ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

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『ヒトラーの贋札』

2007-10-22 23:02:53 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:Die Fascher)

-----ヒトラー? ということは、またドイツ映画かニャ?
「うん。これを観ると
映画の題材というのは、
まだまだ転がっているんだなと思ったね。
舞台は第二次世界大戦中のザクセンハウゼン強制収容所。
そこに各地の収容所からユダヤ系の技術者たちが運ばれてくる。
彼らに課された使命は“完璧な贋札”作り。
ナチス・ドイツは、大量のポンド紙幣贋造を行なうことで
イギリスへ経済的打撃を与えようとしていたわけだ」

----へぇ~っ。それはオモシロい発想。
でもありえないよね。
「いやいや、実は1959年、
オーストリア・トプリッツ湖から大量のポンド紙幣が発見。
一緒に見つかった資料から
これがナチスの“ベルンハルト作戦”なるものが存在したことが分かるんだ。
映画は、その史実を基に
彼ら“特権”を与えられた男たちの葛藤を描いていく」

-----その葛藤って?
「他の収容所のユダヤ人に比べて
まず寝るベッドが違う。
さらには遊ぶための卓球台まで与えられるという優遇ぶり。
しかし、外では同じユダヤ人が銃殺されていて、
その流れ弾が施設内にまで飛んできたりする。
壁一枚を隔ててのこの差。
彼ら贋札作りに従事する男たちは、
同胞が死んでいくのを間近に見るわけだから
その胸中は複雑だ」

----贋札作り自体がナチスに加担しているんだものね?
「そういうこと。
そのためわざとサボタージュをするものも出てくる。
そこでナチスの担当者は
期日までに仕上げないと5人ずつ銃殺すると宣告。
かくして物語は、
自分たちが生き延びるために贋札作りを進めようとするサリーと、
たとえ自分が殺されてでもそれを食い止めようとするブルガー。
その対立を軸に、結核にかかったコーリャ、
あるいは技術がないことを偽ったロセックなど、
多様な人物を配置しながら、
ナチス崩壊の日へと突き進んでゆく」

----さっき史実って言ってたけど、
その中に実在のモデルはいるの?
「原作はブルガーのモデルでもある
アドルフ・ブルガーの著書。
さっきも話したように彼は主義に殉じようとする男。
ところがこの映画は
主人公をブルガーにはしないで
対立するサリーとしている。
このサリーというのがナチに捕まる以前から、
贋札やパスポート偽造などを行なっている、
いわば小悪党。
やはり映画は、こういう男を主人公にした方がオモシロい。
冒頭は、このサリーが
貧しい身なりで戦後のモンテカルロのホテルに現れるところから始まる。
そのファースト・カットがまた美しい。
まるでモネの絵のような淡い色合いの中、
彼が水辺にたたずんでいるんだ」

----ふうん。物語だけじゃなくて
<画>の方も決まっているんだ?
「うん。さらに言えば、
その語り口もね。
ナチスが負けるということは
もう彼らが御用ずみになるということ。
果たして彼らの運命は?」

----ニャるほど。
『ライフ・イズ・ビューティフル』の例もあるしね。
主人公が生き延びるとは限らない…。
いや待てよ。
最初でに生きている姿が出てくるということは…。
「そうなんだよね。
これはネタバレに近いかもしれないけど、
ナチスが収容所を捨てて逃げた後、
初めて壁のこちらと向こう、
まったく違う境遇のユダヤ人同士が顔を合わせる。
ここにこの映画の全てが込められている気がしたな」



         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これは観た方がよさそうだニャあ」身を乗り出す

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8 コメント

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プライド (バニ)
2007-10-23 10:25:21
こんにちは。

>ナチスが負けるということは
>もう彼らが御用ずみになるということ

うなずきました。贋札職人にもプライドがあったんですよね。

先ほどTBを送信したのですが、すみません、うっかり別記事からのものを送ってしまいました。直後にこの映画の部分から送っておきました。お手数かけてごめんなさい!
■バニさん (えい)
2007-10-24 23:57:59
こんばんは。

この映画、エンターテイメント志向と
テーマとが巧く噛み合わさっていて、
思ったよりも楽しめました。
丁寧な絵作りも好みでした。

これからもよろしくお願いします。
ドイツ映画 (april_foop)
2007-12-10 08:28:27
歴史がらみのドイツ映画が、本当に目につきますね。
単なる「こういうことがありました」で終わらない、
観客に訴えるもののある秀作だったと思います。
ラストのサリーが印象的でした。
■april_foopさん (えい)
2007-12-10 21:27:39
こんばんは。

歴史がらみのドイツ映画多いですよね。
最近はそれに加えて、
チェコやルーマニア、ハンガリーなどからも
歴史を見つめた映画が続々出てきました。
今後は東欧からも目が離せないようです。
ドイツ映画が熱い (となひょう)
2008-01-24 22:13:57
こんにちは。
観て参りました。見応えがありました。

今になってようやく「ドイツ映画が凄い」ことを心から実感させられました。
本作はオーストリア映画としてのエントリーですが、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされましたね。浅野さんの出ている作品も気になりますが、こちらも気になります。

贋札で経済を混乱させようだなんて、土壇場でよくそんなこと思いつくよなーと、感心半分と呆れ半分です。こんなところにも《戦争》があったんですね。

ヒース・レジャーのニュース、とてもショックです。
■となひょうさん (えい)
2008-01-24 23:14:39
こんばんは。

この映画の好きなところは、
収容所内の人々を画一的に描かず、
それぞれの生きざまを
明確に描き分けているところです。
しかも、壁一枚隔てた同胞に対する
複雑な思いも…。

昨今のドイツ映画の力量、
その奥の深さを見せてくれた気がします。
アウシュビッツへ行ってきました (ノルウェーまだ~む)
2010-11-11 03:37:21
えいさん、こんばんは☆
歴史の恐ろしさを体感してきました。
映画は行く前に見たのですが、レビューを書く手がすっかり重たくなってしまいました。
私が見たのはこの偽札工場の壁の向こう側。
いかに彼らが厚待遇だったかと、よく理解できました。
■ノルウェーまだ~むさん (えい)
2010-11-17 09:12:13
こんにちは。

アウシュビッツですか。
ぼくは臆していけないだろうな。
歴史の真実から目をそむけてはいけないとは思いながらも…。
でも、確かに
そこに行った人にしか分からない事実というものがあるわけで、
それを踏まえると、
この映画が訴えるところも、
もっと強く実感できる。
まだ~むさんの行動力に脱帽です。

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