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【現代思想とジャーナリスト精神】

「都議会自民党に風穴あけた小池百合子都知事」は、自民党を補完する高等戦略のトリック・スター

「都議会自民党に風穴あけた小池百合子都知事」は、自民党を補完する高等戦略のトリック・スター

                    櫻井 智志

《問題の所在》

 東京都知事選以来精力的に都知事の仕事に取り組む小池百合子氏に、あれよあれよという間に、国民的な人気が沸騰している。しかしながら、いくつかのことから、私はこう考えた。
 この小池氏の人気のとおり、いくつもの問題を孕む安倍専制政権と自民党の独走・暴走に市民の代弁者として政治活動を展開していくのなら、貴重な人材である。逆のケースはあり得ないだろうか?そしてもしもそうなら、大変な事態となっていく。そのことを検証や考察に近いアプローチをおこなうことが、私の問題意識である。


《第一部:いくつかの具体的問題の検討》


① 国政選挙
東京都知事選挙で東奔西走した小池百合子氏は、当選後も止むことなく都議会に臨み、テレビなどマスコミはそれを拡散し、さらに国民的影響力を強めている。衆院補選東京・福岡は、小池旋風が相次いで二人を当選させた。間違いなく都議選を動かし、衆院選にも影響が見られることだろう。

② 対自民党本部
しかし、自民党員として、都議会自民党とは全面対決しているが、自民党総裁安倍総理など安倍政権と対決しているわけではなく、国政選挙補選は、まさに安倍政権の枠組みの中で「必勝守護神」の役割を果たした。また、都議会自民党や森元総理の五輪組織委員会などとは果敢なチャレンジャーとしての言動に、鬱積する我慢を強いられ続けてきた国民が支持するだけのことはある。

③ 政党の反応
だが、橋下徹氏ら「日本維新の会」の関係者を、小池氏の「希望の塾」の講師に招いたり、特別顧問に招いたりしていることは、防衛相や日本会議事務局や自民党インターネット部局の責任者の仕事を歴任してきた小池百合子氏。民進党の蓮舫代表は小池氏を絶賛し、都議会公明党は小池都知事与党に方向転換した。小池都知事を、前都知事候補の宇都宮健児氏が是々非々のスタンスで一定の好意的評価もおこなっている。日本共産党も知事を是々非々の対応を表明している。だが、今後も小池都知事がはたして今のままの延長を持続するだろうか?

④ 一歩踏みこむと・・・
今後、緊急事態法や憲法改定の政治的局面でどのような政治的スタンスをとるか、注意深く注視したい。ずばり端的に言えば、小池都知事は「諸刃の刃」である。覚えていることがある。石原慎太郎氏が初当選した頃に、石油ディーゼルの公害規制を決断し、自民党から共産党まで都議会は支持した。その後の石原氏の都知事としての軌跡は、あまりに自明である。

⑤ 或る懸念
あざやかな都民心理獲得の政治手法は、幅広く支持層を広げている。注目すべきは、安倍政権が小池都知事にどう具体的に対応していくかを気をつけていないと、「あっ」と気づいた時は後の祭り、というような根本的対応の誤謬をおかすことは、決して現在は許されない政治的局面が現代だ。私は、政治の中枢のイメージを「おきなわ」にリアルに据えることを喚起したい。国会議員にも立候補し、文化の栄えある賞を受賞した沖縄平和運動センターの名実とも指導者である山城博治さんが、勾留され三カ月になろうとしている。おきなわの事態は、まさに治安維持法時代の特高警察による民衆弾圧と全く無縁だと、言いうるだろうか?

⑥ 国政課題
「小池百合子都知事」が、「おきなわ」について、「憲法改定」、「緊急事態条項」について、どのような政治家としての対応を示すか。無関心やノータッチは、消極的関与にほかならない。私はいかなる政党も無限定には支持していない。沖縄や憲法をどう語るか、ではなく「おきなわ」「憲法」にどのような社会的実践を働きかけているか。「沖縄」や「憲法」以外にも、政治的課題はたくさん山積されている。
 私の考え方は、日本国政治の象徴的な剣が峰が「沖縄」「福島原発」「憲法」に集約されているから、自らの実践的課題に取り組みつつ、どのような考えをどのような言動をするかが問われているということだ。
 国際社会は、二度の世界大戦を経た。
a:民族の自決権としての反・植民地主義
b:人類絶滅の核兵器廃絶と原子力など科学技術の管理・制御
c:果てしない帝国主義的膨張国家とその犠牲者を防ぐための、民族主権・国家の主権の尊重
d:軍事兵器で解決するような愚弄な報復の際限もない応酬を防止するシステムの樹立。
それらa〜dを達成するために、戦後国際社会は努力してきた。

⑦ 今後の方向性を凝視 
戦後史の原点とそれに基づく70年有余の努力。それを一気に崩壊させるような専制政治の安倍政権に小池百合子氏が加担・推進するようであれば、毅然として「否!」と声をあげるべきだ。


《第二部:「日刊ゲンダイ」による二つの記事/新たなことがらの報道に基づく吟味・分析》

「日刊ゲンダイ」は以下の様な報道をおこなっている。  
A:2017年1月04日 小池新党“40人擁立”は本当か 狙いは都議会自民の分裂加速
B:2017年1月20日 「応援」報道に激怒…小池都知事ついに安倍自民とも決裂



A:-------------------------
「日刊ゲンダイ」2017年1月4日

小池新党“40人擁立”は本当か 狙いは都議会自民の分裂加速
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/196896/1

「小池知事、都議選に30人超」「自民へ“刺客” 新党準備」――と、産経新聞が元日の1面トップで報じたことで、都議会自民党に衝撃が走っている。朝日新聞も1月3日に、「小池氏 40人規模擁立へ」と大々的に伝えている。朝日によると、全42選挙区に近い40人規模の擁立を考えているという。

 しかし、本当に「小池新党」は40人も擁立できるのか、疑問の声が上がっている。

「40人の擁立はどう考えても現実的ではない。ヒトとカネの工面が難しいからです。新党を結成するには最低5億円は必要とされています。何より40人の擁立は容易じゃない。もちろん、案山子でもOKなら明日にでも集められるでしょうが、当選する可能性のある候補者を40人も探すのは簡単じゃない。都議選は投票率が低い上、地元密着型なので、地盤がないと当選は難しい。日本新党が93年に都議選に挑んだ時も、20人しか当選させられなかった。本当に40人も擁立できるのか疑問です」(都庁事情通)


 朝日、産経の2つの記事は、小池知事周辺が意図的にリークした可能性がある。

 小池サイドの狙いは、都議会自民党を分裂させることだという。

「小池さんにとって最良のシナリオは、都議会自民党が分裂し、党を離れた都議が“小池新党”から出馬することです。地盤のある現職都議なら当選させやすく、カネもかからない。同時に、都議会ドンの内田茂都議が牛耳る自民党を少数に追い込める。恐らく小池サイドは、“自民へ刺客”“40人擁立”と大手メディアが報じれば、選挙に弱い自民党都議が不安に駆られ、“自民党にいたら落選する”“刺客を立てられる前に小池新党に加わろう”と動きだすと計算したはずです。すでに昨年末、自民党都議3人が自民党会派を離脱している。分裂の動きが加速する可能性があります」(都政関係者)

 7月の都議選まで、まだ半年以上。都民と無関係に〈小池知事VS自民〉の戦いが勃発している。
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B:---------------------------
「日刊ゲンダイ」2017年1月20日


「応援」報道に激怒…小池都知事ついに安倍自民とも決裂
 http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/197806


写真:10日の会談が火種(C)日刊ゲンダイ

 小池都知事が安倍首相との年始会談をめぐる記事に「ウソだ」「捏造だ」と噛み付き、大騒ぎしている。安倍首相に「衆院選では自民党候補を応援する」と秋波を送ったと報じられたことに猛反発。フェイスブックに18日、〈おいおい。この記事は小説ですか? 言ってもいないことを、都合よく脚色しているだけだ〉と書き込み、ムキになって否定したのだ。夏の都議選の前哨戦とされる千代田区長選まで残り2週間。自民党都連だけでなく、ついに安倍自民への宣戦布告なのか。

■官邸会談の中身がバレた

 小池知事が神経をとがらせているのは、今月10日に官邸に足を運んだ際のやりとりだ。安倍首相が「都議選への対応をハッキリさせてほしい」と切り出すと、小池知事は直接答えず、「衆院選では自民党候補を応援する」と応じたという。開口一番、小池知事の方から「いつ解散するんですか」と尋ね、苦笑した安倍首相が「当面そのつもりはないです」とかわしたというエピソードも流れている。「自民党候補を応援」という部分に小池知事が反応し、大慌てで否定に動いた格好だ。


「どうやら、小池知事に一泡吹かせようともくろむ自民党の都連関係者から、会談の内容が漏れ伝わったようです。都連を敵に回して人気を維持する小池知事が、裏では安倍首相にすり寄り、党本部と握っている事実があからさまになれば、イメージダウンになると思ったのでしょう。実際、表と裏の顔が違うという印象が広まったら致命傷になりかねない。それで普段はクールな小池知事が感情的になっているんでしょう。相当な危機感を抱いているのは間違いなさそうです」(都政担当記者)


 小池知事の目下の最大のテーマは、夏の都議選で自らを支持する議員で過半数を獲得すること。そのために、都議会で公明党を引き入れ、自民党都議団もじわじわと切り崩している。前哨戦の千代田区長選では都連と対立する現職を支援。都議選では独自候補40人の擁立を目指し、小池塾の塾生をふるいにかけている最中だ。

■“対決ポーズ”は崩せない


 つまり、実際は党本部と都連を区別して“両てんびん”にかけていても、少なくとも「夏」までは世論向けにも自民との“対決ポーズ”を崩すわけにはいかないのだ。自民党本部と裏で手を握っているという疑惑を払拭するためにも、小池知事は安倍自民との対決姿勢を強めていく可能性が高い。それでなくても、いざ都議選が始まったら、「都議会自民党」と「自民党本部」は違う、という都合良い使い分けはできなくなる。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。

「地方選挙ではあるものの、首都決戦になる都議選に自民党はフル稼働で挑みます。党三役や大臣経験者をはじめ、現職総理が応援に入ることもある。小池知事は都連と党本部とを別物のように扱っていますが、選挙戦になればガチンコ勝負は避けられません」

 夏の都議選までは自民党と対決姿勢、都議選が終わったら手打ちという構想は通じなくなり始めている。
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《第三部:小生の仮説としての見解/小池百合子都知事は、自民党を補完する高等戦略のトリック・スターではないか》

 上記の文章を基に感じたことを簡潔に記す。

 小池百合子氏は、都知事のままで政治家生活を終えるつもりはないものと思われる。以前すでに自民党総裁選に出馬したこともあり、将来的には内閣総理大臣の座を狙っている。そのためには、都知事在任中に当選以来の追い風をもとに、政治課題に熱意をこめて取り組み、しかもその様子を最大限マスコミによる露出を利用し、空気としてブームとして、政策や仕上げた業績それ自体よりも「小池都知事が動いた」ということだけで、うっとりする支持者を増やすねらいをもっている。
 服装やパフォーマンスで、大衆の支持を今でも増大させている。
しかし、自民党員である「事実」はオブラージュし、自民党都連と対決している。さらに自民党本部にも「対決ポーズ」は崩さず、水面下では安倍総裁・総理の意向に反するつもりはない。水面下で安倍首相と提携している。
 だが、自民党は下落傾向を公明党・創価学会の組織的応援でこれまで堅持し、第二次安倍政権からは「ナチスのやりかたでやればいい」(麻生太郎副総理)と公言するほど、第一次政権とはより強硬的な政治路線で突っ走ってきた。政権支持率は公式発表では高いけれど、国民各階層のなかで富裕層以外の国民は生活が苦しく老後も含め戦争直後を除けば、最低状態の生活不安を抱えている。
 今後、安倍政権がどこまで持続するかは、確定的とは言えない。自民党との対決ポーズを取りつつ、都民国民の支持を集めることで、自民党総裁・総理に向けて突き進むことと推測する。
 以上は予測であり仮説に過ぎない。けれど時間の問題だ。都議選が終わり、総選挙が終えたころに、小池百合子氏の高等戦略は、誰の眼にもあきらかになっていることだろう。

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