真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「新人OL 部長のいたづら」(1999/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟・国沢実/原案:堀禎一/脚本:三河琇介/撮影:柳田友貴/照明:ICE&T/編集:フィルムクラフト/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/現像:東映科学[株]/監督助手:竹洞哲也・城定秀夫/タイトル:ハセガワタイトル/出演:港雄一・木下英理[新人]・風間今日子・里見瑤子・清水史鯉・井島かおり・桜たまき・坂入正三・牧村耕次/友情出演:薩摩剣八郎)。
 後述する、うららブラの大量に詰まれた段ボール箱が見切れる点を見るに、よもや実在する―してゐた―会社なのか下着メーカー「エクセラン」。人事もスッ飛ばし営業部長の恩田(港)が、入社志望の中島明子(木下英理/相沢知美のアテレコ?)をガンッガン手放しにセクハラ面接。途中で水を差したアベ(牧村)を恩田が叱責しつつ、採用される皮算用の明子が、試着させられたエクセランの新商品試作を持ち帰つたところでタイトル・イン。試作品をエクセランの大判封筒に入れ歩く明子に、エクセランのライバル社「セーラー」の凄腕営業・沖田(坂入)が接触。そんなクライシスも露知らず、恩田は殆ど情婦の部下・河野圭子(ドラッグクイーンばりに濃いメイクの風間今日子)との情事にうつゝを抜かす営業部に、新人の島田しのぶ(主に全く辿り着けないアテレコの里見瑤子)が配属され、恩田は改めて鼻の下を伸ばす。そんな最中、エクセランが発売予定の「うららブラ」に酷似した新商品をセーラーが―しかも五百円安く―先に市場に投入。ショップからはキャンセルが殺到し、エクセランは窮地に立たされる。
 配役残り清水史鯉と井島かおりは、エクセラン営業部のその他女子社員。小林悟前作とで井島と井鳥に名義がブレてゐるのは、本篇クレジット通りなので最早仕方がない。里見瑤子が尻まででオッパイも見せないのに完濡れ場を披露する桜たまきは、呼びつけた恩田をバター犬扱ひする下着店マダム。最近肩が凝つて仕方がないは、と港雄一に肩から始め色んなところを揉ませる、底の抜けきつた絡みの火蓋の切り具合が実に清々しくて素晴らしい。殆ど定位置の友情出演ポジションの薩摩剣八郎は、終盤出し抜けに火を噴く急を通り越した魔展開。マダムが殺された事件の捜査で恩田を訪ねエクセラン営業部を急襲する、南新宿署の足立、ついでに国沢実が連れの馬場。国沢実は背が高いので、馬場の苗字がよく似合ふ。
 各種資料に大御大・小林悟との共同監督とあるのを目にし、何だそりや本当なのかと見てみた国沢実1999年第二作。小林悟基準でも、矢張り1999年第二作。国沢実の号数が気持ち小さいものの、確かに本篇クレジットに於いても監督として小林悟と国沢実の名前が上下に並んでゐる。時期的には、今上御大・小川欽也の新作となると未だに助監督が加藤義一なのとは話が違ひ、1995年に監督デビューを果たした国沢実が翌年までは他の監督の下につくこともあつたとはいへ、1999年時点で助監督を務めてゐたとは考へ難い。そこで、兎も角蓋を開けた中身はといふと、これが、何といつたらいいものやら。二年後に壮絶な戦死を遂げる大御大が体調を崩し戦線離脱、流石にこの時竹洞哲也と城定秀夫に後を託す訳にも行かず急遽国沢実が招聘された。といつたストーリーも想像に難くないともいへ、直截にいふと何処に国沢実のディレクションがあるのかどころか痕跡の欠片すら窺へない、パッと見純然たる完全無欠の大御大仕事・オブ・大御大仕事。あるいは、不完全無欠といふか。
 ビリング頭に港雄一が飛び込んで来る奇襲で幕を開ける物語は、以降もある意味順調に小林悟の何時も通りに迷走。明子を文字通り抱き込んだセーラー社による、うららブラ強奪事件も気がつけば何処吹く風。まさかのマダム殺人事件はその場で恩田の濡れ衣が晴れたにも関らず、何故か圭子は恩田の下を去る。一方、こちらも用が済むやセーラー社を放逐された明子と交錯した消沈気味の恩田が、セクハラが俺の活力源と奮起に至る結末のへべれけぶりは、小林悟のものでなくして果たして何であらう。そもそも、堀禎一の原案とやらも一体如何なる代物であつたのか。左右にスキップしながら画面奥に捌ける恩田が、「イヤッ!」とジャンプするのがラスト・ショット。その瞬間、両手は広げ右足を横に上げた港雄一の体が、漢字の“下”の字を描くチャーミングな映画的奇跡が唯一もの救ひ。


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