テムテムな日常

頑張れみんな!頑張れ自分!

想い出のままで・・・

2006-11-26 | 音楽

いつもと変わらないある日のこと。
私の働くフォトスタジオにあらわれたのは、まぎれもないあの人だった。

そして、必然というか、当然のように、彼のそばには私の知らない人。ふたりはもうすぐ結婚するのだ。そう、彼は私ではなく、彼女をえらんだのだから。

彼が私に気づく・・・少し驚いたような顔をして、でもすぐに目をそらす。偶然のいたずらに苦笑い。でもこの偶然は、ちょっと残酷すぎる。私はこのフォトスタジオのスタッフで、彼はお客さん。もう昔のような間柄ではないのだ。私たちの気まずい雰囲気を、彼女に気づかれてはならない。華やかなウェディングドレスの相談をしながら、テーブルの下で指を絡ませあう二人・・・幸せそうな彼女を悲しませるわけにはいかない。

もう、私と彼とは終わってしまった関係なのだから。

彼とのたくさんの想い出・・・たくさんの写真、贈られたペンダント・・・いまでも大切な、私の宝物。見るたびに想い出はきれいなままよみがえる。いつまでも、想い出の世界にいたいけど、もういい加減、彼のことは忘れなければならない。だって彼は、私とは違う別の人と、新しい人生を歩もうとしているのだから。

彼女が選んだ純白のウェディングドレスは、これからの人生を象徴しているかのよう。きっと彼女はいま、幸せの絶頂にいるのだろう。そしてそんな幸せそうな彼女たちをファインダー越しに見つめる私・・・。彼の目には、もう私は映っていない。

一生に一度のウェディング・フォト。彼と並ぶ彼女が眩しい。もしかしたら彼のそばにいたのは、私だったのかもしれない。寄り添い微笑みあう二人・・・。私たちが恋人同士だった頃に、彼から贈られたペンダントを今でも外せない私の気持ちに、彼は気づいているのだろうか。気づいたって、もう状況は変わらない。せめて心の動揺を、彼女たちに悟られないようにしなければ。ファインダーが涙でにじむ。

数日後、出来上がったウェディング・フォトを、彼女はとても気に入ってくれたようだ。何も知らない彼女は、私にウェディングの招待状まで用意してくれた。私に行けるはずはないのに。

店を出るとき、彼が振り返った。でも、私は声を掛けなかった。・・・彼も、無言で出て行った。もう彼とは会うこともないだろう。そして彼が、私のことを思い出すこともきっとないだろう。

本当にもう終わってしまったんだ・・・幸せな時間を切り取った想い出の写真たちを眺めながら、私はひとり、いつまでもとまらない涙を流し続けた。

 

今日はちょっと趣向を変えて、「お気に入りPVを小説風に紹介」してみました。PVは、「コン・ジャオ・ナムター(涙のひと)by NJ」、視聴はコチラの上から15番目で。歌詞の訳は過去記事のココ。何度見ても泣いてしまうほどせつないPVです。たかだか4分ちょいの時間のなかに、これほどのストーリーを組み込むなんて、タイ人の情熱ってスゴイ!!とにかく泣けますよ。