08:22:41
えいさん、こんにちは。
公開前に、ブログを拝見して、自分の目で見るのを楽しみにしていました。

昔からのスコセッシファンには、レオとのコンビは嫌われてますが、コンビ作でアカデミー賞にノミネートされなかったのは、シャッターアイランドだけで、そのシャッターアイランドですら、スコセッシの世界興行最大のヒット作。本作も世界中で大ヒットしていますし、硬派で正攻法な映画製作を続けてこれだけ成功しているコンビは、いま、他にいないと思います。

これはまさに、スコセッシとレオの最高作ですね!導入部からの痺れるような語りの上手さと流麗なカメラワーク、脇キャラに至るまで完璧なキャスティングと演技で、映画にのめりこんだ3時間でした。
アメリカでは、主人公たちのライフスタイルを称賛しているとか、えげつないドラッグ・性的描写などに、数々の批判もあびせらる一方、熱烈に支持もされているのもうなずけます。これを主要5部門にノミネートしたアカデミーも偉い!

ばか騒ぎの華々しさや不道徳な描写、キャストの演技の壊れっぷりに、ともすれば注目が行っているようですが、自分としては、見終わったあとには、引退スピーチのしんみりしたやり取りだとか、FBI捜査官とのヨットでの会話だとか、2番目の妻との修羅場の直前のやりとりだとか、そういうシーンが印象に残りました。
スコセッシがどう描いたか (とらねこ)
2014-03-09 10:34:31
なるほど、スコセッシがこの人物を手放しで褒めている訳ではない、ですか。
最後の没落は、静かに訪れる彼の内面の死でした。

>その状況は、いまの日本の格差社会の中で、
>さらなる自由競争を推し進めようとしている人たちの空気とも酷似している。
ここを読んで良かったなと思いました。今後も勉強させていただきます。
■のりのりさん (えい)
2014-03-15 13:54:10
こんにちは。

亀レス、ごめんなさい。
確かに、この映画がオスカー候補になったというのは画期的かも。
まあ、だけど落ち着くところに落ち着きましたね。
やはり、オスカー会員は良識的な作品がお好きな感じ。
こういう、脂っこい映画、ぼくは嫌いじゃありません。

これからもよろしく。
■とらねこさん (えい)
2014-03-15 13:56:31
こんにちは。

結局、アメリカは新自由主義。
そして日本はそれに追随。
この構図はしばらくは変わらないんでしょうね。

ぼくも、
それに対して
せいぜいここでこの程度の毒を吐く程度。
なんか、無力感を感じます。

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