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【現代思想とジャーナリスト精神】

転載:溢れる安倍圧勝報道 大メディアが「続投後押し」の異様

【溢れれる安倍圧勝報道 大メディアが「続投後押し」の異様】
2018年8月7日日刊ゲンダイ
①溢れる安倍圧勝報道 大メディアが「続投後押し」
②勝ち馬に乗れと言わんばかりの同調圧力報道
③狭量首相にかしずき戦わない堕落組織
④陰湿な「いじめ」に震え上がる情けなさ


Ⅰ:■溢れれる安倍圧勝報道 大メディアが「続投後押し」

クソ暑い中、目を疑う報道が相次いでいる。例えば5日付の日経新聞。ASEAN地域フォーラムの参加国が集う夕食会で、河野外相が北朝鮮の李容浩外相と接触したのを受け、〈安倍晋三首相が意欲を示す金正恩委員長との会談へ半歩進んだ〉と評価していた。

 日朝外相の接触は1年ぶり。第三国を通じた北との外務省ルートは機能せず、今回の接触は「出たとこ勝負」。何とか握手こそ交わしたものの、両者はホンの短時間、立ち話をしただけ。確認できたのは、北の対話意思がゼロではない程度。〈日朝会談へ半歩〉と見出しを掲げた日経の編集センスを疑うが、この記事に喜ぶのは日経の読者ではない。安倍首相だ。

 早速、安倍は6日、広島市の平和記念式典後の会見で、「日本側の基本的考えを改めて伝えた」と接触の“成果”を強調。「最後は私自身が金正恩委員長と向き合い、何よりも重要な拉致問題を解決し、新しい日朝関係を築いていかなければならない」と豪語した。

 安倍のオツムの中は、来月の自民党総裁選でいっぱい。拉致問題解決に向け世論に期待をもたせるだけで「総裁3選」の追い風となる。よって日朝会談実現の可否よりも「やっている感」さえ伝わればいい。日経の「半歩前進」報道は、安倍のヨコシマな思惑をアシストするようなものだ。

Ⅱ:■勝ち馬に乗れと言わんばかりの同調圧力報道

 6日付1面トップで〈首相、議員票7割固める〉と報じた読売新聞をはじめ、大マスコミがこぞって総裁選の安倍圧勝の票読みをタレ流しているのも、鼻白む。まだ誰も出馬を表明していないのに、しきりと安倍圧勝ムードを報じるのは、議員票と同数が配分される地方票を握る党員たちに「勝ち馬に乗れ」と言わんばかり。安倍圧勝になだれを打つバンドワゴン効果をあおっているのに等しい。元NHKプロデューサーで武蔵大教授の永田浩三氏(メディア社会学)はこう言った。

「大手メディアは圧勝票読み報道で、二階幹事長や菅官房長官の裏の動向を伝えても、肝心の安倍首相のことは、まるで伝えようとしません。アベノミクスの異次元緩和は限界に近づき、北朝鮮情勢を巡る孤立化も深まっています。経済も外交も行き詰まり、その上、体調も良さそうに見えない。いわゆる“安倍チルドレン”によるマイノリティー排除を容認するような発言も相次いでいます。もろもろ終わりが見えている首相が、放っておけば総裁3選を果たし、続投を許すことになってしまう。この国にとって、それでいいのかという視点に立った報道があまりにも少なすぎます」

 多くの世論調査でも「支持」と「不支持」は、5カ月連続の逆転。不支持の理由は「首相の人柄が信用できない」が断トツだ。なのに国会議員の7割が安倍3選を支持する自民党と、その異常さに疑問を挟まず、無批判にタレ流す大マスコミ。世論とかけ離れた安倍礼賛は、まったく一緒だ。まるで日本の大マスコミは安倍3選を望んでいるかのようだ。

Ⅲ:■狭量首相にかしずき戦わない堕落組織

 安保法制定や防衛予算激増による米軍の下請け化。憲法順守義務など屁とも思わない違憲法案の強行採決ラッシュ。常軌を逸した人事権乱用で忖度官僚を輩出した霞が関の恐怖支配。モリカケ疑惑解明は棚上げ。国会答弁ははぐらかしの連続。公文書改ざんの政治責任を誰ひとり取らない……。誰の目にもこの政権の危険性は自明だ。

 安倍は西日本豪雨から1カ月が過ぎても、自民党の各県議団との懇親にかまけ、復旧に向けた補正予算を組もうとしない。臨時国会の召集に応じれば、野党に赤坂自民亭の一件などを追及される。安倍は総裁選前のイメージダウン回避のため、被災者をないがしろにしているのだ。

 こんな愚かな首相の続投をメディアはなぜ、望むのか。5年半に及ぶ政権側の恫喝に屈し、忖度どころか、完全に飼い慣らされたかのようだ。

 思えば、安倍が集団的自衛権行使容認の解釈改憲に邁進していた2014年ごろが分水嶺だった。この頃から安倍側近の萩生田光一衆院議員らが、政権の意に沿わない報道に目を光らせ、放送法4条の「政治的公平」を武器に各局の官邸キャップを呼び出し、難クセをつけていたという。

 14年夏の慰安婦検証で朝日新聞が大揺れの最中、原発事故の吉田昌郎所長の調書内容が、ライバル紙の産経新聞にリークされた。政権中枢しか知り得ない情報が漏れた経緯は今も謎だが、朝日は吉田調書に関する誤報を認めざるを得ず、窮地に立たされた。

 同年秋の総選挙でTBS系「NEWS23」のアベノミクス批判の街頭VTRに安倍が「皆さん(人を)選んでおられる」とブチ切れると、すかさず自民党は在京キー局に中立な選挙報道を求める“圧力文書”を送付。翌15年には「I am not ABE」騒動で古賀茂明氏が「報道ステーション」(テレ朝系)を降板。次に目をつけられたのが、NEWS23キャスターだった岸井成格氏だ。安倍応援団の文化人らに、名指しで糾弾する全面意見広告を掲載された揚げ句、ついには番組降板に追い込まれたのだ。

Ⅳ:■陰湿な「いじめ」に震え上がる情けなさ

 この5年半、嫌というほど見せつけられた狭量首相一派の「逆らうやつは許さない」という陰湿な手法。その執拗さにメディアの現場が疲弊する中、経営トップや編集幹部は安倍と会食を重ねて“ネタ”をもらう浅ましさ。メディア幹部が政権に競ってかしずくようになり、ちょっとでも政権に異を唱えるコメンテーターはすぐに消えてしまう。その結果、今や中立を装った逃げ腰キャスターであふれている。前出の永田浩三氏が言う。

「今のメディアは、いじめの対象になりたくない子供たちと同じ。あまりにも長く異常な状況が続いたことで、必要以上に政権側に萎縮し、他社よりも“とがった”報道を控えるようになってしまった。テレビ朝日の女性社員が、財務次官からのセクハラ被害を自社番組で報道できなかったのが象徴的で、もはや大手メディアは政権と戦わない組織と化しています。だから我が身を守るため、彼女は週刊誌に情報提供するしかなかったのです。NHKも自発的に“加計ありき”のスクープを握り潰しました。社会部記者が文科省の現役職員と会い、内部文書という“ブツ”を入手し、前川喜平前次官の単独インタビューも撮ったのに、今なお放送されていません。いじめを恐れ、政権との対峙を避けるメディアは、権力監視の牙を抜かれたも同然です」

 ここまでメディアが堕落すれば、菅官房長官の定例会見も大本営発表と化す。岸田政調会長が総裁選不出馬表明の前日、「首相と会って話した」と説明しても、菅が「会談した事実はない」と否定すれば、メディアを通じて菅発言が“事実”となる。いくらクロでもシロになりかねない恐怖は、大マスコミが大本営の“直属機関”に成り下がった証拠である。

「大マスコミは軒並み、2年後の東京五輪のスポンサーに名を連ねています。営利目的で数十億円も出資した以上、五輪に水を差す報道は自粛し、政権との一体化はますます進む。安倍政権が狙う国威発揚に進んで協力し、“お上に逆らうな”の同調圧力はさらに強まる恐れがある。今の大新聞・TVの惨憺たるありさまを見ると、政権と共にオリンピックという究極の“パンとサーカス”を巧みに利用し、この国を全体主義に染めかねません」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)

 日本の大マスコミが安倍3選を望む限り、この国は後戻りできない地点をもうすぐ踏み越えることになる。

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