パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

年金テロ

2008-11-20 22:33:56 | Weblog
 麻生首相、案の定の失言続きで、自民党いよいよピンチだが、「医者の多くは普通の人と感覚がちがう」はその通りだろう。

 地方都市の公立病院の医者の給料が年1200万円では安すぎるということで、みんな辞めてしまうので、2000万円にしたらなんとか人員を確保できたが、市長が交代し、懐が厳しいので昔の給料に戻すと言ったら、またいなくなってしまった件について、東京都立墨東病院の新規募集の給料が月に55万円であることを引き合いに出して、月100万で安過ぎるとごねるのはどうかなと思ッたわけだが,その後、世界各国の医者の稼ぎのランクをネットで調べたところ、アメリカの医者の年間所得が平均で約2000万円で世界で一番高かった。

 もちろん、あくまでも「平均」なので、多分、金持ち相手の医者がべラボーに稼いでいるのだろう。

 それはともかく、日本の平均が1200万円で、世界的にはまーまーのランクだった。

 しかし、1200万円と聞いて、あれ?どこかで聞いた数字だが……と思って思い出したのが、例の「安過ぎる」ということで辞めてしまった医者の給料だ。あれと同じだ。

 じゃあ、なにかい。お医者さんたちは、「平均」では不満なのか?

 業界の中で平均額のギャラをもらえるのであれば、普通だったらあんまり文句は言わないものだが……ここら辺が、医者がちょっと普通の人の感覚とちがう、一つの証拠だと思うのだ。

 要するに、プライドが猛烈に高いのだ。それで、俺のギャラは、平均より高くなければならないと信じ込んでいる。

 だとしたら、今、1200万が2000万に上がったとすると、医者の平均所得は2000万円に近づくわけだが、そうなると今度は、2000万円じゃあ、「平均」だ、俺は、平均で遇せられるような人物じゃない!ということになってしまう。

 まあ、これは理屈だけど、それくらいプライドが高い……のじゃないかなと推測するのだが。

 また、そのプライドが「象牙の塔」と固く固く結びついている上、「生殺与奪」の権利さえ握っているとなると、ああ、実に恐ろしい。

 何か手段があるとしたら、必要以上のプライドを持つことが少ない、女性の医者を増やすことだろうなあ。

 元厚生事務次官が殺されたが、「世間の空気」はどうなっているのだろう?

 まさか、こんなやつが本当に現れるとは思ってもみなかったが、起きてみると、不思議じゃないなあ……といったところだろうか。

 実は、上記の感想は私のものなのだが、それくらい不満は強い。

 ラジオを聞いていたら、「殺された○○さんは国民のためを思って基礎年金制度を作った人なのに」と、どこかの評論家が言っていたが、「基礎年金」なら、無条件でみんなもらえるかというとそうではなくて、40年間、毎月一万7000円近く積み立てて、70歳近くになってから月六万円もらえる制度のどこが「基礎年金」なのか?

 しかも、その六万円は、40年間欠かさず収めたらの話で、40年に達しない人はそれだけさっ引かれ、さらに25年以下しか収めなかった人はゼロだという。

 これのどこが「基礎年金」なのか?

 どうにもわからないが、肝心の、作ったやつが、一切、どこにも顔を出さず、説明もしない。

 これが一番いけないのではないか。

 総理大臣以下、各大臣はすべて事務次官の発案になる政策を実行するために国会対策を行うのがその役目である、ということがようやく国民皆にわかってきた。

 「責任者、出てこい!」という心境だ。

 数年前だったか、年金問題ではなくて、「ゆとり教育」問題で、一度、文部省に質問のメールを送ったことがある。

 「ゆとり教育それ自体の是非とは別に、知りたいことがあるのでメールしました。それは、あなた方、文部省のお役人さんたちは、日本の教育制度の一切について、立案し、命令することができるようですが、どのような法的根拠でそれを行っているのですか?」

 もちろん、返事は来なかったけれど、年金制度も同じだ。

 奥さんを殺された事務次官と、当時の部下で、今回奥さんと一緒に殺されてしまった後に事務次官になった官僚が中心になって制度を作り、それを自民党政府に命じて国会の承認を得た。

 これが、実際のところなんだろう。

 だったら、その事務次官は積極的に国民の前で説明すべきなんだが、それは一切せず、全部自民党、というか、時の行政府、つまり内閣にまかせる。

 なんて卑怯なんだろう。

 戦前は、官僚は「天皇の官僚」だった。天皇に対し、責任を追うのだ。

 これはこれなりにはっきりしているが、戦後、形が変わった。

 官僚は、国民のサーバントだというのだ。

 だったら、官僚は国民の前で説明を行わなければならないはずだ。

 でも、そうすると、国会議員と国会議員によって選ばれた総理大臣と各大臣が行政を行うという建前が崩れちゃうのでしないのだろう。

 もちろん、私はそもそも官僚が実質的に「政治」を司ることには大反対(そんなのは民主主義国家ではない)だが、今現在、高級官僚が全部取り仕切っていることは事実なので、とりあえず、彼らが国民の前に顔をだし、喋らなければ何も始まらないのではないだろうか。

 喋ることができないなら、何もすべきではない。政治家に言われたことだけをするべきだ。

 しかし、今回の悲惨な事件は、その悲惨さによって、今書いたような、根本問題に触れることをむしろ不可能にさせる可能性がある。

 あ~~あである。