超級龍熱

香港功夫映画と共に

李小龍生誕祭SP① 本邦初!!幻の「ドラゴン危機一発」初期英語版、完全レビュー登場!!

2017-11-27 10:44:49 | 闘神伝説~李小龍

さあ、お待たせしました!「超級龍熱」が誇るブルース・リーこと李小龍の専門セクション「闘神伝説~李小龍」記念すべき第100回にして「李小龍生誕祭SP」その第1弾です!!
李小龍がアメリカから香港に帰国し、嘉禾影業で凱旋第1作として主演した「ドラゴン危機一発」(71)。
「ドラ危機」には他のリーさん作品と同様に英語版や広東語版、または北京語版など数多くのバージョンが存在しますが、以前からハードな研究者たちから注目を浴びている幻のバージョンが存在します。
それが「ドラゴン危機一発」の初期英語版です。
「ドラゴン危機一発」初期英語版とは何か?それは現在世界中の英語圏で広く知られる「ドラ危機」英語版が制作される以前に、嘉禾影業がごく初期に海外配給向けに制作した英語吹き替えバージョンを意味しています。
この初期英語版は一説にはフィリピン、レバノン、ヨルダン、南アフリカ、ギリシャなどの各国で公開されたものの、当時健在だったリーさんにはその存在は一切知らせないままの公開だったと言われています。その後、「ドラ危機」がアジアで大ヒットを達成すると、嘉禾影業は欧米マーケット向けにリーさん演じる主人公鄭潮安役の声優をはじめ、主要なキャストに新たに別の声優を起用した英語版を制作します。それが私たち日本人も含めた世界中のファンが現在までVHSやLD、そしてDVDやブルーレイなど様々なソフトで親しんで来た新英語版でした。
さて、そこで今回本邦初として検証を試みる「ドラ危機」初期英語版です。この初期英語版に関しては、以前から世界中のリーさん信者が発掘を熱望している伝説の“ノコギリ頭部直撃”映像が収録されているんじゃないか?リーさん鄭潮安が決戦前にコールガールをチョイスしその部屋で半ヌードになるシーンが収録されているんじゃないか?さらにはちょっとスケール小さいながら(^。^)、許剣こと田俊が自分の喧嘩自慢を語っているシーンが収録されているんじゃないか?などなど様々な未公開映像収録の噂が飛び交って来たバージョンでもありました。
そんな中、海外レーベルのShout Factoryが発売したリーさんの主要作品ブルーレイ&DVD11枚収録の「Bruce Lee The LEGACY Collection」なるボックスにその初期英語版の音声を新英語版の映像に被せる形で収録され、多くのファンを喜ばせるという出来事がありました。しかし、確かに初期英語版の貴重な英語音声を聴く事が出来ても、肝心の初期英語版の“映像自体”の詳細は依然として不明のままでした。
そう、もし初期英語版に上記の未公開映像が収録されていたとしても、それら未公開映像が収録されていない通常の英語版の映像に音声を被せただけの状態では何の答えにもなっていないわけです。
さあ、前置きが長くなりました!今回私こと龍熱はその「ドラゴン危機一発」初期英語版のプリント、つまり“映像その物”の入手に成功しました!!
そうです、この世界でも貴重な「ドラゴン危機一発」初期英語版の35㎜プリントを所有するトビー・ラッセル監督から私に送られて来た1枚のDVD。今からそのDVDを再生し、これまで長年に渡って謎に包まれて来た「ドラゴン危機一発」初期英語版のベールを脱がす時がいよいよやって来た!To be a man,you gotta beat the Big Boss !!

今回の「ドラゴン危機一発」初期英語版レビューでは、既に「The LEGACY Collection」に英語音声が収録されている点も踏まえて、敢えて音声ではなく映像にフォーカスを絞ったレビューでいきたいと思います。
まず画質ですが、さすがにプリント自体は各所で雨降りが入るなど痛んでいますが、色彩は良好です。ちなみに画面サイズはワイドスクリーン仕様です。
ただオープニングには嘉禾影業のロゴマークなどは一切入らず、いきなり英文のオープニング・クレジットが映し出され「Present Bruce Lee in....」の文字が出た後に・・・何と作品題名が出ません!
「The Big Boss」どころか「Fist of Fury」も出ないまま他のキャストクレジットが英語で映し出されていきます(唖然)。
映像にフォーカスを絞ると言いながら、この初期英語版でリーさん演じる鄭潮安の声をアテている声優さんに触れると、確かに私たちが聞き慣れた新英語版の声優さんのソフトな声に比べるとちょっとダミ声ですね(^。^)。
ただ一部でこの初期版の声優さんが「ドラゴン怒りの鉄拳」(72)英語版で陳眞の声をアテた声優さんでは?との意見がありましたが私は別人の声優さんだと思います。
また他の初期版の声優さんたちは私には邵氏兄弟公司作品などの英語版クンフー映画で聞き慣れた声優である事がすぐに判りました。
さて、この「ドラ危機」初期版のプリントの特徴に幾つものシーンで映像が飛んで(あるいは欠落)している事があります。
まず最初にそれがハッキリと判るのが工場で氷に麻薬を隠している事を知ってしまった植耀昌(実際は助導演)たちが惨殺されるシーンで、悪漢の斧が植耀昌の頭部に突き刺さる瞬間のテイクがカットされています。それだけではありません。
肝心のリーさん鄭潮安が母のペンダントを壊されて遂に怒りを爆発させるシーンも最初のサイドキックを叩き込んだ直後からバッサリと欠落。これは当時の検閲がカットしたのか、フィルム自体が欠損しているのか、は判りませんが、初期版のプリントはこの鄭潮安初暴れのシーン直前からフィルムが激しく傷んでいるのが画面からもハッキリと判りました。
さらには中盤の夜の工場での鄭潮安と沙小春(劉永)一味の乱闘シーン。ここで注目の“ノコギリ頭部直撃”のシーンになりますが、残念ながらその瞬間は他のバージョンと同じく画面には映っていません(T_T)。この“ノコギリ頭部直撃”映像の真実に関しては今回の「~生誕祭SP」第2弾のトビー・ラッセル監督の独占インタビューを是非読んで頂きたいのですが、それに加えてこの“ノコギリ頭部直撃”シーンの直後にリーさんの電撃の廻し蹴りを浴びた衝撃で工場の壁を突き破る悪漢が李家班の陳龍ですね。
もしかしたら生前のリーさんに可愛がられていた陳龍なら、この“ノコギリ頭部直撃”シーンが本当に撮影されたのかどうか、その現場にいた目撃者として何らかの証言が得られるかも知れません。
この工場での鄭潮安vs沙小春戦でも、鄭潮安がフィニッシュの鉄拳を叩き込む前に沙小春に膝蹴りなどを入れるシーンがカットされています。続いて鄭潮安が家に戻ると吳籌昆(李昆)たちが惨殺されている現場に驚愕するシーンでは、鄭潮安が少年の無惨な亡骸を発見して「嗚呼!」と蒼白になるシーンがカットされています。
この後に鄭潮安が川辺で復讐を誓うシーンもまるごとカットされていますが、この川辺の復讐の誓いのシーン、英語字幕では鄭潮安が「俺にもしもの事があったら、70歳になるオフクロはどうなる?」との字幕が入ります。
ここは鄭潮安が決して喧嘩はしないと固く誓った母親が実は70歳という高齢だった事に改めて驚くと同時に、鄭潮安という男の母親に対する深い愛情を感じさせる実に印象的な台詞だと痛感しました。
さて、いよいよクライマックスのマイ邸での沙密工場長(韓英傑)との一騎打ちですが、決闘が火蓋を切り鄭潮安が連続廻し蹴りを放つシーンや、ラストの鄭潮安が沙密の腹部に指を突っ込むシーンがカットされていました。
ラストの沙密工場長の腹部に指を突っ込む残虐シーンがカットされるのはある意味判るとしても、他のリーさんの見事な連続蹴りのシーンが何故ここまで何度もカットされているのか理由は不明です。
ちなみに新英語版の「ドラゴン危機一発」の上映時間が約1時間40分なのに対して、この初期英語版は15分も短い約1時間24分でした。

「ドラゴン危機一発」初期英語版の本邦初のレビューを終えて、そこには期待された“ノコギリ頭部直撃”シーンも、鄭潮安とコールガールのシーンも、田俊が喧嘩自慢話を語るシーンも収録されていませんでした。個人的には大変残念です。
コールガールのシーンや田俊の武勇伝のシーンは断片的ながら海外の予告編で映像を観れるのでまだ良いとしても、やはり今も多くのリーさん信者が発掘を望む“ノコギリ頭部直撃”映像だけはほんの数秒のテイクでもいいから観てみたかったですね。
ただそれでも私が今回この「ドラ危機」初期英語版のレビューに踏み切った事には幾つかの理由があります。
まず一つがこの「ドラ危機」初期英語版がリーさんこと李小龍が遺した5本の主演クンフー映画の中で、唯一複数存在する英語版の1本であり、それも出回っている新英語版より以前に制作され、長年に渡ってほぼ封印状態だった貴重なバージョンである事。
2つ目がこの「ドラ危機」初期英語版が未だに世界でも未ソフト化のままの作品である事。(1度は海外レーベルVideo AsiaがDVDリリースを試みましたが、無念にも頓挫しています)
そして3つ目がこの「ドラゴン危機一発」が1970年初頭に公開された王羽監督&主演「吼えろ、ドラゴン!起て、ジャガー!」(70)、張曾澤監督、楊群主演「路客與刀客」(70)、そして張徹監督、姜大衛主演「ヴェンジャンス」(70)ら3本と共に、香港クンフー映画に新たなるアクション革命を起こした記念碑的作品である事があります。
そう、今回この貴重な初期英語版検証の機会に香港、いやアジアを震撼させた“猛龍革命”の原点的作品である本作「唐山大兄」に改めてもう1度スポットを当てたい。
それが今回の「李小龍生誕祭」において、私こと龍熱の心の奥底にある思いでした。

我が日本でも近年「ドラゴン怒りの鉄拳」(72)、「最後のブルース・リー/ドラゴンへの道」(72)、そして私こと龍熱も映像提供させて頂いた「ブルース・リー死亡遊戯」(78)がブルーレイのエクストリーム・エディションとして次々と発売される中、依然として「ドラゴン危機一発」の日本劇場公開版が未発売のままなのが何とも残念です。
そして近い将来、もし「ドラゴン危機一発」アルティメット・エディションがめでたく発売となった際は、是非この「ドラゴン危機一発」初期英語版を、今度は音声だけでなく映像そのものを映像特典として収録して欲しいと強く願う次第です。
最後になりましたが、今回この「ドラゴン危機一発」初期英語版検証はトビー・ラッセル監督の映像提供無くしては実現しませんでした。
ここに厚く御礼申し上げたいと思います。
また同じく今回の特別企画ではT.Mさん、今井商店の今井毅店長にも様々な情報を提供して頂きました。皆さん、本当にありがとうございました。

We would like big thank to Toby Russell who kindly provided Big Boss rare virsion footage.Thank you very much Toby san !!

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