スパニッシュ・オデッセイ

スペイン語のトリビア
コスタリカ、メキシコ、ペルーのエピソード
パプア・ニューギニア、シンガポールのエピソード等

[d] 音の脱落

2020-09-13 12:00:00 | スペイン語
 Leyendas Costarricenses(コスタリカの伝説)全267ページのうち、145ページまで読んだ。
  【挿絵から】
 今回のお話は幽霊話だが、昔の教養のない人のことばが出てくるので読みにくい。コスタリカ特有の語彙や表現もあるが、そちらは女房殿の助けが要る。助けがなくても想像がつくのは [d] 音の脱落である。わかりやすい例としては、過去分詞形 -ido, -ado の d が落ちている形である。
 例えば、perdonado(perdonar、許す)⇒ perdonao がある。ほかにもいくつかこのような例がある。
 次は onde という語である。文脈から、これは donde(英 where)だということは想像できる。この onde という語は立派なポルトガル語である。実は、この語は40年以上前から知っている。ボサノバの歌詞によく出てくるので、覚えてしまったのである。
 [d] 音の脱落といえば、スペイン語の動詞 oír(聞く)もそうなのである。この語源となるラテン語は audire(イタリア語と全く同じ)で、audire → auire → oir または audire → odire → oir と変化したのだろう。詳しくはスペイン語学者にお任せする。
 ver(見る)も同様の変化をしたはずである。語源となるラテン語は videre (イタリア語形は vedere)である。関連語の video は [d] 音の脱落はない。 
 creer(考える、思う)もやはり [d] 音の脱落がある。ラテン語形は credere(イタリア語形も同じ)である。スペイン語を習い始めたころ、英語 incredible(信じられない)をそのままスペイン語読みして、間違いを正されたことがある。スペイン語形は d が脱落して、increíble となる。
 元サッカー選手の中田英寿がイタリア語での会見で、“Credo che~”(クレド・ケ、I think)と言っていたのをよく覚えている。スペイン語では “Creo que”(クレオ・ケ)である。
 今度は逆に不要な [d] 音が入る例を紹介する。
 vido という語だが、こんな言葉は小学館『西和中辞典』にはもちろん掲載されていない。動詞の活用形だから、ないのは当然だが、文脈から判断して、vido は3人称単数直説法点過去の活用形のようである。そうすると、原形は規則動詞なら、vidar ということになるが、やはり見当たらない。
 どうもこれは、文脈から判断して ver(見る)の3人称単数直説法点過去形 vio に余分な [d] 音が入ったもののようである。今でこそ余分な [d] 音だが、[d] 音が脱落する前の古い形だったのかもしれない(詳細はやはりスペイン語学者のお任せする)。
 幽霊話の中に出てくる [d] 音の脱落に気を取られて、つい怖さを忘れてしまった。   

よろしくね
↓↓↓
スペイン語 ブログランキングへ

スペイン語とともに考える英語のラテン語彙の世界 (開拓社言語・文化選書)
好評発売中!!こちらは、このブログとは別物です。もちろん、トリビア満載です。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。