「 i 」 西加奈子 ポプラ社 2016.11.29
あれっ、ポプラ社の本なんだ!
「この世界にアイは存在しません。」
入学式の翌日、数学教師は言った。
ひとりだけ、え、と声を出したのは、
ワイルド曽田アイ。
虚数単位についてだったが、
その言葉は、アイに衝撃を与え、
彼女の胸に居座り続けることになる。
アメリカ人の父と、日本人の母を持つ
シリア人の養女・アイは、
「グッドガール」であることに努めた。
しかし……
自分がここにいるのは、生物学上の父と、
生物学上の母がいてこそだが、
そのふたりの顔も知らないのであれば、
自分は土も根もない一本の草に過ぎないのでは
ないだろうか。
生まれた環境によって
信仰する神が違うのであれば、
「神」とはどういう存在なのだろうか。
災害や戦争で被害を受ける人もいれば、
まったく無関係に生きる人もいる。
恵まれている自分への後ろめたさもある。
ラストが良い。
「私はここよ。」