【現代思想とジャーナリスト精神】

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ゾルゲ事件は東条英機が近衛内閣を打倒する謀略だった

2017-12-09 17:12:31 | 政治・文化・社会評論
   ゾルゲ事件は東条英機が近衛内閣を打倒する謀略だった

               櫻井 智志


 『日米開戦へのスパイ』を出版した孫崎亨氏に、週刊誌『アサヒ芸能』は、編集部の高山惠氏がインタビューして掲載した。高山氏は、こう述べる。「ゾルゲ事件が炙り出す日米開戦の裏側。その闇は現在につながります」孫崎氏は日米開戦で隠蔽された歴史を暴き出した。これが事実なら、日本の近代史が変わる衝撃の一冊です。

 私もこの本を購読した。本の正式タイトルは、『日米開戦へのスパイ[東条英機とゾルゲ事件]』である。孫崎氏は『日米開戦とゾルゲ』を書きたかった。書き始めると日露戦争からの政治の流れを執筆する必要を感じた。そうしてこの本は上梓された。
 ゾルゲや尾崎秀実はソ連共産党のスパイとして逮捕され、大日本帝国は死刑に処した。孫崎氏も彼らがスパイであったことは固定していない。しかし、ゾルゲも尾崎も政府が国民を驚愕させるような影響力はなかった。

 「ゾルゲはスパイだ」「ゾルゲに近い尾崎もスパイだ」「尾崎は近衛文麿内閣に親しかった」。この論理を巧妙に流布して東条英機は近衛文麿政権を打倒して自らが政権を握った。要諦は、ゾルゲ事件とは東条英機が近衛文麿を倒す策略であった。孫崎氏は述べる。江藤淳は『閉ざされた言語空間-占領軍の検閲と戦後日本』を書いた。「ゾルゲ事件」には「閉ざされた言語空間」がある。ゾルゲ事件を直接担当した井本臺吉、布施健は戦後は検事総長にまでなり、「ゾルゲ事件に疑問あり」の声は当然出てこない。


 40年前に外務省分析課にいた孫崎氏は、1972年に外務省が招いた当時世界の共産主義問題の専門的権威だったクラウス・メーネストに入省間もない孫崎氏が地方旅行に同行した。「実は、戦後米国は私のことを『真珠湾攻撃の父』と呼んだことがあるんです」衝撃を受けてそこから孫崎氏の追求が始まる。


 ゾルゲのイメージは出版界マスコミ界を通じて広がっていった。孫崎氏の著作は事実に基づいてひとつひとつ検証している。ゾルゲを担当した思想検事が検察中枢を押さえ、戦後の検察は断絶せず連続している。経緯は立ち読みでも書物にあたるのが適切。祥伝社から出版され、本体価格1700円。進歩派であっても、弾圧をおそれず真実を曲げずに言論を持続する。そのような貴重な抵抗の営みの成果である。2017年現在、いまの岩波書店や朝日新聞社は出版するまい。


 戦前に戸坂潤や三木清が投獄され、大政翼賛会に出版界も賛同していった時に、進歩的文化人も進歩的知識人も抵抗できないほど、特高-思想検察によって世間の空気は、日本軍国主義に批判や躊躇する者を根こそぎ抜き取っていった。戦争が始まる時、隠蔽や抑圧、謀略と弾圧が一方で燃えさかり、一方で軍国主義の熱狂に賛同する勢力も批判派から転向し自身の中ですり替えて合理化する元進歩派も、濁流の奔流に呑み込まれ,流されていく。
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