うふふふ、感想が全然終わらなーい。
まあ喜ぶところでもあるんですかねこれに関しては。
・カリストーの尊厳(折葉坂三番地)
これでようやく紅楼夢で手に入れたこのサークルさんの感想は終わりです。
本作は雪深い山奥に潜む魔獣と化した羆に魔理沙が挑むというもの。
わたくし本サークルさんの作品には心底惚れこんでいるわけですが、その理由の一つに「原作ゲームのスペルカードバトルを上手いこと文章に落とし込んでいる」というものがあります。
しかしながら本作は、弾幕ごっこでもなければ真剣勝負でもない殺し合い。
その点が本作での戦いを東方世界における一般的な戦いとはまるで異なるものとして浮かび上がらせているように思います。
R-18Gの年齢制限を設けたその描写は凄絶の一言。
戦闘描写そのものよりも、参考資料にもある「羆嵐」を彷彿とさせる前半部分の文字通りめっちゃくちゃに荒らされた犠牲者の、紙面から腐臭すら漂ってくるかのような凄惨な描写、そしてこうした展開ではお約束の「いつ敵が襲ってくるかわからない恐怖」「豪雪の雪山という逃げられない閉鎖空間」といった要素がきっちり描写されていて、読んでいてドキドキしました。
というか全体の描写量として、直接的な戦闘のパートは実は少なめで、実際には前述のような羆が犠牲者を襲った痕跡や、戦いに臨むために諸々の準備をする魔理沙のシーンの方が多いんですよね。
中盤を過ぎたあたりまでそうしたいわゆる「タメ」のパートが続くのが、いかにも弓を限界まで引き絞っているかのようで、これから始まるである死闘への緊張感を高めてくれます。
個人的に思ったのが、登場キャラクター含めた作品全体の舞台建てそれ自体が、「霧雨魔理沙」というキャラクターの持つ「人の身にありながら半歩妖の領域に踏み込みつつある」というか、もっと簡単に言ってしまえば「どっちつかず」「半端者」といった属性を表現するためのものとして組まれているように感じました。
凄腕の熊撃ちでありながらそれのみでは生きていかれず、里との交流を断ち切れない銀爺。
野生獣の領域を踏み越えて妖怪へとなりつつある羆、経立。
それを討つために魔理沙が手にするのは、神の加護を受けた神剣などではなく、旧式のとは言えテクノロジーの象徴の一つである銃器。
それに魔理沙は、テクノロジー=科学とは正反対の位置にある自らの力である魔法を込めて戦いに挑む。
……といったように、本作は僕の目には「半端者たちの戦い」に見えました。
あるいは「つまはじき者たちの戦い」とも言えるか。
人間の里からつまはじきにされた銀爺。
自然の掟からつまはじきにされた経立。
自分の家からつまはじきにされた魔理沙。
おそらくは魔理沙は、銀爺にだけではなく、彼を惨たらしく殺したはずの経立にもある種の共感を覚えていたのではないでしょうか。
だからこそ経立が完全に妖怪に成り果てる前に、自分の手で……と決意したように思えます。
そして作中での魔理沙の描写に、やはり彼女の持つ異常性を感じました。
魔弾を作り上げる際の鬼気迫る描写、勝利のためとは言え処女まで捨てるという行動。
やはり彼女は魔女であり、ヒトの領域から踏み出るべくして踏み出る存在、あるいはもうすでに……。
タイトルにもあるカリストーの伝説になぞらえて考えるなら、経立は純潔を失い呪いのために熊の姿に変えられた魔理沙そのものだったのかも……などと思えたりもします。
今日はここまで。