ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『太陽の傷』

2006-07-20 23:37:38 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、素通りしてください。
逆にアンチ三池崇史監督の方たちにお読みいただきたいです。
もしかしたら観に行きたくなるかもです。



----これまたスゴい前置きだね。
確か、三池崇史の映画はあまり好きではなかったのでは? 
「うん。新作『46億年の恋』もぼくには合わなかった。
この監督って、映画によっていろんなスタイルを選びとるんだけど、
豪速球でやったときの方が、
ギミックに凝ったときよりも全然オモシロく観られる」

----と言うことは、この映画も直球勝負なわけだ?
「そういうこと。
テーマが、少年犯罪と法の壁。
そして被害者よりも加害者の人権が守られると言う矛盾。
それだけを聞くと、ありふれているように見えるけど、
この映画では、
あえてみんなが触れようとしないところまで問題提起をし、
そのために、日本映画が今まで規制していた
ヤバい映像を次々と繰り出してくる。
そう、これは映画そのものが時代を撃つ銃弾。
見方によっては凶器ともとれなくもない」

----どんなお話ニャの?
「主人公は哀川翔扮する片山。
彼は帰宅途中、浮浪者に暴力を振るう少年たちを目撃。
最初は躊躇したものの、あまりにもひどい彼らの暴行を見かねて止めに入る。
ところがボス格の少年が逆上し、彼をナイフで刺そうとする。
自分の命を守るため彼を殴りつける片山。
しかしその行為を咎められ、
彼は警察に連行されてしまう。
しかも相手の中学生たちは家に帰されたばかりか、
片山は『中学生相手に喧嘩するなんて…』という非難を受けてしまう。
そして悲劇は起こった。
片山のまだ幼い娘が彼によって惨殺されてしまったのだ。
悲しみのあまり精神のバランスを崩した妻は自殺。
やがて3年が経ち、
片山はある事実を知る。
犯人の少年・神木が保護更生のため
わずか1年半で社会復帰していたのだ。
人を殺すという重罪を犯しながら、あまりにも軽い罰。
片山は神木が本当に更生しているのかをその目で見ようと、
事件が起こった町へ舞い戻る」

----うわあ、詳しい説明。
でもこれだとストーリーだけだニャ。
「ごめんごめん。じゃあ、まず映像の方を。
悲劇の事件が一つひとつ起こるたびに退色。
娘が死んだ時には完全なモノトーンとなる。
そして3年後には、また色がつくと言うスタイルだ。
キャメラは手持ちで揺れて、ときには焦点さえ合わない
いわばドキュメンタリー・スタイル。
でも、なんと言っても衝撃は娘の死体を見せること。
これは少なくとも一般の映画ではこれまでタブーとされてきた。
しかも後半では、13歳の少年犯罪が起こる。
近年、14歳の犯罪が相次ぎ、
少年法が改正されたけど、
じゃあ13歳はどうか?という問題だ」

----そうだよね。犯罪がどんどん低年齢化していったら、
どうすればいいのか?
「3年後、神木は表面は更生したように見えながら、
裏ではカリスマ的な存在となっている。
ネットで仕入れた銃を少年たちに流し、
メールでこううそぶく。
『13歳は殺しのライセンスを持っている』。
つまり、法的には咎められないと言うわけだ」

----!!!!!!!!
「かくして、日本映画史上だれもが描くことのなかった
13歳の少年と大人の銃撃戦が始まる。
その相手となるのが
日本映画の裏の牽引者である哀川翔というのも興味深い」

----これは確かに、日本映画の事件だね。
「あと、スゴいのはキャスティングだね。
少年の弁護士に宅間伸。
法を盾に取り被害者を恫喝するその傲慢な姿に
怒りを覚えない人はまずいないと思う。
神木に心酔する少年グループの中で最年少の涼に
富浦智嗣を選んだ三池監督の慧眼にも恐れ入る。
『青いうた のど自慢 青春編』では“純真な心を持つ少年”役。
あの映画の時は、
この子、他の演技できるの?と思ったものだけど、
まさに逆転の発想だ。
あ、ビデオ映画ではおなじみ本宮泰風の出演も
個人的には嬉しかったな」

          (byえいwithフォーン)

※これは事件だ度
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6 コメント

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す、すごい!!!!! (隣の評論家)
2006-07-21 22:35:35
えいさん、こんばんわ。

『機械じかけ』のお返事を拝見し、「もしや、見たの?」と思っておりましたが。

>これは映画そのものが時代を撃つ銃弾

コレはまた、そそられますねー。似たようなテーマを扱っていても『誰がために』のようにシットリとは済まないようですね。そこはヤッパリ三池監督という気もしますです。

渋谷でのレイトショーのみなので、鑑賞予定には入れていなかったのですが。えいさんの記事を拝見して、銃弾を浴びたい衝動に駆られました。どっ、どーしよーかな。ワクワクワク♪♪
■隣の評論家さん (えい)
2006-07-21 23:51:38
こんばんは。



読んでいただいたのですね。

ありがとうございます。

隣の評論家さんだったら、

これ、絶対にご覧になっておかないと……。

もし見逃したら

先々後悔されること間違いないと思います。

レイトショーにはもったいない。

ほんとうに、

息を飲んで見守った映画でした。
こんばんわ (睦月)
2006-09-19 00:31:15
えいさん、こんばんわ。



この作品はホントにすごかったですね。三池監督自身がこの作品は「社会派色のエンターテインメントだ!」とおっしゃっていましたが、特にラストにかけてのシーンにはたしかにそういった印象を持ちました。



神木がカリスマ的な存在になっているというくだりは、『デスノート』のキラ様を思い出しましたよ。
■睦月さん (えい)
2006-09-19 22:50:02
こんばんは。



三池崇史監督作品は苦手なのですが、

奇をてらわず真っ正面から題材と向き合った作品は、

けっこう心に残っていたりします。

これはぼくの中では、

珍しく三池崇史と波長があった作品でした。



キラはぼくも思い出しましたよ。

(少しですが…)。
ついに、観て来ましたー (隣の評論家)
2006-09-23 12:54:39
こんにちわ。

書きたい事があり過ぎて、記事にするのに時間がかかってしまいました。鑑賞のキッカケのは、えいさんの一言だったので。お名前を入れてありますが、もし余り愉快でなければ直すので仰ってくださいね。

期待していた以上に、根が深い作品だったように思います。おススメ、ありがとうございました。

それにしても、レイトショーだなんて勿体ないですね。実際、私の周りにも「観たいけど、レイトじゃちょっと...」と言う子が結構居るんですよー。パンフレットも作られていないとの事でしたし。

この作品を「子供達に見せたくない」と考える大人が居るとしたら。その人達に聞きたいです。自分の子供と向き合ってますか?と。子供を持つ身じゃないのに何々ですがね。
■隣の評論家さん (えい)
2006-09-24 18:52:55
こんばんは。



名前を入れていただくのはとても嬉しいです。



自分がおすすめした作品が

どなたかの心に届き、

そして実際に観て、気にいっていただけ、

そしてその波が広がってゆく……。

それでこそ、まさにぼくがこうして、

いち早く映画を紹介している意味があるというもの。

ありがとうございます。



確かこの映画、大阪ではレイトじゃないんですよね。

不思議な展開です。

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