ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『一命』

2011-10-02 22:27:32 | 新作映画

----これって、昔の映画のリメイクだよね。
「そうなんだけど、
あまりそのことを、前面に出してはいない。
やはり、小林正樹監督の『切腹』
あまりにも名作だからかもしれないね。
で、その元となった原作『異聞浪人記』の映画化の方が
強調されているみたい。
ぼくは、はて、もしかして違う脚色かな…?と、
もう一度『切腹』のあらすじを調べてみたんだけど、
ほとんど同じだね」

----どういうお話ニャの?
「17世紀。江戸時代初頭。
戦国の世は終わり、徳川の治世下では
大名の御家取り潰しが相次ぎ、
仕事も家もなく私生活に困った浪人たちの間では
【狂言切腹】が流行していた。
それは裕福な大名屋敷に押しかけ、
『庭先で、切腹させてほしい』と願い出ると、
面倒を避けたい屋敷側から職や金銭がもらえるという、
ある種の“ゆすり”。
さて、ある日、名門・井伊家の前に一人の侍が、切腹を願い出る。
名は津雲半四郎(市川海老蔵)。
家老の斎藤勘解由(役所広司)は、
数か月前にも同じように訪ねてきた若浪人・千々岩求女(瑛太)>の、
狂言切腹の顛末を語り始める。
それは、武士の命である刀を売り、
竹光に変え、切腹を願い出た若浪人の話だった…」

----えっ?竹光じゃお腹切れないよ…。
「そこなんだよね。
実はぼくがこの映画を観たのはもう40年近く前。
某大学の映画研究会が催した映画上映会でのこと。
それは16mmだったんだけど、
もう、この切腹のシーンが怖くて怖くて。
切れないのに無理やり斬ろうととする。
モノクロ映像なのに、
その残酷さと血なまぐささが強烈に焼きついている。
で、正直言うと、
この半四郎の方はあまり覚えていなかったんだ。
ところが、今回、この三池崇史監督版を観ると、
これが見事なくらいに今の時代にピッタリと符合する」

----それは格差社会とかそういうこと?
「うん。その背景にあるものもね。
実は、これはすぐ明らかになることだけど、
この半四郎は求女の妻・美穂(満島ひかり)の父親に当たる。
求女の父は普請奉行の千々岩甚内(中村梅雀)。
半四郎と同じ福島家家臣。
折しもの御家取り潰しの憂き目に遭い、
無念の中、病気で逝ってしまう。
半四郎は職を失うも、
残された甚内の幼息子・求女を引き取り、
美穂と共に3人で暮らし始める。
江戸城下では、行商人や町人たちがにぎやかに行き交う中、行き場のない浪人が溢れ、
半四郎も傘貼りで糊口をしのぐ…。
と、ストーリーはここまででいいだろう。
この映画、見どころなのは
このすべてが明らかになった後、
井伊家の庭で解勘由に切々と語る半四郎の言葉。
もう、すべてが名台詞の連続だけど、
その中でツイッターでも紹介したこの言葉を…
勘解由の『気が狂ったか?』を受け、
『気が狂ったかと?拙者はただ生きて、春を待っていただけだ』
この“春”というのは、もちろん“人生の春”。
まじめにこつこつと生きていれば、
人並みの生活くらいできるであろう?
だが、現実はそれを許さない。
これって、まさしく今と同じ。
半四郎は、もしかしたら、
自分がそこ(解勘由のいる屋敷)にいて、
解勘由が自分の立場になっていたかもしれないとも言う。
その違いは、ほんのちょっとした差。
だが、既得権益を手にしたものは
そこからふるい落とされたものの気持ちを少しも慮ることなく、
自分の立場を守ることに恋々としている…」

----ニャるほどね。
「その象徴として
なんと<猫>が使われているのも憎い。
求女と美穂は汚れた野良猫を飼うものの、
その猫はあっけなく死んでしまう。
一方の勘解由は真っ白な猫を飼っている。
こちらは暖かいところでのうのうと暮らしている。
最後、大立ち回りがある時でも、我関せず」

----それは猫だからニャあ…。
大立ち回りって殺陣もあるんだ。
「うん。これがまた意味のある殺陣。
半四郎は実際に人を殺めることなく、
竹光でバッタバッタなぎ倒してゆく。
その無類の強さ…。
つまり、これはこういうことを意味している。
武士としてこんなにも強い男がその力を発揮する場も与えられず、
城下で傘貼りをしていなくてはならない。
決して、世の中は実力通りではない。
運や政治力が非常に大きく作用しているとね」

----ニャるほど、今の時代だニャあ。



                    (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「3D画面になったときの明度も計算してあるみたいなのニャ」ちょっと怒るニャ


青木崇高、新井浩史、波岡一喜の3人がまた憎らしい度

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Unknown (KLY)
2011-10-02 22:54:21
オリジナルは未見です。お話的にもですが私は海老蔵の目力に魅せられました。さすがは市川家嫡男。歌舞伎の方でも芝居はともかく、あの目力が素晴らしいと評判を得るだけあって、これはもう天が彼に与えた力なんでしょうね。台詞回しまでちょいと歌舞伎風になっていたのはご愛嬌でしょうか(笑)

>※青木崇高、新井浩史、波岡一喜の3人がまた憎らしい度

この3人地味にキャスティングの勝利かと。ほんと憎たらしいですよねぇ。
■KLYさん (えい)
2011-10-04 22:49:41
こんばんは。
目力のある役者でしたね。
セリフ回しは、
後半、彼が感情を爆発させるに至って、
それまでの抑制が解き放たれ、
体がゾクッとしました。

あの3人組はよく集めましたよね。
本人たちも納得でしょう(笑)。
遠き春 (悠雅)
2011-10-16 21:49:24
>『気が狂ったかと?拙者はただ生きて、春を待っていただけだ』
それまで、涙もこぼれないほど息を詰めて観続けてきて、
その一言に、やられてしまいました。
何と哀しく切ないことか・・・

海老蔵の演技、所作、眼力、どれも凄かったし、それぞれのキャスティングもよかった。
決して希望があるお話じゃないけど、力強い作品を観た充足感でいっぱいです。
こんにちわ (にゃむばなな)
2011-10-17 16:56:05
ウォール街を発端に世界中で格差社会に対するデモが行われている昨今に封切られたこの映画。
ある意味時代がこの映画を呼んだようにも思えるのですが、こういう時代だからこそもっと注目されてほしいんですけどね~。
■悠雅さん (えい)
2011-10-19 23:04:07
あの言葉は胸に迫りますよね。
冷静に考えてみると、
このお話自体は、
ちょっと受け入れがたいところもあるのですが、
いまの時代に必要な作品だと言う気がします。
■にゃむばななさん (えい)
2011-10-19 23:05:34
>時代がこの映画を呼んだ…
いい言葉ですね。
海外で話題になっているのも
よく分かる気がします。
この格差社会、
放置しておいていいはずがありません。
Unknown (ゆっこ)
2011-10-24 09:57:37
ストーリーよりも・・
私は冒頭の瑛太の切腹シーンが重すぎて・・。
あの時も観ていられず、目を閉じ耳を塞いで過ぎるのを待っていました。
終了後も気持ち悪くて歩くのがやっと・・。

だけどほんの400年前まで、あんなこと平気で
やっていたなんて信じられない。
人間って、日本人って怖い。
こんばんは (ノラネコ)
2011-10-25 21:41:38
オリジナルを知っていても、十分面白かったです。
これは何よりも物語の普遍性ですね。
社会的メンツと人間性の激突は400年前の世界を描いて、今の世を観ているようなリアリティがありました。
私はどちらかというと小林正樹版よりも、キャラクター造形など原作に近い印象を受けました。
■ゆっこさん (えい)
2011-10-30 22:55:38
こんばんは。

あの切腹シーンはキツかったですね。
『切腹』では、あそこまでやっていたかな?
竹光が折れてささくれ立ったものを
さらに突き立てる。
この話、押しかけ切腹じゃないか、
迷惑を被った方のことも考えろと言う人もいますが、
あそこで「まだまだ」はないでしょう。
確かに日本人は怖い。特殊ですね。


■ノラネコさん (えい)
2011-10-30 23:03:41
こんばんは。
「普遍性」、この言葉はピッタリですね。
今日、どなたかの呟きで知ったのですが、
田原総一朗がこの映画を評して
「反戦映画」と言ったとか言わないとか…。
現代に十分通用する物語でした。

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