明日へのヒント by シキシマ博士

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「さよなら渓谷」 贖罪。そして…

2013年09月30日 22時39分21秒 | 明日のための映画
実は何を隠そう、この映画の最初のほうに私が映っています。小さく、少しだけですが。
昨年(2012年)の9月に、冒頭シーンのロケが私の住む日の出町で行われ、その際にエキストラとして参加させていただいたのです。
(その経緯は私ごとなので省きます)
撮影の際に、少し離れた所から真木よう子さん・大西信満さん・大森南朋さん・鈴木杏さん・木下ほうかさん・薬袋いづみさん、そして監督の大森立嗣さんを拝見しました。
真剣に取り組んでいるそのお姿から、必ず良い作品が完成すると思っていました。
このたび、完成した作品を劇場で鑑賞し、改めてこのような素晴らしい作品に関われたことに大感謝しています。
映画にはそのほかに、奥多摩の「もえぎの湯」「もえぎ橋」など私の知っている場所も登場し、その風景がとても綺麗に映されたいたのが嬉しかったです。
そして、先ごろのモスクワ国際映画祭での審査員特別賞の受賞、本当におめでとうございます。

都心からほど近い山間で起きた幼児殺害事件。犯人として母親が逮捕される。
週刊誌記者の渡辺は、その事件を取材していくうちに、隣に住む尾崎俊介という男が大学時代に集団レイプ事件を起こしていたことを知る。
さらに調査を進めていくと、尾崎夫妻の衝撃的な秘密に辿り着いてしまう…
(監督:大森立嗣 117分)


ミステリー的要素もあるのでネタバレは控えます。
でも、本当はミステリー的要素はさほど重要ではないです。
重要なのは、そういう状況に至った登場人物たちの心のほうですから。

原作は「悪人」などで知られる吉田修一。
でも、映画化された「悪人」を私はまったく評価していません。なぜなら、本当に描くべきことが描かれていない気がしたからです。
原作は違うんじゃないか…と思いながら、いまだに読んでいませんが。
この「さよなら渓谷」は原作本を読みました。吉田修一さんの本を読んだのはこれが初めてです。
普段ニュースなどで見聞きする事件は、自分には関係の無いところで起きている他人事のように思えますが、吉田修一さんはそんな他人事の心情を丁寧に浮かび上がらせることで、読む者に、もし自分が当事者だったら…という気持ちを呼び起こさせます。
だから、一見あり得ないように思える物語に説得力が生まれるのだと思います。
自分が被害者だったら、あるいは加害者になったら、同じようにするかもしれない…と

若さゆえの浅はかな行為。
それで他人を傷付けてしまった経験は、たぶん誰にもあるでしょう。
たいていは修復できる程度ものだけれど、時として、人の一生を台無しにしてしまうこともある。
歳月を経て、自分のした事の重大さに気づいても、その時にはもう取り返しは付かない。
たとえば自分が加害者として定められた刑期を終えたとしても、それで被害者に残した傷が癒えるわけではない。
一生をかけても償いきれない。
ではどうすれば良いのか…
原作を読んで、そんな課題を突きつけられた気がしました。

ただ、原作は加害者側の贖罪の気持ちは強く伝わるものの、(これは私も男だからかもしれませんが)被害者女性の気持ちが今ひとつ実感できませんでした。
今回、この映画化によって、演じる真木よう子さんの表情や声のトーンによって、被害者女性の心理がリアルに浮かび上がってきました。
被害者も、苦しみにもがきながら、確かにそこに生きている。
生きていれば、きっと少しずつ何かが変わる。変われる。変わって良いんだ。
それをひしひしと実感することができました。
それだけで、この映画化は大成功してるんじゃないかと思います。

容易には取り返しの付かない、赦されないことだけれど、
それでも、悔い改めた自分の全てをかけて償うことで、いつか、少しでも何か取り戻せる日が来るのかもしれない。
そんなかすかな希望を、この映画は原作よりも少しだけ強く信じさせてくれている気がします。
それが救いです。

実際にこういう事件に遭って苦しんでいる人がいると思うと、簡単に誰にでも勧められる映画ではないかも知れません。
それでも、とても誠実に作られている映画だということは間違いないです。監督の優しさを感じます。
被害者である彼女に、幸せが来ることを切に願います。
そして加害者・尾崎にも…。

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