ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『海を飛ぶ夢』

2005-02-07 22:20:31 | 新作映画
-----おやおや、アカデミー賞外国語映画賞
ノミネート作品というのに渋い顔してるにゃあ。
「う~ん。実話という重みがあるから語りにくいけど...」
-----けど、なに?
「物語の性質上、仕方がないんだけど、
とにかくここには全編にわたって“死”の匂いが立ちこめている。
これは“映画=生の喜び”として味わいたいぼくにとっては苦痛」

------どんなお話なの?
「主人公のラモン・サンペドロは大好きな海で起きた事故により
首から下が不随の身になってしまう。
以後、部屋の窓から意識だけを外の世界に飛ばし、
ベッドで寝たきりの生活を28年間送ったラモンは、
自らの死を選び取ることで、生の自由を獲得しようとするんだ。
そしてその尊厳死を求める彼の闘いはついに法廷へと持ち込まれる。
一方、ラモンの周りには、
彼に死を思いとどまらせようとするロサ、
法廷での弁護を申し出るフリアなど、
さまざまな女性が現れる…」

------ふうむ分かった。そういうさまざまな女性たちの登場により、
死生観の対立軸を紹介していくわけだにゃ。
「そういうことだね。
その中には弟の死の選択に厳しく反対する兄のホセや、
ラモンに影響を受け成長していく甥のハビなどもいる。
そう、みんながみんな彼の意見に賛成というわけではないんだ。
このラモンを取り巻くキャストのアンサンブル演技は
本作の見どころの一つ。
ロサ、フリアなどの主要キャラクターはもちろんだけど、
ぼく個人は、むしろ憎まれ役とも言えるホセを演じた
セルソ・ブガーリョがいちばん印象に残ったね。
弟の介護のため海をあきらめ農夫になったというホセ。
その陽に焼けた顔に深い皺が刻まれ、
彼の過ぎ去った年月と苦渋を際立たせる。
一方、ラモンは逆に色は白く肌はつやつや」

-------えっ、なんで?
「彼は動けないからベッドから離れられないものの
病魔に襲われてるわけではないからね。
介護もしっかりしてるし、栄養面でも問題なさそう。
このあたりが、なんかリアルだったなあ。
そうそう、55歳のラモンを
35歳のハビエル・バルデムが演じてるのも驚き」

------でも監督はもっと若いんだよね。
「うん。32歳のアレハンドロ・アメナーバル。
ぼくは彼の『オープン・ユア・アイズ』『アザーズ』も
好きなんだけど、こんどだけは肌にあわなかった。
もちろん映像の吸引力はあいかわらず強く、スクリーンに目は釘付け。
とはいえ末期の一部始終を見せられるとね.....。
伊丹十三の『大病人』で三國連太郎が逝くシーンを思い出してしまった。
でもこれって逆にいえば、
死を選び取らざるをえない人の姿を通して
観客に“生きていることの意味”を問い、
敬虔な感謝の気持ちの上で“意味ある生を”というメッセージを
放ってるのかも知れないんだけどね」

       (byえいwithフォーン)

※凹んだ度

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