馬屋記ーヤギとクリの詩育日誌

つらなりのほつれfray of sequence(17)雨も土も、栗花落。

あなた、まだ、ましよ。幾分かは、

物語を落ちてしまうにしても。

悲哀に満ちた物語を読む力だけがずば抜けてひいでたコメディアンがいる。なぜあの女は泣いているのか、知りたくはない理由も読めてしまう。そして雨のなかで陽気なダンス。栗花落、「ついり」と読む、は梅雨入りのことですか。で、ある種の擬態が、この季節の鳥たちのささやきにも耐えがたいほどの苦難の物語があることを、名言に露呈させる。僕は雨の中を歩くのが好きだ。誰も僕が泣いていることに気付かないから。ほら、また。激しい雨が栗の花を落としている。鳥たちは啄めない。呆然として空を仰ぎ見る。その虚しさにも、匂ひがある。生の営みを匂わせるこの季節に咲くすべての願い、あるいは困惑した祈り、花が咲く前に落ちてしまうというのに。あなた、まだ、ましよ。幾分かは、物語を底まで滑落するにしても。後に、雨も土も、残さないで。


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