ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『そして友よ、静かに死ね』

2012-06-30 15:25:23 | 新作映画
(原題:Les lyonnais)


----この映画観たのって確か昨日だよね。
少し早くない。
公開は9月と、ずっと先だし…。
「確かにそうかも。
でも、この映画のオモシロさはちょっと異質。
昨日、ツイッターでもちょっと呟いたけど、
それについて早く喋りたくなっちゃったってワケ」

----どういう風にオモシロいの?
「まず監督を説明すると
『あるいは裏切りという名の犬』で一躍名を知られるようになったオリヴィエ・マルシャル
物語自体は、
まあ、よくある話で、
男の友情と裏切りを裏社会の中に描いた
一種のフィルムノワールもの、
主人公はエドモン・ヴィダル(通称モモン)。
ロマの生まれの彼は子供の頃
周囲からのいじめに遭っていた。
そんな彼を助けたのがセルジュ。
それをきっかけに仲よくなったふたりは、
その青春時代をギャングの一員として過ごし、
派手な強盗事件を繰り返していた。
やがてふたりは他の仲間を連れて組織から独立。
伝説のギャング“リヨンの男たち”として名を馳せるようになる。
そんな過去を持つモモンだが、
いまは財をなし、妻と子供、そして多くの孫に囲まれて悠々自適の生活を送っている。
そんなある日、彼の元に、
麻薬仲間を裏切って逃亡中のセルジュが捕まったという知らせが入る。
モモンとセルジュの過去を知る若手刑事ブロナーは、
モモンがかつての親友を脱走させるに違いないと睨む…。
もう、すでに足を洗ったことを自分の妻にも約束していたモモンだが、
やはり長年の親友を見捨てられず、
セルジュを救おうと決意する…」

----確かに“よくある”のかもしれないけど、
これはいい話だニャあ。
「この暗黒街、友情、裏切りの3点セットは、
近年では、香港ノワールの方が有名だけど、
フランスにはフランスの伝統がある。
ジャック・ベッケル『現金に手を出すな』とか
『仁義』を始めとするジャン=ピエール・メルヴィルの作品とかね。
でも、なぜかぼくはジョゼ・ジョヴァンニを思い出して…。
どうしてだろう?と考えていて気づいたのが
『ル・ジタン』との共通性」

----ジタンってフランスの煙草のこと?
「そう。
あのパッケージにはジプシーの祖度っている女性が描かれているけど、
実はアラン・ドロン主演の映画に『ル・ジタン』というのがある。
これが、やはり主人公がロマ出身という設定。
このあたりが、ごっちゃになって少し分かりにくいかもだけど、
かつて、日本ではロマという言葉はまだ一般化していなく、
ジプシーと呼ばれていた。
そのため、この『ル・ジタン』も主人公はジプシーと表記されているところが多い。
ロマの言葉が映画で定着するのは
母がロマ人のトニー・ガトリフあたりからだね。
さてここで、ついでに連想ゲームをやっちゃうと、
このアラン・ドロンの主演作に『友よ静かに死ね』というのがある。
こちらの方は、同時期にやはり多くの作品を発表した
ジャック・ドレ―監督作品。
まあ、ぼくはこのジャック・ドレ―+アラン・ドロンだと、
ジャン=ルイ・トランティニャン共演の『フリックストーリー』の方が好きだけどね。
この作品は、ジャン=ルイ・トランティニャン出演作の中でも
『男と女』『暗殺の森』『離愁』『狼は天使の匂い』などと並ぶ名作」

----楽しそうに喋っているけど、
話が大分、逸れてニャい。
「あらら。
さて、この映画に戻すと、
その頃のフランス映画の雰囲気が全編を覆っているんだ。
もっとも、最初のうちは、どちらかというと
日本の実録ヤクザ映画を思わせる
ド派手なバイオレンスが続いたけどね。
それと、この映画の魅力は
若いころ、つまり彼らが活躍した70年代を
生き生きと見せていること。
音楽もディープパープル『ブラックナイト』とか
ジョップリンの『ジャニスの祈り』とか、
おそらく当時では
この手の映画にはだれも使おうとは思わなかったようなハードロックが
ふんだんに使用。
あれから長い時を経た今だからこそ、
強烈なノスタルジーを匂わせる。
さっきも言ったように、話はある程度読めちゃうけど、
こういう映画がこの時代、
フランスから甦ったというのがほんとうに嬉しかったね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「この若手刑事の存在がまたいいらしいのニャ」身を乗り出す

※まだ新米の頃、彼と同席したことがあり、
ある種の憧れを秘めているという設定だ度…
コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
■Keiさん (えい)
2012-10-17 14:18:14
こんにちは。

メルヴィルは孤高の作家。
他の監督とは一線を画していると思います。
日本の実録路線を例に出せば
深作欣二みたいな位置でしょうか?

『狼は天使の匂い』は好きです。
ルネ・クレマンってやはり巧いですね。
返信する
フィルム・ノワール復活 (Kei)
2012-10-14 23:03:20
えいさんも、フランス・フィルム・ノワールがお好きなのですね。

私はJ・P・メルヴィル派。「サムライ」「ギャング」「仁義」「リスボン特急」どれも好きですね。
それと、脚本家ではセバスチャン・ジャプリゾ。「さらば友よ」「雨の訪問者」「狼は天使の匂い」と、どれも心に残るいい作品が多いです。「雨の-」はフィルム・ノワールじゃないですけどね。

NHK-BS辺りで特集放映してくれないでしょうかねぇ。
返信する
■rose_chocolatさん (えい)
2012-07-20 22:23:12
こんばんは。
このタイトルを考えられた方、
おそらく、私の知っているあの方だと思うのですが、
ぼくはニンマリしました。
返信する
書きました! (rose_chocolat)
2012-07-17 09:24:57
ギャング映画に詳しくないのであっさりしちゃっててすみませんという感じですが・・・
これって、邦題をよくよく考えてはいけないですよね(苦笑)
返信する
■rose_chocolatさん (えい)
2012-07-03 22:58:32
こんばんは。
フランス映画祭のラインナップに入っていたんですね。
一昔前は、あの映画祭のイメージと言うと、
もう少し地味な感じの作品が多かった気がします…。
この映画、けっこう自分の映画の記憶を刺激してくれて、
しかもそれがB級どころだったりして…。
つ~んとする懐かしさがありました。
また、レビュー書かれたら教えてください。
お待ちしています。


返信する
観ました! (rose_chocolat)
2012-06-30 16:06:29
フランス映画祭でやってたんで、夜遅かったんですが観てきました。
いやーこれはシブかったですね。
えいさんのように、ノワールものにお詳しい方でしたら、語ることいっぱいありそうな気がします。
私は単に「~~がいい」とかそんな感じになりそうですが(苦笑)、書いたらお邪魔しますね。
返信する

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