にれっちのつれづれ日記

本州最北端の小児科医にれっちの独り言(^^)

風邪をひいたらカゼ薬を飲むのが当たり前??

2016-08-31 11:32:36 | 病気のはなし
これは以前の自分が行っていた治療への反省も込めての問題提起です。
実は風邪にいわゆる「カゼ薬」を使うのは逆効果かもしれません。
まず「風邪って何?」ということから考えてみましょう。
大雑把に言えば「ウイルスなどの病原体が体に入り込んで起こした病気」のことで、単に「風邪」と呼ぶときは咳や鼻水などの呼吸器系症状が主体ですが、腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状が主体なら「お腹の風邪」と呼んだりします。
こうした風邪の時に見られる各種の症状は、本人にとっては不快に感じるものではありますが、身体にとっては「病原体を追い出し病気を治すための反応」です。
 ・鼻から入ってきた病原体や異物は鼻毛で捉えて鼻水に包んで外に放出します
 ・喉や気管に入ってきてしまったら痰に包んで咳をして外に出します
 ・胃や腸に入ってきた場合には、嘔吐や下痢をすることで排出します
 ・病原体が体の中で暴れ始めたら、体温を高く設定して動きを抑えて排除しやすくします
これに対していわゆる「カゼ薬」と呼ばれるものは、咳が出るから咳止め(鎮咳剤)、鼻水が出るから鼻水止め(抗ヒスタミン剤)、熱が出るから熱さまし(解熱剤)という具合で、症状の理由には目を向けずに症状自体を抑え込むことを目的にした薬剤(の集合体)です。
身体が自力で治そうとしている反応を薬で抑え込む・・・どう考えても変ですよね。
では「カゼ薬は悪いものなのか?」というと、それほど単純でもありません。
いくら病原体を追い出すための症状だとしても、本人の体力(治癒力)を奪っていくような行き過ぎた状態になってしまった場合には、それを和らげる必要があるからです。
風邪をひいたからカゼ薬を飲んで治すのではなく、自分の身体が治ろうとして行っている反応を上手にコントロールして最大限に利用するということが大切で、私達医療者の一番の役割は、単に病名を付けて薬を出すことではなく、その症状をどのようにコントロールして治る方向に持って行くかを見立てることです。
患者さん・ご家族と医療者が上手にタッグを組んで、より良い方法を見つけて実践できるようになれればいいですね。


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