DonkeyMの部屋

Donkeyはロバ。格好良くなく、足も遅い。「のろま」とか「馬鹿」といった意味。日々の感動、怒り、愚痴等を記事にしたい。

小説「私は、名前を付けてもらえなかった猫だった。」(9)三男坊が行方不明に

2019-01-08 11:13:11 | 雑感

 久しぶりの小説の投稿です。

 桜の花が満開になる頃、三男坊のいつもの耳鼻科への通院の日に、耳鼻科の後に花見に行くと言って、治療費の外に多少の小遣いを貰って出かけて行った。耳鼻科は7キロくらい離れた隣の町にあり、今から思うと、小学4年生にしてはかなりの行程で、自転車で30,40分掛かる距離にあった。自転車といっても、子供用のものはなく、大人用に乗っていた。三男坊は、まだ身長も短く、サドルに座ってしまうと、べダルに足が届かなくなるので、「三角乗り」(フレームの下から右足を入れ、ペダルを漕ぐ方法)でようやく乗れていた。しかも、江戸川を越えなくては耳鼻科に行けないため、国道で、ダンプカー等が激しく行き交う橋を通らなくてはならなかった。しかし、三男坊は、危険などということは全く意識になく、意気揚々と耳鼻科に向かった。

 診察を終え、いよいよ花見だ。最初は、自転車を叔父さんの和菓子屋に置いて、そこから歩いていく予定だったが、その和菓子屋から花見をする公園まではまだ相当の距離があるため、自転車に乗ったまま、公園近くの駅まで行き、自転車置き場に預けて、公園に行った。公演は、花見客でにぎわっていた。公園内を歩いて、見て回っていると、見覚えのある人が、露店を出していたので、声を掛け、飴玉を貰って、ひとしきりおしゃべりしたり、露店の様子を興味深く見たりしていた。そして、夕方、薄暗くなるころ、叔父さんの店を訪ねた。

 一方、家では、三男坊がなかなか帰って来ないと心配し、オヤジがバイクで叔父さんの店に行き、確認すると、自転車を預けにも来ていないというので、いったいどこへ行ってしまったのあろうと騒ぎになっていた。

 三男坊が叔父さんの店に行くと、もう暗くなってきたから、泊っていきなさいと言われ、急遽とまることになった。良く顔を見せる叔父さんの家だが、泊るということはなく、初めての経験だった。夜になり、風呂に入るように言われ、風呂に入ったのだが、和菓子屋の仕事で使っている蒸気ボイラーでお湯を沸かしていた。家の薪で沸かす風呂の違いに、少し驚いた。そんなこんなで、一泊して、翌日家に戻った。

 家に戻ってみると、母ちゃんが、「自転車どこに置いていたの?叔父さんのところへ行ってみたけど、来ていないというので心配していたんだよ!」と問い質した。三男坊は、「公園の近くの駅の自転車置き場に預かってもらったよ!」と何事もなかったかのように答えた。それ以上、叱るでもなかったし、父ちゃんに叱られることもなかった。父ちゃんも母ちゃんも、三男坊の無鉄砲ぶりには慣れっ子になっていたのだろうと今改めて思う。

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