Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

HESという不思議な薬

2017年12月22日 | 循環
今月号のオロジーに、HES関連のRCTが二つ連続で載っていた。

Joosten A, Delaporte A, Ickx B, et al.
Crystalloid versus Colloid for Intraoperative Goal-directed Fluid Therapy Using a Closed-loop System: A Randomized, Double-blinded, Controlled Trial in Major Abdominal Surgery.
Anesthesiology. 2018 Jan;128(1):55-66. PMID: 29068831.

予定腹部手術患者160例、SVとSVVに基づいて補液をするときに、HESかリンゲルかでRCT。HESの方が術後の合併症が少なかった。

Kammerer T, Brettner F, Hilferink S, et al.
No Differences in Renal Function between Balanced 6% Hydroxyethyl Starch (130/0.4) and 5% Albumin for Volume Replacement Therapy in Patients Undergoing Cystectomy: A Randomized Controlled Trial.
Anesthesiology. 2018 Jan;128(1):67-78.PMID: 29064872.

予定の膀胱切除術患者100例、周術期の補液をHESか5%アルブミンかでRCT。30日後の腎機能に差はなかった。

不思議な薬である。
ICUではもう毒と見なされているといっていいのに、OP室では有益と考えられていて、GDTのプロトコルにも多く採用されている。患者背景が違う、重症度が違う、病態が違う、時間が短期間など、説明は可能かもしれないが。じゃあOP室からICUに来る患者さんはどっちだろう。ICUから緊急でOP室にいったらどっちだろう。

一つ言えることは、OP室の研究の方がNも施設数も少ないし、アウトカムがsurrogateだったりはする。
でも、じゃあ大きな研究をやって死亡率をアウトカムにしたら毒でしたということになりそうかというと、なんか違う気配も感じる。

うーん、やっぱり不思議な薬である。
コメント
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