真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「レイプ25時/暴姦」(昭和52/製作:日活株式会社/監督:長谷部安春/脚本:白坂依志夫・桂千穂/プロデューサー:伊藤亮爾/撮影:森勝/照明:土田守保/録音:古山恒夫/美術:川崎軍二/編集: 鈴木晄/音楽:月見里太一/助監督:浅田真男/色彩計測:青柳勝義/現像:東洋現像所/製作担当者:山本勉/出演:山科ゆり・岡本麗・桂たまき・石山雄大・高橋明・塚田末人・田畑善彦・小泉郁之助・村上直史・影山英俊・丘奈保美・八城夏子/刺青:河野光揚)。出演者中、村上直史と影山英俊は本篇クレジットのみ。河野光揚の正確な位置は、影山英俊と丘奈保美の間に入る。クレジットがスッ飛ばす、配給に関しては実質“提供:Xces Film”。
 黒バックの中央に、白抜きで小さくタイトル開巻。公開題上の句と下の句の隙間に、全角スラッシュを入れるのは本篇に従ふ。“25”の数字だけ、黄緑に発色する、何故黄緑。
 閉店後のガソリンスタンド、「浅田石油共石サービスステーション」。一人残つた店員(塚田)がペプシでハンバーガーを流し込んでゐると、指輪が扉ガラスをノック。鍵を開けるや勝手に入つて来た革ジャン二人組(茶の高橋明と黒の田畑善彦)は、誰か人を捜してゐる風だつた。店内にツカダ(以後ほゞ全員仮名)のほか誰も見当たらず、引き返した車の色男(村上)にアキラが必ず捕まへる旨約し、タバタはムラカミの御手々を撫で撫でした。ツカダが晩飯を再開すると何処に隠れてゐたのか、赤ジャン(石山)がアシッドな笑顔で現れる。顔を洗ふイシヤマの右腕には、色の入れられてゐない薔薇が彫られてあつた。
 二人で店外に出ると、アキラの車が待ち構へてゐた。「行くぜ!」スタンドのピックアップを、イシヤマが駆り難を逃れる、一旦。配役残り、一応ビリング頭らしくラストまで映画に関らせて貰へる山科ゆりは、一段落の一服したイシヤマが窓から覗く人影に目を留める、バレリーナのルリ子。女を犯し、金品を奪ふ。イシヤマに触発されたツカダは、獲物を探し非現実的な青姦スポットに足を運ぶ、勤務中に。八城夏子と影山英俊は、ツカダが三組目で本格的に襲撃するカップル。三組目て、盛(さか)りすぎだろ。二組目の女が、乳までなら見せるのと、男は清水国雄(a.k.a.清水圭司)のアテレコぽくも聞こえる。岡本麗はロールスロイスを乗り回すスタンド常連客、喫茶店と宝石店を合体させたやうな店(屋号不詳)を営む女社長。小泉郁之助がスタンドの主人、多分浅田。桂たまきと丘奈保美は、再度スタンドに現れたイシヤマがツカダを伴ひ襲撃する、ホステスAとB。要はルリ子以外、誰一人固有名詞の用意されてゐない乾いた世界。寧ろルリ子も、バレリーナなり踊り子で別に事済む気も否めない。
 往時“バイオレンスポルノ”だとか物騒な惹句が平然と使はれてゐた、長谷部安春昭和52年第一作、ロマポ通算第五作。尤も、実際大概バイオレントなのだが。公式にバイオレンスポルノで括られてゐたのは、この人のロマポ全九本中、半分を跨ぐ五本、今作はその第三弾にあたる。
 原典を何処まで遡ればよいのか、燻つてゐた若造が、ある意味メンターとして強姦魔と出会ふ。今となつては、全部どうかしてゐたとでもしか、評しやうのないどうもかうもない物語。展開の核心を截然とバレてのけると、アキラズの三人が執拗にイシヤマを追ひ狙ふところの所以は、トリオの姫ないし王子格であるムラカミが、イシヤマに恐らく岡惚れを拗らせてゐた因縁。即ちこの人等が三人とも薔薇族である気配はムラカミの造形と、車に戻つたタバタの様子で、何となく窺へなくもない。顔色ひとつ変へず、<鈍器で既に活動を停止したイシヤマの歯を叩き折り>、尺八を吹かせる高橋明の姿にはバイオレンスを十万億土通り越した、壮絶なマッドネスが爆裂するけれど。なので、序盤から中盤。順に対ルリ子、単騎で事に及んだ八城夏子と、再びイシヤマに連れられての丘奈保美。三連敗で中折れるツカダが、ツカダも実はなトランスる超大技を予感ないし早とちりしたのは、流石に白坂依志夫と桂千穂の師弟コンビを以てしてなほ、その時点では超え得なかつたと思しき昭和の限界。更に一層どうしやうもないのが、結局八城夏子以外、女々がレイプされてゐるにも関らず何だかんだで喜悦し始め、何時の間にか和姦ぽくなる。一種の因襲じみた、歪み抜いてしかゐないミソジニー。その時点で完膚なきまでに映画の底が抜け、今の時代凡そ鑑賞に堪へないのは、如何せん致し方ない、保守なのに。最終的には営業車からパイプレンチを持ち出した、ツカダが得物の威力でサバイブ。荒涼とした水のないプールのロケーションも火を噴く、バトルロワイアル級の殺し合ひと、石山雄大の今でいふキマりぶり。高橋明が迸らせる重低音のビート以外、殆ど唯一現在でも正方向に光るのが、ルリ子宅から拝借したネックレスを綺麗に忘れてゐたイシヤマが、手籠めにしたルリ子の具合だけはよく覚えてゐる、見事に練り込まれたレス・ザン・ヒューマニティには感心した。感心した、カット尻も乾かぬうちに。ケンタッキーにムッシャムシャ舌鼓を打つ、イシヤマの咀嚼が止まる。すると目の前の窓ガラスに、無表情の高橋明と半笑ひの田畑善彦が顔面をオッパイのやうに押しつけてゐるのは、こゝで生涯が終るのを半ば確信しかねない、絶望的に恐ろしいシークエンス。

 とかいふ次第で、劇中一回目にトッ捕まつたイシヤマが連れ込まれるのが、閉鎖された体の小屋。場内に入る扉のホワイエ側には、「団地妻 ⦅秘⦆売春」(昭和51/監督:白井伸明/脚本:鹿水晶子・村田晴彦/主演:宮井えりな)のポスターが見切れる。


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