パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

えらいものを見てしまった

2006-08-29 21:21:15 | Weblog
 えらいものを見てしまった。飛び下り自殺だ。
 場所は新宿。小暮元BSK会長の会社に用事があって行ったのだが、ドアを叩いても返事がない。どこかに食事にでも出ているのだろうと思って、近くでぶらぶらしているうち、喉が渇いたので、近所の公園の水道で水でも飲もうと思って、その公園に入ったが、水道がないので、それもあきらめ、どうしようかな~と思いながら、ふと横を見ると、公園脇の道路に年輩の男性が倒れているのが見えた。酔っ払いか? でも午後6時で、ちょっと時間が早過ぎる。それとも、老人なので、なにか発作でも起こしたのだろうか、いずれにせよ、ともかく救急車を呼んだ方がいいのではないかと思っていたところ、ビジネスホテルの支配人のような風情の中年男性がとことこと走ってきて、今、電話をしたと言った。この男性が第一発見者ということらしい。
 男性は、依然、びくともしない。なんか様子がおかしいと思って、見る位置を変えたところ、頭から鮮血が流れている。わからないでもないのだけれど、第一発見者が妙に躁状態になっていたので、そんなに深刻なことが起きているとは思わなかったのだが、そう、「飛び下り自殺だ!」
 
 やがてサイレンとともにパトカーと救急車が到着。

 実は、以前も一度、飛び下り自殺の現場に出くわしたことがあるのだが、その時は、トラックの運転席の屋根にぶつかったので、それがクッションとなって即死状態ではなく、救急隊員が声をかけて反応をみていた。もちろん、その人も死んだのだけれど、今回は、そんなこともせず、到着するや否や、白墨で身体の回りに、テレビドラマのように、白線をひいた。頭が割れて、大量の血が流れているのだから、死んじゃっているのは明らかということなのだろう。それでも、手の脈は一応とっていたが。
 その後、警察官が、どなたか目撃された人はいますかと訊ねた。この老人(がっしりした、生きていたとしたら、元気そうな男性で、年齢は60台後半といったところか)が道路に激突した瞬間を見た人はいますか、という意味なら、誰も見てはいない。ただ、公園で涼んでいた中年男性二人が、「物凄い音を聞いた」と言っていた。飛び下り自殺で、地面に衝突する時、ものすごく大きな音がするとは聞いたことがあるが、今回もそうだったのだ。しかし、私はその音は聞いていない。そんなに離れているとは思えないので、ちょっと不思議だったが、でも、二人で声を合わせて、「自動車がぶつかったかなにかしたのだろうと思った」と言っていた。
 
 そのうち、死体の前のマンションの上のほうから声があった。遺品らしきものが階段の踊り場にあるというのだ。9階の踊り場だという。しかし、そのマンションの住民(おばさん)は、見たことのない人だ、と言っていたので、自殺者は飛び下りる場所を探していて、たまたまそこのマンションの玄関が開いていたので、入り込んだのだろう。
 しかし、そうやって場所を見つけても、すぐに飛び下りたというのではないだろう。やはり、10分や20分は逡巡はするのではないだろうか。そして、そのうち、考えるのが面倒臭くなって、えいっと飛び下りたのだろうか。きっとそうだろうな~。私も時々考えるのが面倒臭くなるが、そういう時は、結果は決してよろしくない。クワバラクワバラ。

 第一発見者は相変わらず躁状態で、「連絡された方は?」と警察官が言うと、マンションのおばちゃんと立ち話をしていた第一発見者は、「ハイ、ハイッ、私で~す」と子供のように手を振りながら、警察官の方に走り寄った。わかるよ、「躁状態」になっちゃうのは。そうでもしないと、一人の人間の命が断たれた現場には対処できない。

 その後、小暮元会長と近所のデニーズに入った。デニーズは、すぐ近くで人が一人、命を断ったことなどどこ吹く風の、夏休みの成果を誇る、真っ黒けの男の子、女の子で一杯だった。当たり前だけど……死んじゃあ、おしまいだ。