【現代思想とジャーナリスト精神】

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猛暑、臭いだけではない 国民が騙されている東京五輪の暗部

2019-08-19 19:50:44 | 転載
公開日:2019/08/17 17:00 更新日:2019/08/17 17:00日刊ゲンダイ転載


写真:いろいろ握ったのか(C)共同通信社/小池都知事肝いりの「かぶる傘」に広がりなし(C)日刊ゲンダイ
構成
➀ 【開催まで1年を切った東京五輪のテスト大会の惨状にはア然とするほかない】
②【■「求めやすい価格」リオ五輪と大違い】
③【経団連のためのイノベーティブとほど遠い政策】
➃【■国民を食べさせる産業消滅】




Ⅰ 【開催まで1年を切った東京五輪のテスト大会の惨状にはア然とするほかない】

 お台場の海を泳いだ男子トライアスロン選手が「正直、くさいです。トイレみたいな臭いがする」と不満を漏らし、猛暑を考慮してランの距離を半分の5キロに短縮した女子トライアスロンではフランス選手が救急搬送された。馬術選手は「馬も人も危ない暑さ。もう少し早くという意見を出さないといけない」と訴えた。マラソンコースに整備され始めた遮熱性舗装は、かえって暑さ指数(WBGT)を高くするとの研究結果が専門家から出される始末だ。

 招致段階からウソまみれだった東京五輪のデタラメは、もはや覆い隠しようもない。IOC(国際オリンピック委員会)に提出した立候補ファイルで〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖〉とアピールしたが、この時期の日本列島を襲う殺人的猛暑を知らない国民はいない。環境省が連日にわたって運動を控えるよう注意喚起しているのに、メダルを争うのは自殺行為だ。もっとも、五輪をめぐる問題は「臭いお台場」「命にかかわる暑さ」だけではない。
 2013年9月のIOC総会の五輪招致最終プレゼンで、安倍首相は世界が懸念する福島原発事故の汚染水について「アンダーコントロール」と大ボラ。汚染水はいまだダダ漏れだ。行き場のない汚染水を貯蔵するタンクは東電の試算では22年夏に満杯になる見通しで、汚染水からセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を取り除いた処理水を海洋放出する計画には国際社会から非難の声が上がる。元東電の炉心専門家が「福島第1原発は津波の前に壊れた」と告発した衝撃も広がる。招致をめぐるJOC前会長の竹田恒和氏の贈賄疑惑もいまだ解明されないままだ。


「世界一コンパクトな五輪」と売り込みながら予算は雪だるま式に増え、東京都、大会組織委員会、国が負担する総経費は3兆円に膨れ上がっている。招致段階の4倍増である。

Ⅱ【■「求めやすい価格」リオ五輪と大違い】
安倍は1年前記念セレモニーで「オリンピックの感動を共に分かち合うことができることを、心から楽しみにしております」と得意満面だったが、高額で入手困難なチケットを手にできる国民はどれほどいるのか。


 開会式30万円、閉会式22万円。日本勢のメダル獲得が期待される男子100メートル決勝などの陸上競技の午後決勝は13万円だ。優勝に絡めそうな競技は軒並み高く、体操競技決勝7万2000円、柔道決勝やテニス決勝は5万4000円、男女のバドミントン決勝やレスリング決勝が4万5000円(いずれもA席)。「できる限り求めやすい価格に」を大会テーマにした16年開催のリオ五輪とはえらい違いである。富裕層向けに11日間パッケージの635万円チケットも売りに出されるというから、恥も外聞もない金満五輪道を突っ走っている。

 経済評論家の斎藤満氏は言う。
「東京五輪は禍根を残すだけではないでしょうか。招致の前後で話が変わる。大量のボランティアを募って国家的イベント化させているにもかかわらず、チケットは高額でおいそれと手が出ない。銀行員時代に米ニューヨークに駐在したのですが、日米の違いをつくづく感じたのが文化的催しの身近さ。メトロポリタン歌劇場では25ドルほどでオペラ鑑賞ができ、カーネギーホールなども手頃な料金設定をしています。それを可能にしているのが企業や篤志家からの寄付。お金持ちだけが楽しめるような文化は広がっていかないので、ハードルを下げて門戸を開いているのです。日本企業の内部留保は450兆円に迫る勢いなのですから、国民が気軽に五輪観戦できるように支援する動きがあってもよさそうなものです」


 庶民が見られもしない自国開催の東京五輪にどんな意義があるのだろうか。国民はペテン政権に完全に騙されている。

Ⅲ【経団連のためのイノベーティブとほど遠い政策】
 なぜ、こんなにチケットが高いのか。なぜ、こんなに金がかかるのか。それが果たして国益なのか。


 月刊誌「世界」(9月号)で立教大大学院特任教授の金子勝氏(財政学)が重大な指摘をしている。

「新・賃上げ論 その条件は何なのか」と題した寄稿で、日本経済をメタメタにしたアベノミクスの3つの悪循環を分析。▼高付加価値の新製品を創り出せなくなった日本企業の国際競争力低下によって産業衰退が加速▼輸出企業が円安と賃下げで収益を上げようとするため内需弱体化▼異次元緩和で出口のないネズミ講にどっぷり――に集約できるという。そして、五輪をこう位置付けている。

〈「骨太の方針2018」に示される安倍政権の産業政策について、三つの問題点を指摘しておこう。まず『インダストリー4・0』、『ソサエティー5・0』などとスローガン的な言葉だけで飾られているが、具体的な国家戦略を持っていない。政府は、守旧的な重化学工業を中心とする経団連のために、政策的予算的な重点になる産業政策を実行している。それらは、原発再稼働と原発輸出、リニア新幹線、国土強靱化計画や東京オリンピックと建設事業、大阪万博とカジノIRといった旧来型のものに占められている。とてもイノベーティブと呼ぶに値するものではない〉
 安倍官邸は長期政権を支える財界やオトモダチの要望に応えているだけ。この国の成長に不可欠な改革に背を向け、産業戦略を描こうとしないというのである。


Ⅳ【■国民を食べさせる産業消滅】

 金子勝氏に改めて聞いた。

「世界は産業と技術の大転換期を迎え、各国がしのぎを削っている。いまこそ産業衰退を食い止める戦略が必須なのに、安倍政権は現実を無視し、五輪という国家的行事を利用して深刻な事態を覆い隠そうとしています。五輪で建設需要を掘り起こし、大阪万博やカジノ建設で引っ張り、リニア中央新幹線を走らせる。そうした派手なイベントを次々に打ち出すのは目くらましです。前回の東京五輪では東海道新幹線が開通し、6年後の大阪万博も盛り上がった。二番煎じで成長期の残像を呼び起こそうということでしょうが、当時とは産業構造が全く異なります。デジタル通信機器、半導体、液晶ディスプレー、情報通信、バイオ産業。先端産業分野は見る影もなく衰退し、国民を食べさせていく産業がなくなろうとしている。パンとサーカスに踊らされたこの国は、祭りの後に一体どうなるのか」 時事通信の世論調査(7月5~8日実施)では、競技などを会場で見たいという人は「ぜひ」と「できれば」を合わせても37.1%しかいなかった。昨年7月調査の45.6%から8.5ポイントも低下である。


 複数回答による会場観戦を望まない理由は、「テレビなどで見られれば十分」が最多の71.2%。「会場が遠くて行くのが大変」が40.0%、「見たい競技のチケット入手が困難で高額」が23.5%、「夏の暑い時期で熱中症など体調面が不安」が20.6%と続いた。複数回答による開催に向けた不安は「渋滞などで交通機関の利用が不便になる」が40.2%の最多で、「開催費が膨らみ、税金で穴埋めされるのではないか」が39.1%に上った。

 五輪の自国開催の無意味と百害がいよいよ鮮明になってきた。

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