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TOHOシネマズ梅田「ゴールデンカムイ」見てきました!

2024-02-08 23:14:52 | 映画感想
 映画を見る順番というのは当然上映終了が近いものからということになるので、メジャーな映画化や大規模な映画は必然的に後回しになりがち。今日見てきたのは、どことは言いませんが尼崎の場末の映画館で1週間限定2週間限定の作品が上映されているのでそっちにばっかり行っててすっかり後回しになってしまっていたこの作品!
 
 
 「人気コミックの実写化」と言う文言はオタクに蛇蝎のごとく忌み嫌われており、その言葉を耳にしたものは七孔噴血して憤死したのち四百余州に災いをなす怨霊として生まれ変わることはつとに有名ですが、本作は発表のときは当然というべきか必然というべきか不安視する声が上がっていましたが、いざ公開されると実写化映画としては異例とも言える評判の良さだったので、それなら憤死することはないと判断して見に行きました。
 
 さてわたくし人形使いもオタクなので実写化映画という段階で期待値を下限修正することで己の弱き心を守るすべを持っているんですが、結論から言うと完全に杞憂だったと言っていいでしょう。
 本作はなんというか、「面白い映画」「素晴らしい映画」というよりも「すごく丁寧に作られた作品」だと感じました。
 そもそも心の中指がスタンディングオベーションしてしまうタイプの実写化映画はたいていの場合「原作になかった余計な要素が入ってる」もしくは「原作に必須の要素が抜けてる」のどちらかに集約されると思ってるんですが、本作はそのどちらもない。少なくとも本作を鑑賞して「原作になかった余計な要素」を感じた人はいないんじゃないでしょうか。
 世間では「原作の勝手な改変」が話題になっていますが、本作はいわば、作中に登場する数々のアイヌの料理のように、自然の素材の味をそのままに調理したと言えるでしょう。本当に余計なものがなく、なおかつ「ゴールデンカムイ」という作品を成立させるために必要な要素は全部そろっている。これがどれほど稀有なことかは心正しきオタクのみんなならわかってくれるはず。
 先ほど作品を料理に例えましたが、ときに鑑賞していて喉に小骨がつっかえるような違和感や異物感を覚えることがあります。そうした違和感や異物感の正体は、しばしば「制作者の主張」であることがあります。これが目立ちすぎると作品やキャラクターの向こうに制作者の顔が透けて見えてしまい、とたんに作品世界から離脱させられてしまう。
 しかし、本作では128分の上映時間の間、わたくし人形使いはずーっとあの北海道の美しく厳しい自然の中にいました。「名作の定義」はさまざまあるでしょうが、個人的にわたくし人形使いの掲げる「名作の定義」には、「鑑賞中作品世界にどれだけ意識を縫い留められるか」があります。そうした意味では発表当初こそ不安の声があった本作は、間違いなく実写化映画の中ではトップクラスの名作だと言っていいでしょう。
 また、キャスト陣にも言及しなくてはいけません。実写化映画の成功を左右する大きな要素がキャストであり、ここがダメだとすべてが瓦解してしまうどころか単純にシラけてしまうんですよね。実写化は実在の人間を使った作品なので、キャスティングが失敗すると簡単に「〇〇というキャラクターじゃなくて〇〇のコスプレをしてるだけの誰か」になってしまう。
 そこ行くと本作のキャスティングは本当に素晴らしかった。「役になりきる」と言葉で言うのは簡単ですが、本作のようなアクの強いキャラが多い原作の実写化だと「ただ単に大げさに演技してるだけ」とかになってしまいやすい。特に本作の主人公(そう、主人公と言っておきたい)であるアシリパさんは実写化に当たって非常にキャスティングのハードルが高かったと思います。
 wikiによれば本作のアシリパさんを演じた山田杏奈氏はオーディションで選ばれたとのことですが、あんなにアシリパさんに寄せられる人間が実在するなんて未だに信じられん。杉本役の山﨑賢人氏と並んだときの身長差とか完全に原作で見たやつだった。
 またアシリパさんと言えば一度見たら夢に見るほどの変顔ですが、これに関しても完全再現しててびっくりした。こんなにマンガっぽい評定できるのジム・キャリーくらいしか知らないぞ。特にみんな大好きオソマのシーンの心の底からドン引きの「うわぁ……鍋にオソマ入れて喜んでるよこの男……」のくだり最高だった。もうあれだけで元が取れました。
 そして「アシリパさん実は……桜鍋には味噌が欠かせないんだよ!!」「オソマおいしい」をスタッフロール後のCパートに入れてくるあたりが実に「ゴールデンカムイ」という作品をわかってる。わかりすぎてる。個人的スタンディングオベーションポイントはあそこでした。
 山崎賢人の杉本は最初は原作の杉本のイメージと比べるとやや若すぎないか?という印象でしたが、だんだんらしく見えてきました。というかアシリパさんと杉本を並べたときにちょうどいい年齢差に感じるんだよな。
 そしてまあ見た人が全員爆笑したと思う白石ですよ。なんかもう完全に白石。特に動きが完全に白石。アシリパさんと杉本に捕まったあとに逃げ出すときのあのヌルヌルした動きがあまりにも白石過ぎてもう似てるとかハマってるとかいうポイントを越えて気持ち悪い。妖怪か?
 コミックやアニメのキャラクターを実写で演じるときのハズレパターンになりがちなのが「モノマネになってしまう」というのがあると思うんですよね。これは二次創作でも言えると思うんですが、特に元のキャラが濃いキャラ=わかりやすい特徴的な言動・性格があるキャラだと、そのキャラを再現しようとした場合にただ単に言動を誇張したキャラになってしまいやすいというのがあると思います。「っぽいキャラ」で終わってしまうというか。
 翻って本作で白石を演じた矢本悠馬氏はなんというか、ただ単に言動を真似ているのではなく「白石由竹というキャラクターの思考をエミュレートしてる」といった感じ。「白石だったらこの場面ではどうする?」という設問に対し一瞬一瞬ごとに正解を導き出していると言うか。
 いま原作コミックを読み直して頭の中で比較してるんですが、例えば第七師団に捕まった杉本を助けに行くシーン。「ところで石鹸持ってねえか?」のとこ、原作コミックでは白石は上着を脱ぎながら言ってるのに対して、本作ではぴょんぴょん寒そうに飛び跳ねながら言ってるんですよね。このシーン実に白石だった。これは白石というキャラを深く理解してないとできない。わかれ。
 そして変態のレッドカーペットと呼ばれるゴールデンカムイきってのドサイコ野郎鶴見中尉ですが、玉木宏氏の「ロウソクぼりぼりしちゃおうか(コカカカカカカ:歯を打ち鳴らす音)」最高。目ェ完全にイッちゃってるしな。
 キャラの話ししてるともうキリがないですよね本作。異様な存在感を放つ舘ひろし氏の土方とかセリフが基本「はい」しかないのにめちゃくちゃ印象に残る工藤阿須加氏演じる月島軍曹とか。眞栄田郷敦氏演じる尾形はこの段階ではまだあんまり出番がないですが、軍刀を構えた姿勢が原作コミックと完全に同じでステキ。
 さて本作は原作コミックの3巻の最初くらいまでの内容でしたが、まあこんだけウケたんだから続編も作って欲しいところ。エンドロールではまだ見ぬド変態たちが目白押しなので続編の完成が楽しみです。目下の懸念事項は姉畑先生だいじょうぶなの?というところなんですがよく考えたら江渡貝くぅぅんもだいぶアウトだよな……。そのへんは最悪レーティング上げればどうにかなるか……。
 ただまあ原作は完結してるとはいえけっこう長いのでラストまでやるとなると相当長くなるので、どこかキリの良いところまでやってほしいですね。
コメント
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