(原題:FOXCATCHER)
----『フォックスキャッチャー』って“キツネ狩り”のことだよね。
そんな歌、なかったけ?
「中島みゆきだね。
しかし、変なこと知っているなあ。
この映画のそれは、レスリングチームの名前」
----レスリング・チーム?
「うん。
野球で言えば球団名みたいなもの。
これはね。
自らが率いるレスリング・チームを世界一に導く野望を持った
大企業デュポン社の御曹司ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)と、
彼によって招聘された
ロサンゼルス・オリンピックのメダリスト、
デイヴ(マーク・ラファロ)&マーク・シュルツ(チャニング・テイタム)の物語。
デュポンが住んでいるのは、
かつて独立戦争の激闘が繰り広げられ、
キツネ狩りも行われた広大な土地。
彼は、そこに巨額の資金を投じて
レスリングのトレーニング施設を建造しているんだ」
----ニャるほど。
やっとタイトルの意味が分かってきた。
「さて、ここで一旦
デイヴ&マークの話へと移ろう。
アメリカではレスリングはメジャーなスポーツとは言えず、
レスリングで祖国にメダルをもたらしたものの、
彼らを取り巻く環境は厳しい。
マークは質素なアパートでひとり暮らし。
幼い頃に両親が離婚した後、
ずっと父親のように寄り添ってくれた兄デイヴも、
今は妻ナンシー(シエナ・ミラー)との間にふたりの子をもうけ、
つつましくも幸せな家庭を築いている」
----あらら、それじゃあ
マークの疎外感が募るニャあ。
「だよね。
そこに“悪魔のささやき”。
デュポンは言う。
『ソ連は国を挙げてレスラーを育てている。
しかし、アメリカは、君に栄誉を与えていない。
敬意を払うべきものを無視するのは間違いだ…
ふたりで成し遂げよう。偉大なことを』」
----そんなこと言われたら
舞い上がっちゃうよね。
「でしょ。
さて、かくして
デュポン率いる
“フォックスキャッチャー”はスタートを切るが…。
まあ、ここまででいいかな」
----ガクッ。
フォーンはそこからが聞きたいのニャ。
「う~ん。
できれば何も知らずに見たほうがいいと思うな。
まあ、チラシなんかに書いてあるから
それは無理だろうけど…。
しかし映画の紹介って難しいよね。
宣伝側としては
その“実話”の“事件”。
それがなぜ起きたか?に
この映画の見どころを集中させたいだろうからね。
でも、それ以外にも見どころはあるし、
ぼくはそこをこの映画の売りにしてほしい」
----その“売り”って?
「やはり、
アカデミー賞主演男優賞候補にノミネートされた
スティーヴ・カレルの演技だね。
彼って
コメディアンとまではいかなくても
なんとなくそこにいるだけで周りをクスッとさせる、
そんなキャラクター・イメージが確立されていた。
ところがここでは
いったい何を考えているのか分からない
精神的なモンスターを演じて見せる」
----モンスター?
「そうだね。
財力に任せて
それまですべて自分の意に添わせてきた男。
鳥類学者で慈善家でそして切手収集家。
金があるということは、
時間もあれば教育も受けられる。
だからこれまでも思いの通りに生きてこられたんだ。
ある一つの例外を除いてはね」
---例外-??
「それは、
ジョン・デュポンの母親(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)。
名馬の飼育に夢中になって彼のことは
まったく顧みない。
それどころかレスリングなるものを侮蔑したような態度さえ見せる。
どうにか自分を認めてほしい。
その承認欲求はかなりなもので、
母親がジムに現れたときなど、
レスリングにはド素人の彼が
みんなを集めて
いかにも彼らの上に立って指導しているかのように
練習について一説ぶったりもするんだ。
このシーンは見モノ。
いや、正直言うと痛々しくて観てられなかった。
根が素直なデイヴなどは、
訳が分からず
『えっ?』という顔になるし…」
----あれっ。デイヴもチームに入ったの?
「デュポンのほんとうの目的は彼だったからね。
まあ、ごり押しで獲得したわけだ。
そうなると、今度は、マークがオモシロくない。
なんだ。自分は当て馬か…と?
さあ、こうなるともう泥沼だ。
その行く先が…。
と、ここまで話したから
もういいだろう。
この映画、
監督は『カポーティ』『マネーボール』のベネット・ミラー。
これまでぼくとは、
あまり相性がゆくなかったけど、
今回はその演出を堪能したね、
だれかが“もったいぶった演出”と言っていたけど、
それがデュポンの人となりを表すには
実に効果的だったと思う。
まあ、これで作品賞にノミネートされなかったのだから、
よほどほかの作品が凄いんだろうなと、
そういう楽しみは残ったけどね」
フォーンの一言「えいは、この事件知らなかったのニャ」
※それだけに余計びっくりだ度



※スティーヴ・カレルの演技は『チャンス』のときのピーター・セラーズを思い起こさせました。
こちらのお花屋さんもよろしく。
こちらは噂のtwitter。

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----『フォックスキャッチャー』って“キツネ狩り”のことだよね。
そんな歌、なかったけ?
「中島みゆきだね。
しかし、変なこと知っているなあ。
この映画のそれは、レスリングチームの名前」
----レスリング・チーム?
「うん。
野球で言えば球団名みたいなもの。
これはね。
自らが率いるレスリング・チームを世界一に導く野望を持った
大企業デュポン社の御曹司ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)と、
彼によって招聘された
ロサンゼルス・オリンピックのメダリスト、
デイヴ(マーク・ラファロ)&マーク・シュルツ(チャニング・テイタム)の物語。
デュポンが住んでいるのは、
かつて独立戦争の激闘が繰り広げられ、
キツネ狩りも行われた広大な土地。
彼は、そこに巨額の資金を投じて
レスリングのトレーニング施設を建造しているんだ」
----ニャるほど。
やっとタイトルの意味が分かってきた。
「さて、ここで一旦
デイヴ&マークの話へと移ろう。
アメリカではレスリングはメジャーなスポーツとは言えず、
レスリングで祖国にメダルをもたらしたものの、
彼らを取り巻く環境は厳しい。
マークは質素なアパートでひとり暮らし。
幼い頃に両親が離婚した後、
ずっと父親のように寄り添ってくれた兄デイヴも、
今は妻ナンシー(シエナ・ミラー)との間にふたりの子をもうけ、
つつましくも幸せな家庭を築いている」
----あらら、それじゃあ
マークの疎外感が募るニャあ。
「だよね。
そこに“悪魔のささやき”。
デュポンは言う。
『ソ連は国を挙げてレスラーを育てている。
しかし、アメリカは、君に栄誉を与えていない。
敬意を払うべきものを無視するのは間違いだ…
ふたりで成し遂げよう。偉大なことを』」
----そんなこと言われたら
舞い上がっちゃうよね。
「でしょ。
さて、かくして
デュポン率いる
“フォックスキャッチャー”はスタートを切るが…。
まあ、ここまででいいかな」
----ガクッ。
フォーンはそこからが聞きたいのニャ。
「う~ん。
できれば何も知らずに見たほうがいいと思うな。
まあ、チラシなんかに書いてあるから
それは無理だろうけど…。
しかし映画の紹介って難しいよね。
宣伝側としては
その“実話”の“事件”。
それがなぜ起きたか?に
この映画の見どころを集中させたいだろうからね。
でも、それ以外にも見どころはあるし、
ぼくはそこをこの映画の売りにしてほしい」
----その“売り”って?
「やはり、
アカデミー賞主演男優賞候補にノミネートされた
スティーヴ・カレルの演技だね。
彼って
コメディアンとまではいかなくても
なんとなくそこにいるだけで周りをクスッとさせる、
そんなキャラクター・イメージが確立されていた。
ところがここでは
いったい何を考えているのか分からない
精神的なモンスターを演じて見せる」
----モンスター?
「そうだね。
財力に任せて
それまですべて自分の意に添わせてきた男。
鳥類学者で慈善家でそして切手収集家。
金があるということは、
時間もあれば教育も受けられる。
だからこれまでも思いの通りに生きてこられたんだ。
ある一つの例外を除いてはね」
---例外-??
「それは、
ジョン・デュポンの母親(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)。
名馬の飼育に夢中になって彼のことは
まったく顧みない。
それどころかレスリングなるものを侮蔑したような態度さえ見せる。
どうにか自分を認めてほしい。
その承認欲求はかなりなもので、
母親がジムに現れたときなど、
レスリングにはド素人の彼が
みんなを集めて
いかにも彼らの上に立って指導しているかのように
練習について一説ぶったりもするんだ。
このシーンは見モノ。
いや、正直言うと痛々しくて観てられなかった。
根が素直なデイヴなどは、
訳が分からず
『えっ?』という顔になるし…」
----あれっ。デイヴもチームに入ったの?
「デュポンのほんとうの目的は彼だったからね。
まあ、ごり押しで獲得したわけだ。
そうなると、今度は、マークがオモシロくない。
なんだ。自分は当て馬か…と?
さあ、こうなるともう泥沼だ。
その行く先が…。
と、ここまで話したから
もういいだろう。
この映画、
監督は『カポーティ』『マネーボール』のベネット・ミラー。
これまでぼくとは、
あまり相性がゆくなかったけど、
今回はその演出を堪能したね、
だれかが“もったいぶった演出”と言っていたけど、
それがデュポンの人となりを表すには
実に効果的だったと思う。
まあ、これで作品賞にノミネートされなかったのだから、
よほどほかの作品が凄いんだろうなと、
そういう楽しみは残ったけどね」
フォーンの一言「えいは、この事件知らなかったのニャ」

※それだけに余計びっくりだ度




※スティーヴ・カレルの演技は『チャンス』のときのピーター・セラーズを思い起こさせました。

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私も想像よりずっと面白く、ハマってしまいました。
スティーブ・カレルの演技は素晴らしかったのですけど、いつ見ても無表情なんですよね。
この無表情に、どうグラデーションをつけるかがポイントだったのだろうなあ…。
無表情にどうグラデーションをつけるか…。
ぼくが、彼にあんまり無表情を感じなかったのは、
このグラデーションがあったからなんでしょうね。
この映画、キャラクターがみんな立っている。
オスカーにアンサンブル賞というようなものがあったら
これに決まりですね。